イギリスのギャンブル産業とその社会的影響

イギリスはギャンブルが合法的に広く認められている国の一つであり、多種多様なギャンブルが存在します。しかし、その一方でギャンブル依存症や経済的損失といった社会問題も深刻化しています。本記事では、イギリスにおける合法ギャンブルの種類、ギャンブルに依存する人々の数、そして経済的影響について詳しく探っていきます。

イギリスの合法ギャンブルの種類

イギリスでは、以下のような多様なギャンブルが合法的に行われています。

1. ブックメーカー(スポーツベッティング)

ブックメーカーは、スポーツイベントや政治的出来事など、さまざまな事象の結果に対して賭けを提供する業者です。特にサッカーや競馬のベッティングが盛んであり、イギリス国内には多数のブックメーカーが存在します。業者はオッズ(倍率)を設定し、利用者はそのオッズに基づいて賭けを行います。オッズの設定には高度な分析が求められ、業者がリスクを負う形態です。

2. カジノ

イギリスでは、合法的に運営されているカジノが数多く存在します。ルーレット、ブラックジャック、バカラ、ポーカーなどのテーブルゲームやスロットマシンが提供されており、ギャンブル好きな人々に人気です。1968年のゲーム行為法(Gaming Act 1968)に基づき、厳格な規制が設けられています。例えば、「24時間ルール」(会員登録後24時間が経過しないと利用できない)や、ゲームフロアでのアルコール提供の禁止、広告の制限などがあります。

3. 賭博ゲーム機(Gaming Machines)

賭博ゲーム機は、パブ、アミューズメント施設、カジノなどに設置されているスロットマシンやフルーツマシンを指します。これらの機械は、賭け金や賞金の上限によって分類され、設置場所や利用者の年齢制限が法律で定められています。2003年のデータによると、イギリス全土で約41万4,000台の合法的なゲーム機が稼働しており、年間収益(利用者の損失)は17億4,000万ポンド(約2,900億円)に上ります。

4. 宝くじ(ナショナル・ロッタリー)

イギリスのナショナル・ロッタリー(National Lottery)は、1993年のナショナル・ロッタリー法(National Lottery etc. Act 1993)に基づき設立されました。政府の監督下で運営されており、その収益は公共事業や慈善活動の資金として活用されています。

5. ビンゴ

ビンゴは伝統的なギャンブルの一形態であり、イギリス各地のビンゴホールで合法的に行われています。特に高齢者の社交の場として人気があり、単なるギャンブル以上にコミュニティ活動の一環として親しまれています。

ギャンブルに依存する人々の数

イギリスではギャンブルが広く普及しているため、ギャンブル依存症(Problem Gambling)も深刻な社会問題となっています。2025年1月の報道によれば、イギリスには約46万人の問題ギャンブラーが存在すると推定されています。しかし、実際にはこの数以上に依存者が存在する可能性があり、ギャンブル依存症は個人だけでなく、家族や社会全体にも悪影響を及ぼします。

ギャンブル依存症の主な影響としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 家計の破綻
  • 精神的健康の悪化(うつ病や不安障害)
  • 犯罪行為への関与(借金返済のための違法行為など)
  • 離婚や家庭崩壊

政府や非営利団体はギャンブル依存症対策として、専門のカウンセリングや支援プログラムを提供しています。しかし、オンラインギャンブルの急増により、問題がさらに深刻化していると懸念されています。

ギャンブルの経済的影響

ギャンブル産業はイギリス経済に大きく貢献しており、2025年1月のデータによれば、ギャンブル産業は年間36億ポンド(約6,000億円)以上の税収をもたらしています。大手ブックメーカーであるBetfredやbet365のオーナーであるDone兄弟やCoates家族は、イギリスで最も多額の税金を納めている個人として知られています。

しかし、ギャンブル産業の経済的影響はポジティブな面だけではありません。2024年9月の報道によると、オンラインギャンブルの急増がイギリス経済に「負の影響」を及ぼしていると指摘されています。具体的には、

  • オンラインギャンブルへの支出が他の生産的なセクターへの消費を減少させる
  • 年間13億ポンド(約2,200億円)の経済活動の損失
  • 26億ポンド(約4,400億円)の賃金減少

さらに、ギャンブル依存症に関連する社会的コストも無視できません。政府はギャンブル規制を強化し、広告の制限やオンラインベッティングの監視を強化することで、依存症の拡大を防ごうとしています。

まとめ

イギリスでは、ギャンブルが合法的に広く認められており、ブックメーカー、カジノ、宝くじ、ビンゴなど多様な形態が存在します。ギャンブル産業はイギリス経済に大きく貢献していますが、一方でギャンブル依存症や経済的損失といった問題も深刻化しています。

政府や専門機関はギャンブル依存症対策を進めていますが、オンラインギャンブルの拡大が新たな課題となっています。ギャンブルが社会に与える影響を最小限に抑えるためには、より厳格な規制と支援体制の強化が必要不可欠です。

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