イギリス、マッチングアプリの終焉か?今、若者が求める出会いの形

写真を選び、プロフィールを整え、気になる相手に「いいね」を送る。マッチングしたらメッセージを交わし、日程を調整して、ようやく会う。

出会いを便利にしたはずの仕組みが、いつの間にか気力を使う作業になる。英国では、こうした「マッチングアプリ疲れ」が議論される一方、友人の紹介を通じて実際に会うイベントなどに注目が集まっている。University of Leeds

スマートフォンとともに育った若者たちは、どのような出会いを求めているのだろうか。

Tinderの利用は減少。ただし、市場全体には違う動きも

英国の通信規制機関Ofcomが2025年12月に公表した「Online Nation 2025」では、Tinderの英国の月間利用者数は、2023年5月の約250万人から2025年5月の約150万人へ減っている。

サービス2023年5月2024年5月2025年5月
Tinder約250万人約190万人約150万人
Hinge約150万人約140万人約150万人

対象は英国の18歳以上のインターネット利用者で、若者だけの数字ではない。各サービスの利用者数は丸められている。ofcom.org.uk

オンラインの出会いサービス全体では、2025年5月の利用率は11%。過去3年の同月も10〜11%で推移していた。一方、利用者1人当たりの月間利用時間は、2023年5月の3時間57分から2025年5月の約3時間へ短くなっている。ofcom.org.uk

数字から見えるのは、サービスごとの明暗と、利用に費やす時間の減少だ。「若者が一斉にアプリを捨てた」と結論づけることはできないが、従来の使い方が見直されていることはうかがえる。

出会いの数が増えても、疲れは減らなかった

アプリの魅力は、普段の生活では知り合えない相手に出会えることだ。しかし、候補が表示されることと、信頼できる関係を築けることの間には距離がある。

突然返信が途絶える「ゴースティング」。関係を進める気があるのか分からないまま、時折メッセージだけが届く状態。写真や自己紹介を常に魅力的に見せようとする負担。

リーズ大学の研究者たちは、こうした問題や若い利用者のアプリ疲れを取り上げ、収益化の仕組みと、意味のあるつながりを求める利用者の目的との関係も論じている。University of Leeds

プロフィールを見比べる時間が増えても、相手を知る時間が増えるとは限らない。便利さを追求してきたサービスに対し、利用者が求める成果との隔たりが問われている。

「直接会いたい」けれど、いきなり声をかけるのは難しい

アプリへの不満があっても、誰もがカフェやパブで気になる人に声をかけられるわけではない。

YouGovが2023年に英国の現役アプリ利用者380人を調べたところ、46%が利用経験を悪かったと評価した。一方、72%は、社交の場で恋愛対象として気になる相手に自分から近づくことに居心地の悪さを感じると答えていた。若者に限った調査ではないが、アプリへの不満と、対面での緊張が両立することを示している。yougov.com

この難しさを考えると、参加者に共通の目的があり、話しかけるきっかけも用意されたイベントには意味がある。

偶然の出会いをただ待つよりも、自然に会話を始められる状況を選ぶ。その発想を形にしたサービスが登場している。

友人が自分を紹介する「Date My Mate」

2026年3月、ロイターは北ロンドンのパブで開かれた「Date My Mate」を紹介した。友人がスライドを使って独身の友人の魅力を紹介する形式で、主催者によると150枚のチケットは5分足らずで完売したという。Reuters

この形式なら、自分では書きにくい長所も友人が伝えられる。紹介する人とのやり取りから、本人の人柄が見える点も魅力になりそうだ。

趣味を共有しながら、相手を知る

ランニングも、出会いと結びつく活動の一つだ。例えばロンドンのクラパムでは、2025年に20〜40代向けの「Singles Run Club」の開催案内が掲載された。Eventbrite

一緒に走り、その後に話す。共通の活動があれば、会話のきっかけを一から探す負担は小さくなる。

相手が周囲にどう接するか、どんな場面で笑うか、自分と過ごすペースが合うか。こうした情報は、写真と短い自己紹介だけでは伝わりにくい。

この形式の魅力は、恋愛の結果だけにその日の価値を預けずに済む点にもある。気になる相手が見つからなくても、運動を楽しみ、人と話した時間が残る。

一般の趣味サークルと独身者向けの交流イベントでは目的が異なるが、共通の活動を通じて相手を知るという発想には重なる部分がある。

生活費が高い時代、気軽に続けられるデートへ

出会い方を考えるうえで、お金の問題も外せない。

2026年6月のロイター報道では、ロンドンで暮らす24歳と26歳のカップルが、割引や無料の特典を探しながらデートを楽しむ様子が紹介された。映画や飲食、観劇などを、予算に合わせて工夫しているという。reuters.com

出会いのたびに高い食事代や交通費がかかれば、試してみること自体が難しくなる。

コーヒーを飲む、公園を歩く、共通の活動に参加する。費用と時間の負担を抑えた出会い方には、相手と無理なく関係を続けられるか確かめやすい利点がある。

アプリの次に求められるもの

対面のイベントが注目されても、アプリは引き続き出会いを支えている。

2026年8月公表のYouGov調査では、交際経験がある18〜29歳のうち、現在または直近の相手とアプリで知り合った人は16%。30〜39歳では22%だった。過去の出会い方を尋ねた数字であり、現在の利用率とは異なるが、アプリが果たしてきた役割は大きい。yougov.com

今後の出会い方として考えられるのは、オンラインと対面を組み合わせる形だ。ネットでイベントを見つけ、申し込み、現地で会話する。アプリで知り合い、長くメッセージを続ける前に、双方が納得できる場所で短く会う。

紹介イベントや趣味を通じた交流から見えてくるのは、相手を知るきっかけがあり、自分を過度に演出せずに済む場への期待だ。

マッチングの件数を増やすだけで、その期待に応えることは難しい。実際に会うまでの負担をどう減らし、会ってから相手を知る時間をどうつくるか。英国の出会いのビジネスは、そこを改めて問われている。

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