イギリスでまた警察の性犯罪問題――女性へのレイプで元警察官が公判、揺らぐ「守る側」への信頼

女性を守り、被害の訴えを受け止めるはずの警察官が、女性に性暴力を加えたとして法廷に立つ。イギリスで再び、警察への信頼を揺るがす事件が報じられている。

2026年10月13日、ロンドンのサザーク刑事法院で、ロンドン警視庁の元警察官マーク・ティレル被告(57)の公判が始まった。被告は女性に対するレイプ2件、性的暴行11件、挿入を伴う性的暴行4件を否認している。検察によると、被告は性犯罪被害者への対応に関する専門訓練を受けていた。Sky News

被害者の声を聞き、支えるための知識を持っていた人物に、その立場とは正反対の行為が疑われている。それが今回の事件の重さである。性犯罪については裁判中であり、有罪が認定された事件と区別して伝える必要がある。

警察の独立監督機関IOPCが2024年に公表した起訴時の説明によると、ティレル被告は職務を通じて女性と知り合った。女性が弱い立場にあると知りながら不適切な関係を持ったとして、公職上の不正行為でも起訴された。捜査は2023年4月に始まり、被告は捜査中に退職している。今回の報道は、その後に始まった公判を伝えたものだ。Independent Office for Police Conduct (IOPC)

検察は公判で、被告が女性を心理的に威圧し、拒否されても、女性が眠っている間などに性的行為に及んだと主張した。また、女性は警察の聴取で、訴えても信じてもらえず、相手が警察官なので警察が彼を守るのではないかと恐れていたと説明したという。これらは検察側が法廷で示した内容である。一方、公職上の不正行為と司法妨害については、被告は既に罪を認めていると報じられている。Sky News

この報道で見過ごせないのは、女性が抱いたとされる、警察が身内を守るのではないかという恐れだ。

性暴力を受けたと訴える人にとって、出来事を説明するだけでも大きな負担になる。相手が警察官であれば、捜査の仕組みを知り、同僚とのつながりもある人物を相手に、自分の話が公平に扱われるのかという不安が加わり得る。今回、法廷で紹介された女性の説明は、その問題を考えさせる。

だからこそ、警察官に関する訴えを、所属する組織から十分な独立性を持って調べられる仕組みが重要になる。相談を受け付ける窓口だけでなく、その後に誰が調べ、証拠をどう保全し、申告者に経過をどう説明するのかまで問われる。

同じ月には、別の元警察官に実刑判決も下されている。

マージーサイド警察の発表によると、元警察官ライアン・シーカー(Ryan Theaker、30)は、知人女性に対するレイプ1件と性的暴行2件で有罪となり、2026年10月8日、リバプール刑事法院で拘禁11年と、その後5年間の延長監督期間を言い渡された。警察自身も、この事件が市民の信頼に与える影響を認めている。Merseyside Police

警察官による性暴力は、過去の話として片付けられない。今月の実刑判決は、その現実を改めて突き付けている。

組織内の女性に対する言動にも、深刻な問題が表れている。IOPCは2026年9月、チャリングクロス警察署の警察官らをめぐる一連の調査で、15人に重大な職務上の非行が認定されたと発表した。その中には、女性の同僚に対し、帰宅途中にレイプされればよいという趣旨の発言をしたとして解雇された警察官も含まれる。Independent Office for Police Conduct (IOPC)

女性に対する暴力を軽く扱う発言を、職場の冗談として流せば、被害を訴える人や問題を指摘する同僚は声を上げにくくなる。警察の指導部には、そうした言動を見逃さず、通報した側が不利益を受けない環境をつくる責任がある。

求められるのは、事件が報じられるたびに謝罪することに加え、被害や兆候を早い段階で拾い上げる仕組みだ。職務を通じて接する人との境界をどう守るのか。警察官による地位の悪用をどう発見するのか。同僚や上司に寄せられた懸念が、適切な調査につながっているのか。具体的な運用を検証する必要がある。

警察官には、人を守るための権限が与えられている。その権限がある以上、立場を利用した加害には厳しい責任が伴う。

助けを求める女性が、警察官を恐れ、相手が組織に守られるのではないかと悩む。そのような不安を減らせるかどうかが、イギリスの警察に問われている。市民の信頼は、被害の訴えを公正に扱い、加害が認定された者の責任を確実に問う、一つひとつの対応によって築かれる。

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