buy-to-letが成立しなくなった構造的理由
「イギリスの不動産投資は堅実」「家賃需要は強いから安全」
こうした常識は、もはや過去のものになりつつある。
少なくとも2025〜2026年時点で平均的な投資家が投資物件を買う行為は、極めて非効率=無駄になりやすい。
それは相場観の問題ではなく、構造の問題だ。
利回りが低いのは「たまたま」ではない
投資物件の基本は単純だ。
利回り = 家賃 ÷ 物件価格
現在のイギリスでは、この分数の分母(価格)だけが膨らみ、分子(家賃)が追いついていない。
その理由は明確である。
低金利時代の価格バブルの後遺症
2010年代から2021年まで、超低金利が続いた結果、
投資家は「家賃収入」ではなく「値上がり」を前提に物件を買い続けた。
とくに London を中心に、
- 利回り3〜4%でも正当化され
- 借入でのbuy-to-letが量産された
しかし、その前提を支えていた低金利は消えた。
金利と利回りの逆転という致命的問題
現在のbuy-to-letローン金利は、概ね5〜6%台。
一方、全国平均の表面利回りは4〜5%前後にとどまる。
これはどういう状態か。
借りて買えば、計算上ほぼ必ず赤字
つまり、
「価格が少し下がれば」「金利がもう少し下がれば」
という希望的観測がないと成立しない投資になっている。
これは投資ではなく、願望だ。
規制と税制が“回復”を許さない
仮に金利が下がったとしても、状況は簡単には改善しない。
- モーゲージ利息の全額損金算入は不可
- 追加印紙税(SDLT surcharge)
- EPC(省エネ)規制強化による改修コスト
- 借主保護強化で家賃引き上げは限定的
これらは一時的な政策ではなく、構造的・長期的な方向性である。
つまり、
「昔のbuy-to-letの収益モデルは、制度的に否定された」
ということだ。
差し押さえ増加は「チャンス」にならない
住宅ローン延滞や差し押さえは確かに増えている。
しかし、それが2008年のような投げ売り市場を生む可能性は低い。
理由は単純で、
- 銀行が強制売却を極力避ける
- 返済猶予(forbearance)が制度化されている
- Bank of England も金融不安を強く警戒している
結果として、
価格はじわじわ調整されるが、
投資家が喜ぶほどは下がらない
中途半端に高く、中途半端に利回りが低い状態が続く。
それでも買う人がいる理由
それでも投資物件を買う人はいる。理由は3つだ。
- 過去の成功体験から抜けられない
- 「イギリス不動産は安全」という神話を信じている
- 実質利回りを計算していない
特に3つ目は深刻で、
修繕費・空室・税金・規制対応を除いた表面利回りだけで判断してしまう。
その結果、
「なぜかお金が残らない投資」
が量産される。
結論:無駄になりやすいのは「平均的な投資」
重要なのは、
イギリスの投資物件がすべて無駄なのではないという点だ。
- 高利回り(実質6〜7%以上)
- 低LTV(50〜60%以下)
- 地方の強い賃貸需要エリア
- 値上がりを前提にしない
こうした極めて限定的な条件を満たせるなら、成立余地はある。
しかしそれは、
情報・資金・交渉力を持つ一部の投資家だけ
多くの個人投資家にとっては、
「今、イギリスで投資物件を買う」
= 効率が悪く、再現性の低い行動
になっている。
最後に
投資で最も避けるべきなのは、
「昔は正しかった選択を、今も正しいと信じ続けること」だ。
イギリスのbuy-to-letは、
すでに「誰でも儲かる投資」ではない。
それを認めない限り、無駄な投資はこれからも続く。










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