
2025年のロンドン不動産市場は、インフレ鈍化と金利引き下げの影響を受け、緩やかな回復局面に入っています。新築・中古ともに取引は増加傾向ですが、地域や物件タイプによって価格の動きが大きく異なります。住宅価格は前年より平均1〜2%の上昇、賃貸市場は依然として需給逼迫が続き、家賃上昇率が5〜8%に達する地域も見られます。
1. 住宅価格の動向:緩やかな回復と地域格差
ロンドン全体の住宅価格は2024年に底打ちし、2025年には小幅な上昇に転じています。特に需要が高いのはゾーン2〜3のエリアで、交通の利便性が高く、通勤圏内でありながら中心部より手頃な価格帯の物件です。中心部(メイフェア、チェルシー、ケンジントンなど)の高級物件は取引件数が減少しており、価格は横ばいまたは小幅下落にとどまっています。
- ロンドン平均住宅価格:前年比 +1.2%
- 中心部プライムエリア:前年比 -0.5%
- 郊外・再開発エリア:前年比 +3.5〜4.0%
海外投資家の戻りも徐々に見られますが、ポンド高と取引税の影響で勢いは限定的です。国内実需層による「買い替え」や「ファーストバイヤー」が市場を支えています。
2. 賃貸市場の動向:供給不足が続く高止まり局面
ロンドンの賃貸市場は、供給不足と人口増加の影響で依然として貸主優位の状態が続いています。大学再開や国際労働者の回帰により需要が増加し、中心部・西ロンドン・カナリーワーフなどのエリアでは賃料が前年比5〜8%上昇しました。
- 1ベッドルーム平均家賃:月額 £2,200 前後
- 3ベッドルーム平均家賃:月額 £3,800 前後
- 新築賃貸マンションの入居待機期間:平均6〜8週間
賃貸需要の強さに対し、建設コスト高と政策規制の影響で新規供給が伸び悩んでおり、家賃上昇の抑制は短期的には難しい状況です。
3. 金利と住宅ローン:変動金利のリスク軽減へ
2025年の英国政策金利は4.5%前後で安定推移しており、2026年にかけて段階的な利下げが見込まれています。固定金利型住宅ローンの平均金利は3.8〜4.2%で推移し、購入意欲を押し上げる要因となっています。借入可能額も回復しつつあり、特にファーストタイムバイヤー(初めての住宅購入者)の市場参入が増えています。
4. 政策・税制:リースホールド改革とグリーン住宅支援
2024年に施行された「リースホールド・フリーホールド改革法」により、マンション購入時の管理費・地代(グラウンドレント)の透明性が改善されました。これにより、中古マンションの市場流動性が高まり、リース年数の短い物件も再評価されています。
さらに、環境政策の一環としてエネルギー効率(EPCレーティング)の高い住宅には税制優遇が適用される動きが強まっています。グリーンリフォーム補助金制度や断熱改修ローンが拡充され、投資物件でも持続可能な設計が評価される傾向が明確です。
5. 不動産投資の動向:商業から住宅へのシフト
ポストコロナ期におけるオフィス需要の変化を受け、2025年は「商業不動産から住宅開発への転換」が加速しています。特に旧オフィスビルを再開発したレジデンシャル用途(オフィスコンバージョン)への投資が増加。投資家は安定した賃料収益と将来的なキャピタルゲインを重視する傾向にあります。
一方で、ESG(環境・社会・ガバナンス)に適合した不動産の評価が高まり、省エネ建築・再生資材利用などの条件を満たした物件がプレミアム価格で取引されています。
6. 地域別トレンド
- セントラルロンドン(ゾーン1):高級住宅需要は限定的。外資購入は減少するも、短期賃貸需要が堅調。
- イーストロンドン(ゾーン2〜3):再開発進行中で住宅価格が上昇傾向。若年層・デジタル産業人材の移住が増加。
- ノースロンドン:学校区の良さから家族世帯の人気が高く、長期賃貸が中心。
- サウスロンドン:再開発エリア(クロイドン、ブリクストン)で新築供給が増加。将来の上昇余地が大きい。
7. 今後の見通し:2025年後半〜2027年
2025年後半にかけて、英国全体の経済成長率は安定化し、インフレ率は2%前後で推移する見込みです。不動産市場は短期的に横ばい傾向が続くものの、2026年以降は金利の引き下げと所得改善によって再び上昇局面を迎えると予測されています。
- 2025年:安定期(±1〜2%の価格変動)
- 2026年:緩やかな回復期(+3〜5%上昇)
- 2027年:賃貸需要が再びピークを迎える可能性
8. 投資・購入のチェックポイント
- 変動金利ローンを選ぶ場合は、金利上昇余地を織り込みキャッシュフローを試算する。
- エネルギー効率の高い住宅やリフォーム済み物件を優先する。
- 再開発エリア・交通網整備地域(Crossrail2予定地域など)を注視する。
- 賃貸利回り4〜5%を基準に、長期保有前提で投資判断を行う。
9. まとめ:安定成長と選別の時代へ
ロンドン不動産市場は2025年、過熱でも冷え込みでもない「安定成長期」に入りました。価格上昇は限定的ながら、賃貸市場の強さが収益の柱となっています。政策変化、金利動向、環境規制などを注視しつつ、実需・投資のいずれもエリア選定と長期目線が成功のカギとなるでしょう。
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