時速30マイル超のE-bikeは合法?ロンドンの携帯ひったくりと取り締まりの現状

ロンドンの街中で、E-bikeのような車両が車を追い越し、あっという間に走り去っていく。時速30マイル、約48キロを超えているのではないかと感じる場面では、「あれほど速い乗り物に、免許もナンバープレートも必要ないのか」と疑問を抱く人もいるだろう。

携帯電話のひったくりにも高出力のE-bikeが使われている。ロンドン警視庁は、こうした車両が電話を奪う手段や警察から逃走する手段になっていると公表し、対策を進めている。街で目にする高速走行は、法律上どのように扱われるのだろうか。Metropolitan Police

英国で自転車と同じ扱いを受けるE-bikeは、正式にはEAPC(Electrically Assisted Pedal Cycle)と呼ばれる。ロンドンを含むグレートブリテンでは、次の条件が基本になる。GOV.UK

項目自転車扱いのE-bikeの基本ルール
利用年齢14歳以上
ペダル実際にこいで車両を進められること
モーター定格連続出力250W以下
電動補助時速15.5マイル、約25キロで補助が止まること
免許・登録・自動車保険基準を満たすEAPCでは不要
走行場所自転車の走行が認められた場所。通常の歩道は走行不可

14歳から利用できるため、10代の若者も合法的に乗れる。ただし、この年齢条件で免許なしに利用できるのは、基準を満たす車両である。高出力の電動バイクまで同じ条件で乗れるわけではない。GOV.UK

ここで誤解されやすいのが、時速15.5マイルという数字だ。これは、モーターが補助できる速度の上限である。補助が止まった後に自分の脚でこいだり、下り坂で加速したりして、それ以上の速度に達することはあり得る。したがって、車を追い越したことや、時速30マイルに達したことだけで、違法改造と断定することはできない。Transport for London

ただし、基準に適合したE-bikeでも、危険・不注意な走行や信号無視は認められない。GOV.UK

一方、モーターの力で時速30マイルまで加速できる車両は、EAPCの基準から外れる。 定格連続出力が250Wを超える場合や、車両を動かせるペダルがない場合も、自転車扱いにはならない。こうした車両は、法律上、モペッドやオートバイとして扱われる。GOV.UK

公道で使用するには、車種に応じた車両承認や登録、車両税の手続き、適切な免許と保険、基準に適合するオートバイ用ヘルメットなどが必要になる。自転車に似た外見でも、必要な条件を満たさずに走れば違反となり得る。GOV.UK

「普段は制限をかけているから大丈夫」という説明にも注意が必要だ。英国運輸省のガイダンスは、切り替えによって電動で時速15.5マイルを超えられる「オフロードモード」を備えた車両について、EAPCの基準に適合しないとの見解を示している。GOV.UK

また、アクセルが付いていることだけで違法とは判断できない。低速の歩行補助や、必要な承認を受けた「Twist and Go」などの例外がある。確認すべきなのは、車両の仕様と承認状況である。Transport for London

無保険での走行には、車両の押収を伴う可能性がある。警視庁の案内では、無保険運転の固定罰則は**£300と違反点数6点**。裁判になれば上限のない罰金や運転資格の剝奪が科される可能性もあり、押収車両が処分される場合もある。Metropolitan Police

携帯ひったくりで問題になるのは、高出力車両の加速力と機動性だ。警視庁は、犯罪者がこうした車両で電話を奪い、混雑した場所を危険に走って逃走していると説明している。自動車では追いにくい細い道や通路へ入り込めることも、追跡を難しくする要因になる。Metropolitan Police

ただし、路上で電話を奪う人物を捕まえるだけでは、犯罪の収益構造は残る。2026年9月25日、警視庁は、盗難携帯の取扱いなどで3人に合計25年の拘禁刑が言い渡されたと発表した。捜査では、このグループが2024~2025年に英国から中国へ最大4万台の盗難携帯を流したとされる。路上の窃盗から、盗品の集積、国外への輸出までつながる組織犯罪の存在が示された事件だ。Metropolitan Police

警察による取り締まりも拡大している。2026年7月25日の発表では、その年の押収台数は、違法E-bikeとE-scooterの合計で2,500台を超え、すでに2025年通年の台数を上回った。これはE-bikeだけの数字ではないが、車両を対象とした取り締まりの規模を示している。Metropolitan Police

現場では「ローリングロード」と呼ばれる検査装置を使い、改造が疑われる車両の速度性能を路上で調べている。7月24日のカムデンでの取り締まりでは36台を押収し、2人を逮捕した。外見や走行中の印象に加え、車両の性能を検査して違反を確認する取り組みだ。Metropolitan Police

防犯カメラやドローンも活用されている。警視庁の3月の発表では、ウエストエンドで、カメラの担当者やドローンからの情報を受けた追跡チームが出動し、逃走する車両への対応を行っている。Metropolitan Police

さらに8月27日、警視庁は追跡用の高出力Sur-Ron車両を5台から25台に増やしたと発表した。渋滞した道路や狭い通路など、パトカーや従来の警察用オートバイでは対応しにくい場所で、容疑者を追うための装備である。Metropolitan Police

10月8日の発表によれば、9月1日から30日までの携帯電話犯罪対策では700人以上を逮捕し、違法E-bikeを110台超押収した。 盗難端末の取扱いが疑われる店舗などへの捜索も行われ、捜査対象は路上の実行犯から盗品の流通先まで広がっている。Metropolitan Police

被害件数には減少も見られる。警視庁によると、ロンドンの携帯電話の盗難・強盗は、2025年1~8月の49,136件から、2026年の同期間には39,793件へ減った。約19%の減少である。ただし、これは携帯電話の盗難・強盗全体の数字で、E-bikeを使用した事件だけの統計ではない。Metropolitan Police

それでも、8か月で約4万件という規模は重い。取り締まりの成果が発表されても、生活道路で高速走行に遭遇し、歩道でひったくりを警戒する人にとって、不安がすぐに解消されるわけではない。

今後求められるのは、路上での性能検査と危険運転への対応を続けながら、「公道で合法」と誤認させる販売方法や違法改造の供給経路、盗難携帯を換金する流通網にも目を向けることだ。購入者への説明も、保護者が子どもの乗る車両の仕様を確認できる程度に、分かりやすくする必要がある。

E-bikeには、通学や通勤を便利にする役割がある。その利便性を守るためにも、自転車として認められる性能の境界を明確にし、危険な走行と犯罪への悪用に継続して対応することが求められている。

※2026年10月時点の公表資料に基づく。法規制の説明は、ロンドンを含むイングランド、スコットランド、ウェールズの制度を対象とする。

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