ロンドンの緯度は北海道よりも高いのになぜ雪がほとんど降らないのか?

はじめに

ロンドンは北緯約51.5度に位置しており、北海道の札幌(北緯43度)よりも高緯度にあります。しかしながら、ロンドンでは冬でも雪がほとんど降らず、比較的温暖な気候が続きます。一方で、札幌やその他の北海道の都市では、冬になると大量の雪が降ります。この違いはいったいなぜ生じるのでしょうか?この記事では、科学的な根拠に基づいてその理由を詳しく探ります。

1. 海流の影響:暖流と寒流の違い

地球の気候に大きな影響を与える要因のひとつに「海流」があります。ロンドンの温暖な気候の主な要因として、メキシコ湾流(ガルフストリーム)とその延長である北大西洋海流が挙げられます。

1.1 メキシコ湾流と北大西洋海流

メキシコ湾流はカリブ海付近から北大西洋へと流れる暖流で、大量の熱を運びます。この暖流は大西洋を横断し、イギリス近海まで達します。そのため、イギリス全体が比較的温暖な気候に保たれるのです。

これに対し、日本近海には**親潮(千島海流)と黒潮(日本海流)**が流れています。北海道の太平洋側では、冷たい親潮が流れ込むため、冬季の気温が大きく下がります。

2. 偏西風の影響

ロンドンと北海道の気候を決定するもう一つの大きな要因は、「偏西風」の存在です。

2.1 偏西風とは?

偏西風は、北緯30〜60度の間に吹く強い西風で、大気の循環によって発生します。特に、ロンドンを含むヨーロッパでは北大西洋からの暖かい偏西風が流れ込むため、気温が上昇しやすくなります。

一方で、日本列島には冬季になるとシベリアからの冷たい季節風が吹き込みます。この風は日本海を越える際に大量の水分を吸収し、日本の日本海側に大雪を降らせる要因となります。北海道ではこの影響を強く受けるため、雪が多く降るのです。

3. 大陸と海洋の影響

ロンドンと北海道の気候の違いを生み出すもう一つの要素は、「大陸性気候」と「海洋性気候」の違いです。

3.1 ロンドンの海洋性気候

ロンドンは**海洋性気候(温帯海洋性気候)**に属しています。大西洋に近いため、冬の気温が比較的安定しており、氷点下になることが少ないのが特徴です。雪が降るためには気温が0℃以下であることが必要ですが、ロンドンでは冬でも5℃前後の気温が保たれることが多いため、雪よりも雨が多くなります。

3.2 北海道の大陸性気候

これに対し、北海道は大陸からの影響を強く受ける**亜寒帯湿潤気候(冷帯湿潤気候)**に属しています。特に冬季は大陸の冷たい空気が流れ込み、気温が大きく低下します。そのため、降水が雪として降ることが多くなるのです。

4. 地形の影響

地形も気候に大きな影響を与えます。ロンドンと北海道では、周囲の地形が異なるために気候に違いが生じます。

4.1 ロンドンの平坦な地形

ロンドン周辺は比較的平坦であり、山岳地帯がほとんどありません。そのため、寒気を遮る要素が少なく、また湿った空気が山にぶつかって上昇し雪を降らせる「地形性降雪」が発生しにくいのです。

4.2 北海道の山岳地形

北海道には高い山々が存在し、特に日本海側の山岳地帯では、日本海を渡ってきた湿った空気が山にぶつかり、強い雪を降らせるという現象が発生します。これは「オロシス効果」とも呼ばれ、札幌や小樽、旭川などで大量の降雪をもたらします。

5. 結論

ロンドンが北海道よりも高緯度にあるにもかかわらず雪がほとんど降らない理由は、いくつかの要因が複雑に絡み合っているためです。

  1. 海流の違い:ロンドンは暖流の影響を受け、北海道は寒流の影響を受ける。
  2. 偏西風の影響:ロンドンには暖かい風が吹き、北海道には冷たい季節風が吹く。
  3. 海洋性気候と大陸性気候の違い:ロンドンは冬でも氷点下になりにくいが、北海道は極寒になる。
  4. 地形の違い:ロンドンは平坦で降雪が少ないが、北海道は山が多く降雪が多い。

このように、ロンドンが北海道よりも温暖で雪が少ないのは、単なる緯度の違いではなく、気象学的な要因が大きく影響しているのです。地球規模の気候システムがどのように作用しているのかを知ると、日々の天気の違いもより興味深く感じられるでしょう。

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