英国に来る者、去る者

英国での移民状況 日本では移民問題というのは今の時点では起こっておりませんが、近い将来起こるかもしれません。英国では毎年多くの移民が入国しています。2023年には120万人が外国から移民を目的として入国していて、そのうちの約50万人が英国を新たな居住地としています。来る者がいれば、去る者もいます。同年、英国から他の国へ出て行ったひとの数は約67万人います。住みつくひとより、出ていくひとのほうが多いというのは驚きです。 どこの国からの移民が多いのか? 英国はEU離脱以降、ユーロ圏以外の国からの移民が増えているとい言われています。どこの国からの移民が多いのか調べてみました。結果は以下のとおりです。 インド 25万人 ナイジェリア 14万人 中国 9万人 パキスタン 5万3千人 ウクライナ 3万5千人 予想通りといえば予想通りですね。ちなみにEU圏からの移民は約5万人となっています。英国のEU離脱前の2015年は33万人なので、だいぶ減りましたね。EU圏のひとは、ビザなし、パスポートなしで英国に気軽に入出国できていたのが、今はビザの申請に高いお金を払わなければいけなくなったうえに、英国にいっても仕事にありつけるかもわからない状態なので、EUからの移民が減ったのは必然といえるでしょう。 英国から去る理由は? 英国といえば、ひと昔前(2015年)はGDPで世界4位と健闘しておりましたが、現在は6位。やはりユーロ離脱後からあまりぱっとしないどころか、不況に突入してしまいました。それに追い打ちをかけるように、ウクライナとロシアの戦争、中東ではイスラエルとハマスの戦争が起きたことにより物価の高騰からインフレと移行し、英国中央銀行は金利を引き上げ、インフレ率は少し落ち着きましたが、物価はまだまだ高止まりしています。せっかく稼いでも、生活費が家計を圧迫して、お金を貯めるどころか個人の借金の額が増えています。こんな状況では、移民のひとたちも逃げていきます。 それでも避難民は来る 移民のなかには、自国で戦争などが起こり、常に命の危機にさらされているという避難民というひとたちがいます。彼らが英国に来ると、住むところも与えられて、仕事をしなくても生活保護が受けられ、子どもは質のいい教育を受けられる、まさに至れり尽くせりです。最近では、イスラエルからの避難民も増えています。 避難民だけではなく、亡命者も受け入れてきた英国 亡命者も避難民とほぼ似た状況に置かれかれたひとたちですが、違法なルートで英国にはいってくるひとたちを指します。亡命者の多くはアフガニスタン、シリア、イラン、スーダンなどで、10人乗りぐらいのゴムボートに40人ぐらい乗り込み、ドーバー海峡を渡ってきます。ドーバー海峡を渡る際に、ボートが沈没したり、ボートから落ちて死ぬひとが後を絶ちません。なぜ、彼らは正規のルートで入国しないのかといいますと、当たり前のことですが英国が年間受け入れる移民の数を制限しているため、毎年限られた避難民しか入国できないのです。 英国が亡命者の受け入れルワンダに 英国は、20年以上亡命者を受け入れ保護してきましたが、自国の経済が右肩下がりになり、自国に経済的支援を必要とするひとが増えてきた状況で、亡命者を救うことが困難になってきました。そこでアフリカ大陸の中央に位置するルワンダに亡命してきた人たちを移送させる計画が2022年に発起しました。英国政府は実に290万ポンド(約556億円)もの予算をこのルワンダ計画に組んでます。なぜ、ルワンダになったのかというのは、安全だということだそうですが、他にもたくさん安全な国はありますのであまり明確な理由とは言えません。恐らく裏で政治家がキックバックをもらうのに弊害が少ないということではないでしょうか。英国との深い関係を築くきっかけにもなり、経済的な支援も受けられるということでルワンダにとってはおいしい話ではあります。 英国が移民を受け入れて何が起きた? 2022年の時点で英国の人口は約6700万人、うち14%にあたる93万人が移民といわれています。ロンドンに関していいますと、実に37%が移民だと言われています。町によっては90%が移民という町も珍しくありません。お店の看板は英語より多言語のものが多かったり、民族衣装をまとった人たちが街中にあふれかえっています。私たちのような欧米文化にあこがれを持つアジア人にとって、そんな光景を見ると少しがっかりしてしまいます。日本が英国のように移民をどんどん受け入れて移民の割合が増えた場合、街から日本語が消え、日本人が消えるという日もそんな遠い未来の話ではないと思っています。

英国ビザの高い壁と、希望の扉「High Potential Individual Visa」──30年前の強制送還から始まる物語

イギリスと聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?紅茶、ビートルズ、ロンドンの曇り空、歴史ある建築物、洗練された英語、そして――「ビザがなかなか取れない国」。 そう、英国は長らく「移民に対して厳しい国」という印象を持たれています。とくに第三国、つまり英連邦外の国から移住を目指す場合、そのハードルは想像以上に高いものでした。 ある若者の夢と、ヒースロー空港での現実 今から30年ほど前、私の友人がまさにその高い壁に挑み、そしてあっけなく跳ね返されてしまった出来事がありました。 当時、彼は東京のクラブでDJとして活動し、海外からのアーティストや観光客とも日常的に接していました。英語力も申し分なく、洋楽やクラブカルチャーに心酔していた彼は、ある日、こう宣言しました。 「俺、イギリスに行く。向こうで本気で何かをやりたいんだ」 当時のイギリスは、音楽シーンが爆発的に盛り上がっていた時期。UKロックやアンダーグラウンドシーンの最前線に飛び込みたいという彼の決意は、本気そのものでした。 出発前夜には彼が勤めていたクラブを貸し切り、仲間内で盛大な送別会を開きました。私もささやかながら餞別を手渡し、彼の門出を祝ったものです。 ところが、彼の冒険は、ロンドンに到着したその日、ヒースロー空港の入国審査で、唐突に幕を閉じました。 「入国の目的は?」と尋ねられた彼は、正直に「仕事を探しに来ました」と答えてしまったのです。 結果、彼は「不法就労目的での入国」と判断され、入国拒否。半日空港の一角で過ごしたのち、強制的に日本行きの飛行機に乗せられて帰国となってしまいました。 “夢を追う”だけでは通用しない国 彼のケースは一見、運が悪かっただけのようにも思えますが、実はこの出来事は「英国という国の移民政策の本質」を見事に象徴しています。 そもそも、日本は国としては裕福な部類に入ります。国内で戦争も紛争も起こっておらず、経済危機で国民が国外に脱出せざるを得ない、というような状況ではありません。そのため、「避難民」や「難民」として他国に保護を求める資格はまずありません。 また、日本人が他国に“出稼ぎ”に行くという発想は、国際的には奇異に映ることがあるのです。たとえ個人として生活が苦しくても、「日本人が就労目的でイギリスに来る」こと自体が前提として想定されていないのです。 そして、観光ビザや短期滞在ビザでの入国中に就労をすることは、明確な「違法行為」となります。たとえ仕事を“探す”だけでも、面接に行ったり、職探しの準備をしたりするだけで、「就労活動」と見なされることがあり、それだけで入国拒否の対象になります。 夢や情熱があっても、それだけでは通用しない。それが30年前の彼の経験を通して見えてきた、現実の国際社会の冷酷さでした。 そして現代――希望の扉が、わずかに開いた しかし、時代は変わります。 かつては“選ばれし者”しか入れなかった英国という国が、近年、新しい制度を導入し、特定の条件を満たす人々に対して「特別なビザ」を発行し始めたのです。 そのひとつが、**High Potential Individual Visa(高い潜在能力を持つ個人向けビザ)**です。 2022年からスタートしたこの制度は、従来の「雇用主スポンサー制」や「永住者との婚姻」などに頼らずとも、個人の能力や学歴に基づいて、比較的自由な形で英国に滞在・活動できる可能性を広げるものでした。 High Potential Individual Visaとは何か? このビザの特徴は、なんといっても「個人の学歴」にフォーカスしている点です。申請資格は、過去5年間以内に、世界的に評価の高い大学の卒業資格を得ていること。つまり、「学歴」が世界的基準で高く評価されていれば、その“ポテンシャル”を信じて、英国が門戸を開いてくれるという仕組みです。 応募資格のポイント つまり、東京大学や京都大学を卒業し、なおかつ卒業後5年以内であれば、英国に“就職前”に渡航し、一定期間自由に活動することができるのです。 一部の人にだけ許される「特権」なのか? この制度は確かに非常に魅力的です。しかし、対象となる人が極めて限定的であることも事実です。 現時点で日本から申請できる人は、東大・京大の卒業生に限られています。「なんだ、やっぱりエリートしか相手にしてくれないのか」と、がっかりする方もいるかもしれません。 しかし、逆に言えば、これはチャンスでもあるのです。 なぜなら、今後この制度は拡大していく可能性が高いからです。英国政府は、対象大学のリストを毎年更新しています。将来的には、早稲田大学、慶應義塾大学、大阪大学、東京工業大学といった他の日本の大学が認定される可能性もあります。 また、アジア、アフリカ、南米などからも優秀な大学が次々とリスト入りしています。つまり、これは「世界中の頭脳をイギリスに集めたい」という英国政府の戦略でもあるのです。 日本人にとっての「出国」の意味を考える ここで少し話を戻しましょう。 30年前、私の友人は情熱と夢を持って英国に渡り、しかし制度の壁によってあえなく追い返されました。 しかし今、同じような夢を持った若者が、もし適切な情報と戦略を持っていたならば、英国で自分の人生を切り拓くチャンスが与えられている――そんな時代になったのです。 日本という国に生まれた私たちは、かつて「出国する理由」がありませんでした。戦争もない、飢餓もない、経済も安定している。だからこそ、「なぜ外国へ行きたいのか?」という問いに対して、強い“理由”を持つ必要がありました。 でも今や、出国は“生き残りの戦略”であり、“可能性への投資”なのです。世界が再び動き出し、国境が開き始めた今こそ、自分自身の可能性を信じて、世界に一歩踏み出してみる価値があるのではないでしょうか。 まとめ:夢を形にするために、制度を知ること ビザとはただの“紙切れ”ではありません。それは夢と現実をつなぐパスポートであり、覚悟と計画性を問われる試金石でもあります。 「High Potential Individual Visa」は、英国が新たに提示した“希望の扉”です。 その扉は、決して誰にでも開かれているわけではありません。しかし、正しい情報と準備さえあれば、その扉をノックし、未来を切り拓くことは十分に可能なのです。 「夢を追う」だけではなく、「夢を叶える」ための戦略――それこそが、今の時代に求められているのかもしれません。

イギリスに入国、イギリスへ移住、イギリスのビザ

イギリス入国に必要なもの 基本的に日本人はイギリスへ旅行などで行かれる際はビザ等の申請は必要ありません。パスポートだけで6カ月までの滞在が可能です。6カ月の滞在ではたりないというひとは、1度イギリスをでてフランスとかに数日滞在してイギリスにもどれば再度6カ月間の滞在ができるようになります。2度目の入国のときは1度目のときよりいろいろと質問されますし、帰国の予定なども聞かれますのでちゃんと日本への帰国用のチケットなどの情報を用意しておきましょう。 ビジネストリップできたからといって働けるわけではない 英国政府のビジネス目的できているひと向けのガイドラインは下記のとおりです。できることではなく、できないことになりますのでご注意ください。 do paid or unpaid work for a UK company or as a self-employed person報酬、無報酬にかかわらずイギリスの会社のために働くこと、もしくは個人事業主として働くこと。 do a work placement or internship研修またはインターンシップ(体験入社) sell directly to the public or provide goods and services商品の販売や商品やサービスの提供 学生ビザでも働ける イギリスには48万人以上の海外からの留学生がいます。うち7割はヨーロッパつまりEUからの学生なのでビザはいりませんでした。今年からは必要になります。日本からイギリスに留学するには学生ビザをとらなければいけません。日本国内ですと多くの大学生はバイトをしています。ただ留学生という身分となると少し制限がかかってきます。大学生の場合は週に20時間まで、夏休み冬休み期間中は40時間までです。また語学学校に通っている人の場合は週に10時間まで働くことができます。 大学を卒業すれば就労ビザがもらえる イギリス政府は2020年の10月に海外からの留学生にたいし大学を卒業したものには2年間の就労ビザを与えると発表しました。2020年以降に学生でこちらに来たひとが対象となりますのでそれ以前に入国しているひとはおそらくビザはもらえません。2年間のビザがあれば就職先を見つけがんばって働けば会社がスポンサーになってくれる可能性はあります。もしそれがだめだとしても職場で素敵な出会いをしてイギリス人と国際結婚なんてことも可能性としてはあります。 イギリスの永住権を取得するには イギリスでは永住権のことをSettlement もしくはIndefinite leave to remainとよんでいます。永住権を取得するための条件ですが下記のものが代表的です。 イギリス人と結婚して5年以上たっていて5年以上イギリスに住んでいるひと 就労ビザを持っていて5年以上働いていてそのあいだ6カ月間イギリスを不在にした年がないひと 以前はイギリスに駐在員として5年以上滞在すれば永住権は取得できましたが、いまは残念ながらできなくなっています。 Skilled Workerビザ イギリスにはSkilled Workerビザというビザもあります。どういうものかというと経験が豊富で肩書もマネージャー以上である必要があります。ただ、どんな職種でもいいというわけではありません。政府のウェブサイトで職種のリストがあるのですが、300種類ぐらいあります。銀行、保険会社、会計士、警察、医者、看護師など立派な職業がほとんどですが、こまかくチェックしてみるとこんな職業もふくまれていました。 フィッシュアンドチップスの店員です。イギリスの食文化を代表する「フィッシュアンドチップス」のお店の店員がSkilled Workerのビザを取得できる資格があるのはおどろきです。これは日本で海外からきた寿司職人にビザをだすといっているようなものです。イギリスにどうしても移住したいうというひとはフィッシュアンドチップスの職人になるというのもありかもしれません。