
21世紀は混沌とともに幕を開けた。2001年9月11日、アメリカで発生した同時多発テロは、単なる事件にとどまらず、世界の構造を根本から変えてしまった歴史的転換点だった。約3,000人の命を奪ったこの未曽有のテロに対し、アメリカは「対テロ戦争」という名目でアフガニスタン、次いでイラクへの軍事侵攻を開始。その報復劇は、やがて全世界を巻き込む「果てなき戦争(Endless War)」へと進化した。
だがここで冷静に問わねばならない。この一連の流れ――テロ、報復、戦争、そして“景気回復”は、すべてが本当に偶発的な因果だったのだろうか?
9.11 ― 恐怖が経済を変えた瞬間
2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターに2機の旅客機が突入、続いて国防総省(ペンタゴン)に3機目が、4機目はペンシルバニア州に墜落した。アメリカが本土を攻撃されたのは真珠湾以来のこと。国民の心理に“恐怖”が深く刻まれた瞬間だった。
しかしこの恐怖は、ただの精神的ショックでは終わらなかった。政府は「愛国者法(Patriot Act)」を制定し、監視国家体制を急速に拡張。軍事費は爆発的に増加し、国防産業やセキュリティ企業は莫大な契約を手にした。
同時に株式市場は混乱したが、2002年から2003年にかけて、戦争を背景とした公共支出の拡大、エネルギー価格の上昇、インフラ投資などによって、米国経済は“奇妙な回復”を見せた。これが“戦争による景気刺激”の一つの証左である。
戦争はなぜ経済を救うのか?
歴史を振り返れば、戦争と景気の関係は常に「表裏一体」だった。第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして湾岸戦争。いずれも戦争は経済の起爆剤として機能した。なぜなら、戦争は“需要を強制的に創出”するからである。
兵器が必要になり、それを作る工場が稼働し、雇用が生まれ、技術革新が進み、情報やインフラが更新される。そして破壊された地域の「再建」には、建設会社やインフラ企業、外資系金融が群がる。
つまり戦争とは、消費と投資の同時刺激をもたらす究極の「資本主義装置」なのだ。
誰が利益を得るのか ― “1%未満”の世界権力
アメリカの軍産複合体は、戦争の最大の恩恵を享受する存在である。ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ボーイングといった企業は、9.11以降、数兆ドルに上る契約を獲得した。さらに民間軍事会社(ブラックウォーター/アカデミ)やCIAとの関係を持つセキュリティ企業は、中東・アフリカで実質的な“非正規戦争”を継続し、予算を拡大していった。
そして、これら軍需企業の株主に名を連ねるのは、ヴァンガード、ブラックロック、ステートストリートといった金融機関であり、彼らは軍事と金融をまたいで世界経済を“統治”している。彼らこそ“1%未満”のエリート層である。
ウクライナ、ガザ、イラン:同じ構造の再演
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、地政学的には冷戦構造の復活だが、経済的には「軍需バブル」の再来でもある。ヨーロッパ各国は軍事費を急増させ、アメリカは武器供与と軍需輸出で莫大な利益を得た。
同じ構図は、イスラエルとハマスの戦争、さらにはイランとの緊張にも見られる。どの戦争も、「安全保障」という名目で武器と情報が交錯し、それに連動してエネルギー価格や金融市場が揺れ動き、最終的には一部の“支配層”が富を蓄積する。
経済と戦争の“陰の因果律”
グローバル経済が減速する局面では、なぜか地政学リスクが高まり、戦争が“自然発生”する。これは偶然なのか?
たとえば、2020年のコロナ禍では世界中の景気が一時停止した。だがその後、金融緩和と軍需景気のダブル刺激でアメリカ経済は持ち直す。2022年のウクライナ戦争が“タイミング良く”起きたことも、偶然とは言い難い。
戦争は、金融危機の出口戦略として機能してきたのだ。国家が赤字を容認し、国民が恐怖とともに政府の政策を受け入れ、メディアがナショナリズムを高揚させ、批判が封じられる。
我々はどう向き合うべきか?
このように戦争と経済が結びつき、その背後にごく一部の支配層の利益が存在するという構図は、極端な陰謀論で片付けるにはあまりに多くの“証拠”を伴っている。
私たちは問わねばならない。
- なぜ戦争は定期的に起こるのか?
- なぜ戦争はいつも経済危機の直後に勃発するのか?
- 誰が最も得をしているのか?
情報を鵜呑みにせず、その裏にある構造を読む力が今、問われている。グローバル経済、金融資本、軍事産業、情報操作――これらが織りなす巨大な“戦争の機構”に気づくこと。そこにしか、真の平和と独立した判断の糸口は存在しない。
【補足:関連する歴史的年表】
年 | 出来事 | 経済的影響 |
---|---|---|
2001 | 9.11テロ | 株価暴落 → 軍事支出急増 |
2003 | イラク戦争開戦 | 原油高騰、復興ビジネス活況 |
2008 | リーマンショック | 軍事支出維持で軍需株底堅し |
2020 | コロナパンデミック | 景気後退 → 軍需再浮上 |
2022 | ウクライナ侵攻 | エネルギー価格上昇、武器供与拡大 |
2023–2024 | ガザ・イラン情勢緊迫 | 軍需株上昇、資源市場の混乱 |
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