【注意喚起】イギリスは個人情報保護の無法地帯?実際に被害に遭った私の体験談と具体的なリスク

はじめに

「イギリスはGDPRの発祥地だし、個人情報保護に厳しいんじゃないの?」
確かに表向きはそうです。イギリスはEU離脱前、EU一般データ保護規則(GDPR)を導入した国のひとつであり、現在もそれに基づいた「UK GDPR」が存在しています。しかし、現実はどうでしょうか?

今回は、私自身がイギリス滞在中に経験した個人情報流出と思われる実例を紹介しながら、イギリスの個人情報保護に関する”意外な盲点”と、そこから学んだ教訓、対策法についてお話しします。


1. 登録した翌日からかかってくる「謎の電話」

最初のきっかけ:求人サイトへの登録

私がイギリスで最初に驚いたのは、ある求人サイトに登録した翌日のことでした。
特に怪しいサイトではありません。Googleの広告に出てきた、ロンドンの求人を扱う比較的有名な求人ポータルでした。
メールアドレス、電話番号、希望職種など、必要最低限の情報を入力し、履歴書(CV)をアップロードしてアカウント登録を完了しました。

ところが、翌日から状況が一変します。

朝から何度もスマートフォンが鳴り、見知らぬロンドン市外局番の電話がかかってくるようになったのです。最初は「求人エージェントかな」と思って出ましたが、中身は保険の勧誘、仮想通貨投資のセールス、果ては「あなたのローンを肩代わりします」といった詐欺まがいの話ばかり。

電話番号の共有?売却?

それまではまったくなかったのに、サイト登録直後にこうした電話が急増したという事実は、偶然では片づけられませんでした。
私は即座にその求人サイトのプライバシーポリシーを再確認しました。すると、「パートナー企業とデータを共有する場合があります」「マーケティング目的で第三者に提供されることがあります」といった曖昧な文言が並んでいました。

これが、「合法的に」個人情報を売却できる抜け穴です。


2. メールアドレスが”商品”になる瞬間

見たことも聞いたこともない企業からのDM攻撃

次に被害を感じたのはメールアドレスの件でした。
ある日、ローカルのスーパーマーケットのアプリに登録したところ、翌週には全く無関係なエネルギー会社、フィットネスクラブ、不動産エージェンシーなどから定期的にプロモーションメールが届くようになりました。

メールには「あなたが同意したためこのメールを受信しています」とありますが、そんな記憶は一切ありません。

さらに悪質なのは、メールの配信停止リンクを押しても解除されないケースです。一度「市場に出た」メールアドレスは、スパム業者のリストに乗ってしまい、連鎖的に拡散される可能性があります。


3. 本人確認が不要な”売買”の現場

イギリスの個人情報ビジネスの闇

イギリスでは多くの業者が「データブローカー」として活動しています。これは合法的に収集された個人情報を他社に販売・提供する業者です。問題なのは、これらの業者が「どの情報がどこから来たのか」「どのように使われるか」について、ほとんど利用者が確認できないことです。

日本では考えられないほど、個人の情報が「データ」として売り買いされています。


4. 被害事例:個人情報が原因でクレジット詐欺未遂

クレジットカード申請通知が届く

ある日、自宅に「あなたのクレジットカードの申請が承認されました」という封書が届きました。しかし、私はクレジットカードを申請した覚えは一切ありません。

カード会社に問い合わせたところ、「オンラインで申請され、本人確認書類も提出済み」とのこと。幸い不正を疑われて審査は止まっていましたが、誰かが私の氏名・住所・生年月日などを用いてクレジット詐欺を試みたことは明らかでした。

おそらく、以前登録した某教育系サイトのセキュリティが甘く、そこから漏洩した情報が原因だと思われます。


5. 法律はある。でも運用は”甘い”

GDPRという名の「免罪符」

イギリスでは、GDPR(General Data Protection Regulation)をベースにした「UK GDPR」が導入されており、個人データの取扱いには厳しい制限があるとされています。しかし、実際の運用では以下のような問題点が見られます:

  • 利用規約やプライバシーポリシーに非常に曖昧な文言が多い
  • 「同意を得た」と解釈できる仕組み(チェックボックスがデフォルトでON)
  • 利用者が苦情を申し立てても調査・是正に時間がかかる、または対応されない
  • 海外の第三者業者に情報が転送されても実質確認不能

特に、「クッキーの同意」画面も形式的なもので、実際は裏でデータを複数の企業に送信しているケースもあります。


6. 被害を防ぐためにできること【実践的対策】

以下は、私の経験を通じて学んだ、イギリスで個人情報を守るための実践的な対策です。

1. 使い捨てメールアドレスを使う

登録用にメインのメールを使うのは非常に危険です。私は以降、「プロモーション用」「仕事用」「銀行用」と使い分け、メインメールは家族と銀行にしか教えないようにしました。

2. 電話番号は基本的に渡さない

「必須」と書かれていても入力しないといけないわけではありません。ダミー番号やSMS受信専用のアプリ(TextNow、Burnerなど)を活用しています。

3. プライバシーポリシーを読む(最低限)

時間がかかっても、どこに情報が送られるのかを確認します。「第三者と共有する場合があります」とあった時点で回避を検討すべきです。

4. VPNを使う

サイトにアクセスしただけでIPアドレスや端末情報が収集されます。VPNを使うことで、ある程度の匿名性を保てます。

5. 情報削除リクエストを送る

GDPR(およびUK GDPR)には「削除権(right to be forgotten)」が明記されています。企業に対し、保有している自分のデータの開示および削除を請求することができます。


終わりに:無知は最大のリスク

イギリスに住んで実感したのは、「法律があること」と「安全であること」はまったく別の話だということです。個人情報の保護は制度よりも、個人の意識と行動にかかっています。

一度流出した情報は元に戻せません。ほんの小さな油断が、後々大きなトラブルに発展します。

これからイギリスに滞在・移住・留学する方、あるいはイギリス企業とやり取りをする方は、「自分の情報は常に漏れる可能性がある」という前提で、慎重に行動してください。


追記:実際に使って役立ったサービス一覧(参考)

  • ProtonMail(匿名性の高いメールサービス)
  • Burner / Hushed(一時的な電話番号発行アプリ)
  • NordVPN / ExpressVPN(イギリス対応のVPN)
  • DuckDuckGo / Brave(トラッキングをブロックする検索エンジン・ブラウザ)
  • MyDataRemoval / DeleteMe(情報削除代行サービス)

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA