ロンドンの賃貸物件は今後さらに減少するのか

ロンドンのスカイラインと、賃貸供給の減少と家賃の上昇傾向を示すグラフを拡大鏡で見るイラスト。

市場縮小の理由と、賃料が再び上昇する可能性

ロンドンの賃貸市場ではここ数年、供給が縮小する傾向が明確になっている。最新の調査によれば、ロンドンのプライベート賃貸住宅(Private Rented Sector:PRS)は、直近の1年間だけでも notable な減少を記録した。この動きは一時的な現象ではなく、構造的な変化として定着しつつあると指摘されている。

本記事では、なぜロンドンの賃貸物件がさらに減少する可能性があるのか、そして 賃料が再び上昇する理由 を、最新の知見に基づき整理した。


■ 賃貸物件がさらに減少する可能性

1. 実際に賃貸ストックが減っている

英国の主要な住宅関連団体などが公表した統計では、ロンドンのプライベート賃貸住宅数は最近の1年間で約6%減少したと報告されている。具体的には、100万戸超のストックのうち約6万戸が減った計算になる。
さらに、2021~2023年の間には、約4万5,000戸の賃貸住宅が売却され、その多くが賃貸市場に戻らず、自宅用や他用途へ転換されたという分析も存在する。

すでに“減少トレンド”がデータで確認されている点は非常に重要で、将来の追加的な縮小を予測する上で強い根拠となる。


2. 「手頃な賃貸」が特に早く消えている

市場から退出しているのは、高級物件よりもむしろ「比較的手頃な賃料帯の物件」であるとされている。
手頃な賃貸物件は需要が強く、補助制度で賃料をまかなえる物件は全体のわずかな割合しかないとも言われる。

つまり、賃貸ストックが減るだけでなく、特に低〜中価格帯の物件が早く消えている。これは「住みたいが借りられない」という状況をさらに悪化させる。


3. 供給に代わる“新規賃貸の建設”が追いついていない

本来、賃貸物件が減れば、新たな賃貸用住宅(Build-to-Rent など)の供給が増えることでバランスされる。しかし、現在のロンドンでは以下の理由から新規供給が十分とは言えない。

  • 建設コストの上昇
  • 土地価格の高さ
  • 許認可や規制による開発プロセスの長期化
  • 投資家にとって賃貸事業の利回りが魅力的でない

結果として、出ていく物件のスピードに、新しく供給される物件が追いついていない


4. 家主が賃貸を続ける動機が弱まっている

Buy-to-Let(投資用賃貸)を営む個人オーナーは、利子控除の縮小、ローン金利上昇、保守管理コストの上昇などの要因により「賃貸を持ち続けるメリット」が減少している。

多くのオーナーが以下のように判断し始めている:

  • 賃貸を継続するより「売却した方が安全」
  • 賃貸リスク(規制、テナント管理、修繕責任)が増えている
  • 将来の税制や制度変更が読みにくい

この流れが続けば、賃貸物件の市場離脱がさらに加速する可能性がある。


■ 今後、賃料(家賃)は再び上がるのか

結論から言えば、賃料が今後さらに上昇する可能性は高い

その理由は以下の通り。


1. 供給が減る一方で、需要は依然として強い

ロンドンでは人口動態、雇用機会の集中、学生・若年層の流入などにより賃貸需要が恒常的に強い。
最近のデータでは「1つの賃貸物件に対して平均8件の問い合わせが来る」という報告もある。

需要 > 供給 の構造がさらに強まっている状況では、賃料が上昇するのは自然な動きと言える。


2. 特に「手頃な賃貸」の希少性が高まり価格圧力に

手頃な賃料帯の物件が真っ先に減っていることは、市場全体の「価格の底」を押し上げる効果を持つ。

  • 安い物件が消える
  • 中価格帯へ需要が集中
  • 中価格帯も逼迫
  • 全体として価格階層が一段上がる

この“階段状の価格圧力”は、すでに複数の報告で示されている。


3. 社会住宅の供給不足が賃貸市場を圧迫

公営・社会住宅の供給は長年不足しており、待機世帯数は増えている。
結果として、住まいを求める多くの世帯が民間賃貸に流入せざるを得ず、結果的に民間賃貸の需要がさらに強まる。


4. “賃料を下げる要因”が現状では少ない

理論的には、次のような要素が揃えば賃料は下がり得る:

  • 大規模な賃貸用住宅開発
  • 政府による家主への税制支援
  • 社会住宅の拡充
  • 賃貸需要の減退(購買力向上など)

しかし、現時点ではこれらが大幅に進む兆しは限定的であるため、近い将来に賃料が下がる材料は乏しいと言える。


■ 結論:ロンドンの賃貸市場は“構造的な供給不足”に向かう可能性が高い

  • 賃貸物件の実数はすでに減少している
  • 特に手頃な価格帯の物件が市場から消えている
  • 新規供給は減少傾向で、オーナーは賃貸から撤退しやすい
  • 社会住宅の不足により、民間賃貸への需要は下がらない

これらが重なれば、

→ 賃貸物件はさらに減少する可能性が高い

→ 賃料は今後も上昇、または高止まりしやすい

というのが、現在のデータと構造から導かれるもっとも合理的な見通しである。

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