はじめに イギリスといえば何を思い浮かべるだろうか。紅茶?ロイヤルファミリー?それとも曇りがちな天気?世界中の人々がイギリスに対して抱くイメージはさまざまだが、「美食の国」とはなかなか結びつかないのが正直なところかもしれない。しかし近年、そんなイギリス人たちの食への意識が変わりつつある。「ヘルシー」「ナチュラル」「オーガニック」「ビーガン」などの言葉が街中のスーパーマーケットやレストランに溢れ、健康志向の波が確実に押し寄せている。 だが、その一方で、イギリスは依然として「ジャンクフード天国」とも言える状況にある。チップス(フライドポテト)、パイ、ピザ、ベーコンに揚げ物、そしてペプシやコーラなどの炭酸飲料。コンビニやパブに一歩足を踏み入れれば、カロリーと脂肪にまみれた食品たちが目を引く。この矛盾をどう説明すればよいのだろう? 実はイギリス人の食生活には、ある独特のリズムが存在している。それは「健康への強い意識」と「ジャンクフードへの抗えぬ誘惑」の間を行ったり来たりする、“食の振り子現象”とも言えるものである。本稿では、そんなイギリス人の食生活の実態と背景、そしてその文化的・心理的要因について掘り下げていきたい。 第一章:健康ブームの到来とイギリス人の意識改革 かつて「世界一まずい料理の国」と揶揄されたイギリスだが、21世紀に入ってからの食に対する意識改革は著しい。特にロンドンやマンチェスターなどの都市部では、スムージー専門店、ヴィーガンカフェ、グルテンフリーのベーカリーなどが目立つようになった。スーパーマーケットには「高たんぱく低脂質」のラベルが貼られた食品が並び、SNSでは「ヘルシーな朝食」や「自家製グリーンスムージー」の写真が日々投稿されている。 多くのイギリス人が、日常的に食事の栄養バランスを考えるようになった背景には、肥満率の高さがある。イギリスはヨーロッパの中でも特に肥満率が高く、2020年の統計では成人の約63%が過体重または肥満とされている。医療費の圧迫や生産性の低下が社会問題化し、政府も「オベシティ戦略(肥満対策)」を打ち出すに至った。 このような社会的背景から、一般市民の間でも健康志向が広まり、特に30代から50代の世代を中心に「食事を見直そう」という動きが強まった。多くの人が食生活を整え、ジム通いを始め、ランニングを習慣にし、グリーンスムージーやプロテインバーを日常に取り入れるようになった。 第二章:新たな食文化の模索 健康ブームに乗って、イギリスには世界中の食文化が入り込んできた。和食、中東料理、地中海料理、インド料理など、多国籍な食文化が「ヘルシー」というキーワードで再解釈され、健康食として再構築されている。ロンドンの中心部には寿司ブリトーやビーガンラーメンなど、伝統と革新が融合した料理も数多く見られる。 また、食のトレンドに敏感な若者たちは、オーガニックやサステナブルといった倫理的な視点も食事選びの基準に取り入れている。「環境に優しいビーガン食を選ぶことが、自分自身の健康にも地球の健康にもつながる」と語る若者たちは少なくない。 しかし、こうした新しい食文化の広がりとともに、イギリス人の間にはある種の「ストレス」も生まれている。 第三章:続かない健康生活のジレンマ 健康を意識して食事に気を使い、運動を始めたイギリス人たち。しかし、実際にはそれを「継続」することが難しいという現実がある。たとえば、1月にダイエットを始めた人の約80%が3月までには挫折しているというデータもある。なぜ彼らは長続きしないのか? その理由はさまざまだ。まず第一に、「我慢の限界」がある。極端な糖質制限や脂質カットは、短期間で体重を落とすには有効かもしれないが、精神的な負担が大きい。特にストレス社会に生きる現代人にとって、食べることは大切な「癒やし」でもある。健康のために好きなものを断つことが、逆に精神的なストレスとなり、結果としてドカ食いへと繋がることも多い。 第二に、イギリスの外食文化や食品環境が依然として「誘惑」に満ちている点も見逃せない。パブのフライドチキン、ランチタイムのフィッシュ&チップス、深夜のテイクアウェイ・ピザ。どれも高カロリーながら魅力的で、長時間働いた後や週末の楽しみとして、多くの人々がついつい手を伸ばしてしまう。 第四章:リバウンドと罪悪感のループ 健康的な食事を続けた後に、ある日を境に突如として「解禁」モードに入る。これがイギリス人の食生活における典型的なパターンのひとつだ。たとえば、月曜から金曜までサラダとチキン、オートミール中心の食事をしていた人が、金曜の夜になると「もう我慢できない!」とばかりにピザとビールで“チートデイ”を始める。 週末の暴飲暴食が習慣化し、気づけばまた以前の食生活に戻っている。翌週になって体重が増えていることにショックを受け、再び健康的な食事を始める……。このようなリバウンドと罪悪感のループは、イギリス人の多くにとって“食生活あるある”と言えるのではないだろうか。 特に注目すべきは、このようなサイクルに陥ること自体に対して、イギリス人がある種の“ユーモア”で対処している点である。SNS上では「月曜はサラダ王子、水曜はマックの貴族」などと自虐ネタが飛び交い、「続かないけどやめられない」健康志向の姿が笑いとして共有されている。 第五章:文化的背景と心理的要因 このようなイギリス人の食生活の“揺れ”には、文化的・心理的な背景が色濃く影響している。イギリスは伝統的に「慎ましやかな食事」が美徳とされてきた一方で、産業革命以降に広まった労働者階級の「安価で満足感のある食事」も根強く残っている。 また、天候の悪さや日照時間の短さが人々の気分に影響を与え、「食べることによって幸福感を得る」という心理も強く働いている。これは季節性情動障害(SAD)との関係も指摘されており、炭水化物や糖質に手が伸びやすい理由のひとつとされている。 さらに、イギリス社会には「自己管理」と「自由」のバランスに悩む人が多く、ルールに縛られることへの反発も根強い。そのため、厳格な食事制限やダイエットルールがかえって逆効果になることも多いのである。 第六章:今後の可能性と課題 では、イギリス人はこの“食のループ”から抜け出すことができるのだろうか?答えは簡単ではないが、希望はある。たとえば、近年は「バランス重視」のアプローチが支持を集めつつある。完全な糖質制限ではなく、「平日は健康的、週末は少し楽しむ」といった柔軟な食事スタイルが推奨されるようになってきた。 また、マインドフル・イーティング(意識的な食事)や栄養教育の充実も徐々に広がっており、「食べることはコントロールすべき問題ではなく、自分自身との関係を築く手段である」という認識も浸透しつつある。 おわりに イギリス人の食生活は、健康志向とジャンクフードへの愛情の間を、まるでシーソーのように揺れ動いている。続けようとする努力、しかし誘惑に負けてしまう心、そしてまた立ち上がろうとする意志。この繰り返しの中に、実は「人間らしい食の在り方」が見えてくるのではないだろうか。 完璧を目指すのではなく、楽しみながら健康を意識する――そんな柔軟で等身大のアプローチこそ、これからのイギリスに必要な食のスタイルなのかもしれない。
Category:食文化
味変なしの食文化:イギリスを北上しても変わらぬ味の背景
イギリスという国には、気候的にも文化的にも「南北格差」という言葉がついてまわる。実際に南部と北部では、経済力、アクセント、雇用の状況、政治的傾向など、さまざまな点で違いが見られる。しかし一方で、ある奇妙な一貫性もある。それは、「料理の味付け」に大きな地域差が見られないという点である。 ヨーロッパ大陸の他国、たとえばフランスやイタリアでは、地域によって食材も調理法も味付けも大きく異なる。北イタリアと南イタリアの料理がまったく別物であるように。しかしイギリスでは、ロンドンからスコットランドのインヴァネスまで旅しても、提供されるミートパイやフィッシュ・アンド・チップスの味に大きな違いは感じられない。なぜイギリスでは「味変なし」の食文化が定着しているのか。その歴史的背景と地域性、文化の特異性に焦点を当てながら考察していく。 イギリスの「味の一貫性」が際立つ理由 地理的な背景と農業の制約 イギリスの食文化を語る上でまず押さえておきたいのは、その「地理的制約」である。イギリスは冷涼な海洋性気候に属し、南部であっても地中海のような豊富な野菜や香辛料が育ちにくい。特に北部は寒冷で、育つ作物は限られ、小麦、大麦、ジャガイモ、キャベツ、ニンジンなどが中心となる。南北で農作物にそれほど大きな違いがないため、自然と「味の差異」が生まれにくい。 また、イギリス全体で香辛料の使用は比較的控えめであり、塩・胡椒・ビネガー・マスタードなど、基本的でシンプルな調味料が中心となっている。この傾向は、地域ごとの大きな味の違いを生みにくくする。 産業革命による標準化と工業化 イギリスの食文化が画一化したもう一つの大きな要因は、18世紀後半から始まった産業革命である。産業革命は都市への人口集中を生み、労働者階級を大量に生み出した。この時代、食事は「栄養を効率的に摂る」ことが主目的となり、調理よりも大量生産・保存性が重視された。 工場労働者向けの簡素な食事(パイ、ポリッジ、ベイクドビーンズなど)が一般化し、その味付けは非常にシンプルだった。特定の地域で特別な料理が発展する余地は少なく、ロンドンでもリヴァプールでも同じような「労働者食」が食卓を支配することになる。 缶詰食品やレトルト食品の普及も「味の標準化」に拍車をかけた。全国のスーパーで同じものが手に入るようになることで、家庭料理のバリエーションはむしろ減少していく。こうしてイギリスは「どこでも同じような味」の国へと進んでいった。 階級社会と料理:味の「意識的な均質化」 中流階級の拡大と「無難な味」 イギリスの食文化におけるもう一つの鍵は、「階級意識」である。イギリスは伝統的に強い階級社会であり、食べ物の嗜好にもその影響が色濃く反映されてきた。たとえば19世紀ヴィクトリア朝時代、上流階級ではフランス料理のような洗練された料理が好まれた一方、下層階級は粥やパイといったシンプルな食事に甘んじていた。 20世紀に入り中流階級が拡大してくると、彼らは「冒険的でない、保守的な味」を好むようになった。これは、上流のような過剰な贅沢でもなく、下層のような質素さでもない、「中庸で安心感のある味」である。このような味覚の志向が国民全体に広がり、味の個性よりも「無難で失敗のない味」が支持されていくこととなった。 スパイスへの距離感:植民地と本国のギャップ インドやカリブ諸島など、多くの植民地を抱えたイギリスは、実は豊富なスパイスやエスニックな料理に触れる機会があったはずである。実際、現代のイギリスでは「チキン・ティッカ・マサラ」が国民食とも呼ばれる。しかし、これは比較的近年の話である。 本国のイギリス人にとって、「スパイスのきいた料理」は長らく「外のもの」であり、自国文化に根付くことはなかった。味付けにおいても、家庭では変わらず塩と胡椒がメインであり、地域ごとのスパイスの使い分けなどは発展しなかった。つまり、イギリス本土ではスパイス文化が「外付け」として扱われ、地域内で消化されることが少なかったのである。 地域料理の存在とその限定性 イギリスにも地域料理は存在する もちろんイギリスにも地域料理は存在する。スコットランドのハギス、ウェールズのラムとリーキのスープ、コーンウォールのパスティなどがその代表例だ。しかし、これらは「地域のアイデンティティ」を象徴するものであり、日常の味付けや食卓に大きく影響する存在ではない。観光客向けに提供されることが多く、「特別な料理」として扱われることが多い。 食材の違いより、「名称」や「形式」の違い たとえば、北イングランドで提供されるブラックプディング(豚の血のソーセージ)はマンチェスター名物とも言われるが、味そのものはスコットランドのブラックプディングと大差はない。ヨークシャープディングといっても、味付けは小麦粉と卵、牛乳であり、そこにスパイスの違いが出るわけでもない。 つまり、イギリスでは「料理の名前」や「食べられる形式」に地域性が現れても、「味覚の違い」にまでは発展しないことが多い。 グローバル化と再びの「均質化」 現代のイギリスでは、ロンドンやマンチェスターなどの都市を中心に、移民の影響で多様なエスニック料理が普及している。とはいえ、それらは「外食」文化の一部であり、「家庭の味」としての地位を確立しているわけではない。 加えて、冷凍食品、全国チェーンのスーパー、デリバリーサービスなどが普及したことで、ローカルな味の違いはますます希薄化している。リヴァプールの冷凍パスタと、リーズのそれとで大きな味の差を感じることはない。 イギリス人の味覚そのものが変わらない? ここまでの議論をふまえて言えることは、イギリス人の味覚自体が「地域差を好まない」ように社会的に形成されてきた、ということである。控えめな味付け、素材の味を重視する姿勢、過剰なスパイスへの警戒感、階級意識からくる保守的な食習慣などが複雑に絡み合い、「味変を求めない国民性」が育まれてきたとも言える。 結論:味の変化は望まれなかった イギリスでは、南から北へ移動しても料理の味付けが変わらない。この背景には、農業的制約、産業革命による食の画一化、階級社会による味覚の統一、そして現代のグローバル経済による均質化がある。言い換えれば、イギリスにおいて「味の一貫性」は、偶然ではなく必然なのだ。 寒さが厳しくなる北へ向かっても、フィッシュ・アンド・チップスの塩気やビネガーの酸味は変わらない。それは、変わらないことこそが「イギリスらしさ」であり、イギリスの食文化の最もユニークな側面のひとつである。
イギリスは旬がない国?――季節感のない食文化とその背景
はじめに 四季のある日本で育った私たちにとって、「旬(しゅん)」という概念はごく自然なものです。春には筍、夏にはスイカやトマト、秋には栗やサンマ、冬には大根や白菜など、季節が巡るたびにスーパーの棚にも変化が現れ、家庭の食卓もそれに合わせて彩られます。 ところが、イギリスに住んでみると「え、これってずっと同じものばかりじゃない?」と感じる瞬間が多々あります。スーパーで売っている野菜や果物、肉、惣菜のラインナップが、冬でも夏でもほとんど変わらない。そして、気温が30度を超えていても、カレーやローストディナーがメニューに並ぶ。 「イギリスには旬がない」と言うと、やや言い過ぎかもしれませんが、あながち間違ってもいないように思えます。この記事では、イギリスの「季節感のない」食文化の背景や、なぜ彼らは暑くても寒くても同じものを食べ続けられるのかについて、実際の生活経験をもとに掘り下げてみたいと思います。 1. イギリスのスーパーに行ってみた まずは、イギリスの一般的なスーパー(Tesco、Sainsbury’s、Waitroseなど)での実態から。 スーパーの青果コーナーでは、1月でも7月でも同じ顔ぶれが並びます。ミニトマト、アボカド、パプリカ、ズッキーニ、マッシュルーム、袋詰めのサラダリーフ、ジャガイモ、人参、玉ねぎ。果物もほぼ同じで、バナナ、りんご、オレンジ、ブルーベリー、キウイ、イチゴなどが常時販売されています。 季節によって「プロモーション」が変わることはあります。例えば、春にはアスパラガスが特売になったり、秋にはパンプキンがハロウィン向けに並んだりしますが、それは「限定商品」的な存在で、メインストリームにはなりません。 冷凍食品のコーナーも同様です。フィッシュ&チップス用の白身魚、冷凍ピザ、ミートパイ、冷凍ベジタブルミックスなど、季節に関係なくいつでも買える状態になっています。 この「いつでも買える」ことが、逆に季節感を消してしまっているのです。 2. なぜイギリス人は同じものを食べ続けられるのか? ■ 食への関心の低さ? 「イギリス人は食に興味がない」とよく言われます。もちろん、全員がそうではありませんが、「食=生きるための手段」と割り切っている人が少なくありません。 多くのイギリス家庭では、レシピのバリエーションが極端に少なく、平日は「スパゲッティ・ボロネーゼ」「フィッシュ&チップス」「ローストチキン」「ピザ」「レディミール(出来合いの電子レンジ食品)」を繰り返す生活。気候に合わせてメニューを変えるという発想がそもそも薄いのです。 暑い日でも、グラヴィーたっぷりのローストビーフや、クリーム系のパイが食卓に登場します。「暑いから冷たいものを…」という感覚は希薄で、冷やし中華やそうめんのような発想は存在しません。 ■ 効率重視の生活スタイル イギリスでは、「週に一度まとめて買い物をして、一週間分の献立をあらかじめ決めておく」というライフスタイルが一般的です。冷蔵庫や冷凍庫も大きく、一回の買い物で大量に買い溜めします。 そのため、「今日は暑いからあっさりしたものが食べたいな」というような気分に応じた買い物や調理はあまりされません。むしろ、事前に決めたプランに沿って淡々と消費していくことが合理的とされています。 3. グローバル化による季節感の喪失 イギリスのスーパーには、世界中の食材が一年中入ってきます。トマトはスペイン、アボカドはメキシコ、ブルーベリーはチリ、さくらんぼはトルコなど、季節に関係なく世界中から輸入されています。 これはイギリスが島国でありながらも、かつての大英帝国時代から続く貿易大国の名残とも言えます。国内の農業だけで食料をまかなうのは非現実的であり、スーパーの棚は「世界の味」で埋め尽くされているのです。 当然、「その土地でその時期にしか採れない」という感覚は薄れ、結果として「旬=特別なもの」という意識も消えていきます。 4. 日本との比較:なぜ日本人は旬を重視するのか? ここで、日本の食文化との違いを考えてみましょう。 日本は農業国であり、四季がはっきりしていることもあり、「今しか食べられない味」に対して非常に敏感です。和食の世界では「走り(初物)」「旬」「名残(季節の終わり)」といった考え方があり、それに合わせた献立が組まれます。 また、テレビ番組や雑誌でも「春の味覚特集」「秋の味覚祭り」といった季節商戦が展開され、消費者側にもその季節に応じた味を楽しもうという意識が根付いています。 このような文化背景の中では、「旬を楽しむ」ことが自然な行動となるのです。 5. 季節感の欠如は悪いことなのか? ここまで読んで、「イギリスって文化的に劣っているのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、見方を変えれば、「いつでも好きなものが食べられる自由」「計画的で無駄のない食生活」とも言えます。 また、近年ではイギリス国内でも「地産地消」や「サステナブルな食材選び」といった動きがあり、ローカルのマーケットやオーガニックショップでは、季節の食材を意識する取り組みも始まっています。ロンドンなどの都市部では、旬の素材を使ったモダンブリティッシュ料理のレストランも増えてきました。 つまり、「旬の感覚がゼロ」ではなく、「一般大衆の食生活にそれが反映されにくい」というだけの話かもしれません。 6. イギリス流の「旬」を見つける楽しみ方 とはいえ、イギリスでも探せば「小さな旬」は存在します。 例えば: これらはスーパーでも見かけますが、より鮮明に感じられるのは地元のファーマーズマーケットや、直売所(Farm Shop)などです。そういった場所では、天候や気候の変化に即した「今が食べ時!」な野菜や果物に出会えることも。 まとめ:イギリスに「旬」はないのか? 結論としては、「イギリスには日本のような『旬』文化は根付いていないが、まったく存在しないわけではない」というのが実情です。 むしろ、気候や文化、経済システムの違いから、「いつでも同じものを食べられること」を選んできた社会とも言えます。 その一方で、イギリスでも少しずつ「季節感」や「食の多様性」を見直す動きがあり、特に若い世代や移民の多い地域では食への関心も高まりつつあります。 日本の「旬を味わう」文化を大切にしつつ、イギリス的な「安定した供給」と「合理的な食生活」のバランスを見つけることも、海外生活を豊かにするコツかもしれません。 筆者より一言「旬がない国」と聞くと少し味気ない感じがするかもしれませんが、それもまた文化の一部。イギリスで暮らしていると、”same old”(いつも通り)な日常の中に、小さな季節の変化を見つけるのも一つの楽しみ方です。
イギリス人は「いくら」を食べない──魚卵食文化が超えられない文化の壁である理由
日本の食文化は世界でも独特だとよく言われます。「世界三大料理」には入っていませんが、日本食がユネスコ無形文化遺産に登録され、ヘルシーでバランスがよく、見た目にも美しいと評価されていることは周知の通り。しかし、そんな日本食の中でも“越えられない壁”として海外の人々が躊躇するジャンルがあります。そう、それが魚卵です。 「魚の卵を生で食べる」──その発想自体がありえない まず、イギリスに住んでいる、あるいはイギリス人の友人を持つ日本人であれば一度は経験したであろう質問。 「それ、何?」「……え、魚の卵?それって生?」「うわ、それってちょっと……グロくない?」 イギリス人にいくらを出すと、まず間違いなく眉間にシワを寄せられます。色鮮やかにキラキラと光るオレンジ色の粒が、彼らにはどう見えるのか。「未成熟な生命体の集合体」「内臓」「生き物の分泌物」……とにかく“食べる”という発想が浮かばないのです。 ここに文化の違いがあります。日本では、おせち料理における数の子は子孫繁栄の象徴。いくらは軍艦巻きの定番。明太子は朝ご飯にも、おにぎりにも、お酒のおつまみにも使われる定番食材。一方でイギリスには、そもそも「魚の卵を食べる文化」がほとんど存在しません。せいぜいキャビアですが、それは「食べる」というより「嗜む」もの。高級品であり、日常的な食卓に上がることはありません。 数の子に感じる“嫌悪感” 数の子を見せると、イギリス人の多くは一瞬フリーズします。透明感があり、ぷちぷちした食感、黄味がかった色合い……。 「え、これは……歯の詰め物?」「スポンジ?いや、虫の卵?」 といったリアクションは冗談ではありません。イギリス人の多くにとって、「魚卵=奇異な存在」なのです。そしてその嫌悪感の根底には、魚というものに対する欧米の価値観の違いがあります。 イギリスでは基本的に魚は「白身で、骨が少なく、臭みがない」ことが好まれます。タラ、ハドック(鱈の一種)、サーモンなどがその代表。調理法もフライやグリルが主流で、魚の内臓や卵を積極的に食べようという意識がほぼ皆無です。 数の子やししゃもに卵が入っていたとき、彼らはこう言うでしょう。 「それはきちんと掃除されてないってこと?」「料理が失敗してるんじゃないの?」 これが普通の感覚。発想が“いやらしい”というより、“理解不能”なのです。 いくらは「目玉のように見える」 さらに言えば、いくらに至っては見た目がグロテスクと感じられることが多いようです。日本人が「宝石みたい」「美しい」と感じるいくらのビジュアルも、イギリス人から見るとどこか「目玉」「内臓」「透明な寄生虫の卵の集合体」のように見えるというのだから驚きです。 これに関して、ロンドンのあるフードライターが語っていたことが印象的でした。 「初めていくらを見たとき、脳内にサイエンスホラー映画の映像がよぎった」 日本人が見れば「絶品」の軍艦巻きが、彼らにとってはホラーの小道具に見えるというのです。 「でも日本フリークなイギリス人は食べるんでしょ?」──それ、例外です たまにこんなことを言う人がいます。 「でもさ、イギリス人でもいくらとか明太子とか食べてる人いるよね?」「海外の寿司屋でもサーモンいくらロールとか人気あるって聞いたし」 確かに、そういうイギリス人は存在します。しかし、そういう人たちはただの例外であり、大抵は“筋金入りの日本フリーク”です。アニメや漫画、和食にハマり、日本語を勉強して、日本人の彼女がいるようなタイプ。つまり、日本文化に対する特別な愛着があって初めて“食べられる”ようになるのです。 いくらを最初に食べるときも、彼らは葛藤します。 「怖いけど……トライしてみたい」「ナルトも食べてるし……頑張ってみようかな」「ここで逃げたら日本通とは言えない!」 もはや挑戦は“食文化”というより“アイデンティティの証明”です。 英国文化圏における「卵」のイメージの差異 そもそも欧米、とりわけイギリスにおいて「卵」というのは主に鶏卵を指します。ゆで卵、目玉焼き、スクランブルエッグ、卵サンド──卵はたしかに身近な食材ですが、あくまで「加工されたもの」「火を通したもの」としての位置づけ。 一方、日本における卵文化はもっと幅広く、「生食」が当たり前。魚の卵も、鳥の卵も、うにのような海産物の卵巣まで、ありとあらゆる卵を食する文化が根付いています。これに対して、イギリス人の感覚は極めて保守的。彼らにとって、「卵=精子や受精卵の塊」という生々しい発想が勝ってしまうため、どうしても食欲をそそられないのです。 「日本人が異常」というわけではない ここで誤解してほしくないのは、「イギリス人が保守的」だからといって「日本人が異常」なわけではないということ。あくまで文化の違いであり、味覚の習慣であり、食材への心理的バリアの有無の問題です。 それでも、「魚卵は普通に食べるものだよ」と思っている日本人にとって、イギリス人の反応はやはり驚きでしょうし、時にはがっかりするかもしれません。しかしそれは、彼らが悪いのではなく、想像の枠組みそのものが異なるのです。 それでも魚卵を布教したいあなたへ では、日本人がいくらや明太子、数の子といった魚卵文化をイギリス人に紹介したい場合、どうすればよいのか? 答えは一つです。 最初から勧めないほうがいい 無理に進めると逆効果です。「日本食=グロテスク」という印象を植え付けかねません。まずはサーモン、枝豆、照り焼きチキン、唐揚げ、たこ焼きなど“無難で受け入れやすい”メニューから始めて、「日本食って美味しい!」という印象を深めてもらいましょう。 魚卵に手を出すのは、それからです。そしてもし彼らが魚卵に挑戦したのなら、こう言ってあげましょう。 「よく頑張ったね。これで君も、立派な日本マニアだ」 最後に 文化とは、不思議なものです。ある人にとっては日常の食べ物が、他の人にとっては異世界のグルメになる。魚卵はその最たる例でしょう。 イギリス人がいくらを食べないのは、単なる好き嫌いではなく、文化的な背景と認知の違いに基づく当然のリアクションです。そして、そんな違いを「変だ」と笑うのではなく、「面白い」と感じられることこそが、本当の食文化交流の第一歩なのかもしれません。
【なぜ!?】イギリス人が“激マズ中華料理”を愛してやまない理由をガチで考察してみた
「イギリスの中華料理は世界一マズい」――海外旅行好きの間で、もはや都市伝説級に語り継がれているこのフレーズ。筆者自身もイギリスに留学していた経験があるのだが、まさかこの“伝説”が、ここまで事実に忠実だったとは思わなかった。 それもそのはず。中華料理の看板を掲げているのに、中身はどう見ても「油とソースでぐっちゃぐちゃの茶色い何か」。見た目も味も“もはや料理と呼んでいいのか怪しい代物”が堂々と提供され、しかも地元のイギリス人たちは「これがベスト・チャイニーズ」と言わんばかりにニコニコして食べている。 なぜ彼らは、あの“中華モドキ”を心の底から愛しているのか? 本場の中華料理を差し置いて、「イギリスの中華の方が美味しい」と本気で思っているのか? そして、なぜ我々日本人はそれを受け入れられないのか? 今回はそんな謎だらけの「イギリス中華」文化について、元留学生の目線から考察していく。 ◆ イギリスの「中華料理店」に入って最初に感じる違和感 筆者が初めてロンドンの中華料理店に足を踏み入れたのは、深夜12時過ぎ。ほろ酔い気分で友人と「ラーメンっぽいものでも食べるか」と軽いノリだった。 店内はガラガラかと思いきや、なぜか満席。みんな笑顔で、茶色くテカテカした“謎の炒め物”をシェアしている。 テーブルに運ばれてきたのは、「スイート&サワー・チキン」なるメニュー。真っ赤なソースが滴る揚げ鶏の塊に、パイナップルとピーマンが申し訳程度に散らされている。 一口食べた瞬間、筆者の頭に雷が落ちた。 「……甘っ!!!」 それはもはや“料理”ではなく、“お菓子”だった。 そして次に頼んだ「チャーハン」も、見た目はまあ普通だったが、味は塩と油だけのシンプルすぎる味付け。米はパサパサ、具材はほとんど見当たらない。 これはもしや、中国の料理をイギリス風にアレンジした“別の何か”なのでは…? そう、これが「British Chinese」なる謎カテゴリの始まりだった。 ◆ 「British Chinese」とは何か?──もはや中華料理ではないが中華料理と呼ばれる存在 イギリスで“中華料理”と呼ばれている料理の多くは、中国本土の料理とは似ても似つかない。たとえば以下のような定番メニューがある: 中には「Salt and Pepper Chips」という、“塩コショウ味の中華風フライドポテト”なんていうトンデモ料理まである。 つまり、中華料理というよりは“イギリス人のための中華風ファストフード”なのだ。 ◆ なぜイギリス人は「British Chinese」を好むのか? ここで本題に戻ろう。なぜイギリス人は、これほどまでに奇妙な“中華風料理”を愛してやまないのか? いくつか理由を挙げてみよう。 ① 幼少期からの「味覚の形成」にある イギリスの家庭料理は、基本的に味が「薄い」または「単調」なことが多い。ローストビーフ、ベイクドポテト、ミントソース、フィッシュ&チップス…どれも素材の味を活かすスタイルであり、スパイスや複雑な調味料はあまり使わない。 そのため、甘くて濃くて油ギッシュな「British Chinese」の味は、彼らにとって“刺激的でエキゾチックなごちそう”なのだ。 ② ピザやケバブと並ぶ「酔っぱらい飯」として定着している イギリスでは金曜の夜、パブで浴びるように酒を飲んだあと、〆に食べる定番のデリバリーが「中華」か「ケバブ」だ。 つまり「British Chinese」は、酔っぱらって味覚が崩壊した状態で食べる“深夜飯”として最適化されているのだ。 まともな味覚で食べたら微妙でも、アルコールに脳を支配されている状態だと、甘じょっぱくてドロドロしたものが「最高に美味しく」感じてしまう。これには筆者も何度か屈した。 ③ ノスタルジーと文化的安心感 「子どもの頃から誕生日や金曜のご褒美で食べてた」など、British Chineseにはイギリス人の記憶と密接に結びついた郷愁がある。カレーライスやハンバーグが我々にとって“家庭の味”であるのと同じ。 結果として、「本場の中華料理は脂っこすぎる」とか「八角の味が嫌い」など、逆に“リアル中華”が受け入れられない現象が起きている。 ◆ 一方、日本人がイギリス中華を拒絶する理由 じゃあ逆に、なぜ我々日本人は「British Chinese」を受け入れられないのか? ① 日本の中華料理のレベルが異常に高すぎる 日本には町中華というジャンルがあり、安くて美味い本格中華がどの駅前にも存在する。加えて、四川料理、広東料理、上海料理などの専門店も豊富。 つまり日本人にとって「中華=旨い」が前提なので、あの“甘くて茶色い中華風ミートボール”を中華料理と認識することができないのだ。 …
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イギリスは本当に「飯のまずい国」?舌の記憶からの出発
イギリスに住んでいた、あるいは旅行で訪れた日本人の多くから聞かれるフレーズ――「イギリスのご飯って、どうしてあんなにまずいの?」「まずい」という印象が先行しがちですが、これは本当に普遍的な評価なのでしょうか。 まず前提として、イギリス料理の歴史的背景、食文化、消費税・労働賃金などの社会構造、そして「比較対象としての日本料理」がもたらす心理的ハードルなど、複雑な要因が絡んでいます。だからこそ、「飯マズ国家」という言説だけで片づけてしまうのはもったいない。むしろ視点を変えてみると、意外な発見もあるものです。その意味で、「イギリスに食べログは成立するのか?」「美味しいところ数件だけなら、そもそもレビューサイトいらなくない?」という問いは、非常に良い切り口かもしれません。 食のレビュー文化と「多様性」の重要性 ■評価の母数が少ないって、実際どうなの? 日本のように「食」に対する関心が社会文化として根付いている国では、グルメサイトが充実し、レビューも数十件〜数百件と膨大です。しかし、イギリスにおいては、そもそも外食文化が日本とは異なります。・レストランよりパブやカフェ文化が強い・テイクアウトが中心的である・家庭料理もバリエーション豊かだが、それをレビューに求めない風潮 そのため、某グルメサイトにおけるレビュー数も総じて少なめ。たとえば人気のフィッシュ・アンド・チップス店に10件、パブに20件といった規模感。日本で同じ店のレビュー数が500件だったら、むしろ「少ない」と感じるのが自然かもしれません。 ただ、それでも「数件」のレビュー自体が意味を成さないか、というとそうではありません。むしろ数十件でも、・現地の人が評価しているなら注目すべき・旅行者視点と地元視点の違いが分析できる・信頼性や予測度の高いレビューが浮き彫りになる と考えられます。つまり、レビュー母数が少ないからといって「不要」とは限らないのです。 ■レビュー少なめでも「質」で勝負できる食べログ型サービスの可能性 少ないレビュー数だからこそ、「質」が問われます。英国内のアルコール事情も踏まえ、 ここで極端な話、レビューが8件しかなくても、実はその中の5件がプロ並みのコメント(例:「鱈の衣のサクサク感とタルタルの酸味のバランスが絶妙」「北部名産のチェダーチーズを使ったチーズ&チップスは塩加減と溶け具合が理想的」等)であれば、それだけで十分に役立ちます。 イギリスの美味しい「数件」を見つける醍醐味 ■「穴場」を探す面白さ 日本の都市部で「旨い店」探しをしても、メジャーすぎて発見が少ない。一方イギリスには、観光客には知られていない隠れ名店が多数存在します。・ロンドン郊外の町で地元に人気のパブ飯・コッツウォルズのファーム・カフェ・北部でしか味わえない伝統的パイ料理 「イギリスマズいなんて誰が言った?」となるような味に出会えれば、その希少性だけで記憶に残ります。 ■レビューが少ないからこそ「間違いにくい」 日本のレビューサイトにありがちな「ランキング操作」「ファン同士の評価バイアス」「同業ライターによる介入」などの罠は、イギリスでは比較的少ないと考えられます。母数は少なくとも、そこに変なノイズが少なければ、「素直なレビュー」の確率はむしろ高まるのです。 食べログ型サービスの意義とは? 「美味しいところが数件しかない国」では、レビューサイトが不要なのか――?私はそうは思いません。以下のような点で、食べログ的機能は有用です。 イギリスで実際に高評価な店の例(ちょっと紹介) ※ここではあえて名前は伏せますが、こんな店が評価されています: レビュー数に差はあるものの、「内容」の質が高いため、信頼感があるのです。 「美味しいのを探す旅」にこそレビューは価値がある 海外旅行での食選びは、ある種のギャンブル。「当たり」を狙うほどレビューの価値は上がります。イギリス旅行経験者が少しずつレビューを書き蓄えることで、有意義な情報が育ちます。 「飯マズ国家」などと自嘲的に言うより、むしろ「まずいと思ってほしくない」「実はこんなにおいしい店もあるんだ」と肯定的に拾い上げていくレビュー文化こそ、食べログ的サイトにぴったりなのではないでしょうか。 まとめ:数は少なくても、レビューの意味は濃い 「イギリスは飯まずいからレビューいらない」なんてことはありません。むしろ今は、サイトとしてスタートするには最適な環境かもしれない。そういう前向きな視点で、ぜひ「イギリス飯のリアルな声」を集めてみませんか?
肉オンリーでもスリム?イギリスの“肉食者”を徹底解析
最近、SNSや海外メディアなどで「肉だけ食べてるのに、なんで痩せてる人が多いの?」という声をよく目にします。特にイギリスでは「Carnivore Diet(カーニボア・ダイエット)」と呼ばれる、“ゼロ・カーボ”、“肉オンリー”の食生活を送る人たちが少なくありません。 実際、日本人には少し信じがたいですが、イギリスにはその信奉者が一定数おり、彼らの肉体は決して「ぽっちゃり体型」には見えないケースが多い…。日本の常識からすると驚きですよね。 そこでこの記事では、彼らの食生活と体型がどう結びついているのか?その真相を徹底解析していきます。 1. カーニボア・ダイエットとは? カーニボア・ダイエット(Carnivore Diet)は、動物性食品のみを摂取し、植物性食品・炭水化物・食物繊維などを一切除外する食生活です。肉、魚、卵、チーズなどが主です。一部では牛肉のみ「ライオン食」と呼ばれる極端なバリエーションも存在します 。 このダイエットは「ゼロ・カーボ」かつ「高脂質・高タンパク」なケトジェニックの極端な形であり、標準的な“5 A Day(1日に少なくとも5種の果物・野菜)”的なガイドラインには対極をなします 。 2. イギリスで流行する背景 2-1. 減量・健康改善のニーズ 多くのフォロワーが、減量や血糖コントロールを目的にこの食事法を始めています。例えば、糖尿病治療薬やインスリンを中止できた人もおり、実際にBMIが下がったという報告が多数あります 。 2-2. 食のミニマリズム × ミレニアル思考 「食はシンプルに」「原初の食は肉だった」といった思想も根強く、過剰な食品添加物や農薬、炭水化物への疑問から始まるケースも散見されます 。 またSNS発信する“肉インフルエンサー”も登場し、「肌がキレイになった」「脳が冴えた」「体臭が変わった」など、さまざまな好転報告が目立っています 。 3. 食べるだけでスリム?その理由とは 3-1. 食事量が自然に減る 肉&脂肪は高い満腹感(サチュエーション)をもたらし、食事の回数や量が減る傾向があります 。結果、総カロリー摂取が減り、体重が落ちるのです。 3-2. ケトーシスによる脂肪燃焼 炭水化物をほぼゼロにすることでケトーシス状態になり、脂肪がエネルギー源として使われやすくなります。これも短期的には体重減少効果が高い理由のひとつです 。 3-3. 血糖コントロールの改善 炭水化物を摂らないことで血糖の急激な上下動が減り、インスリン抵抗性の改善につながることが報告されています 。これにより、肥満や2型糖尿病のリスクが軽減される面もあります。 4. なぜ“太りにくい”のか? 4-1. カロリー制限と自然減食 満腹感のおかげで無意識にカロリーを減らしやすく、結果的に体重が落ちやすい。 4-2. 栄養バランスの偏りでも痩せる 炭水化物を摂らないため、血中グルコース・インスリンの乱高下がなく、脂肪蓄積のシグナルも減少。 4-3. 糖質依存からの断食 糖質依存状態からの脱却により、脳のカロリー要求が安定し、過剰な食欲が抑制されやすい。 5. ただし…長期的リスクも無視できない 5-1. …
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「イギリスの食材でご飯が進む!現地で買えるおすすめおかず・アレンジレシピ特集」
🌾 はじめに 日本人にとって、白いご飯は毎日の主役。おかずがその主役を引き立て、時にはその美味しさを高めてくれます。一般には和食やアジア系の味付けとの相性が語られがちですが、イギリスにも、ご飯と意外と相性の良い食材や調味料があるんです。 この記事では、イギリスでポピュラーな食材を使って、 そんなアイデアをたっぷりご紹介します。 1. イギリスの定番、レッドペッパー・ジャム × ご飯 1.1 レッドペッパー・ジャムとは? スイートペッパー(赤・黄パプリカ)を使った甘口のジャムです。イギリスの朝食ビュッフェやマーケットでよく見かけます。 1.2 ご飯との意外なマリアージュ 甘みとほのかな酸味は、白ご飯との相性◎。まずはシンプルに、熱々のご飯にジャムをのせるだけでも、止まらない味に。 ポイント 1.3 アレンジ提案 2. スモークサーモン × ご飯 2.1 イギリス名物のスモークサーモン スコットランド産のサーモンは脂がのっていて、香り豊か。スコーンやベーグルにもよく使われます。 2.2 そのままでも、ご飯と合う ご飯にのせて、刻み海苔や小葱、少しのわさび醤油を垂らせば即席「スモークサーモン丼」に! 2.3 レシピアイデア 3. マーマイト & チーズ × ご飯 3.1 発酵食品マーマイトとは? 酵母エキスのペーストで、独特の塩気と旨味が特徴。イギリス家庭では朝食トースト用定番。 3.2 ご飯に塗って「和風ライス・トースト」風 バターご飯にちょい足しすれば、香り豊かなマーマイトご飯に変身。チーズを乗せてトースターで焼けば、和洋折衷の美味しさ。 3.3 レシピアイデア 4. ハイランド・ミルクバター × ご飯 4.1 スコットランド産の濃厚バター イギリス各地のバターは塩味・発酵風味こそやや控えめですが、ミルクの甘さとコク共存が魅力。 4.2 バターご飯の美味しさ 塩と醤油少々で、簡単バターライス。コーンやきのこのソテーと合わせれば、洋風炊き込みご飯的に。 4.3 …
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アムステルダムに行って改めて感じた、ロンドンのレストランのレベルの低さ
先日、ふと思い立ってオランダの首都アムステルダムに小旅行してまいりました。ここ数年、ロンドンで生活してきて食にはそれなりに慣れてきたつもりでしたが、今回アムステルダムで過ごした数日間で、ある種のカルチャーショックを受けたと言っても過言ではありません。それは、美術館でもなければ運河の景色でもなく、「レストランのレベルの違い」でした。 ヨーロッパ随一の観光都市・アムステルダムの魅力 アムステルダムといえば、言わずと知れたヨーロッパを代表する観光地。ゴッホ美術館やアムステルダム国立美術館といった世界的なアートギャラリーをはじめ、アニー・フランクの家、レンブラントの故居など、芸術と歴史が融合した街として知られています。街のいたるところに運河(カナル)が張り巡らされており、ボートで巡る小旅行は実に風情があり、まるで絵画の中に迷い込んだかのような気分にさせてくれます。 こうした観光的な魅力に加え、私が特に感心したのが「サービスのきめ細やかさ」でした。観光都市であるがゆえ、ホスピタリティのレベルが高いことはある程度予想していましたが、それを軽々と上回る丁寧さと心配りに、思わず感動する場面が何度もありました。 驚異的にレベルの高いアムステルダムのレストラン そして何より驚かされたのが、アムステルダムの「レストラン文化の豊かさ」です。正直、食の面ではあまり期待していなかったのですが、これが良い意味で完全に裏切られました。 街の中心部はもちろん、少し離れた地区にあるレストランでも料理のクオリティは非常に高く、素材の味を活かしつつも丁寧に調理された品が多く見受けられました。フレンチ、イタリアン、モダンオランダ料理、ベジタリアンレストラン、さらにはアジア系のフュージョンまで、選択肢も非常に豊富。どこに入ってもハズレがない印象でした。 そして何よりも「脂っこくない」。これは本当に重要なポイントです。日本人としては、あまりにオイリーな料理は胃がもたれてしまいますが、アムステルダムの料理は非常にバランスが良く、油分も控えめ。素材の風味を活かす調理法が多く、胃にもたれないのに満足度が高いという、まさに理想的なダイニング体験でした。 比べてロンドン……雑すぎる、粗すぎる、そして高すぎる 一方で、帰国してから再びロンドンのレストランに足を運んだ瞬間、強烈な落差を感じずにはいられませんでした。ロンドンには確かにミシュラン星付きのレストランや世界的な有名シェフの店もありますが、日常的に行くような中〜上級価格帯のレストランとなると、途端に質が落ちます。 ・料理のクオリティが日によって違う 同じ店でも、昨日食べた料理と今日の料理では味も見た目もまったく違う。明らかに火の入りすぎた肉、ベチャっとしたサラダ、固すぎるパン…。忙しい時間帯になると「作業」として皿が出てくるのが見え見えです。 ・焦げた料理や作り置きが普通に出てくる とある人気レストランでは、明らかに焦げたパスタが出され、それを指摘したら「これがうちのスタイルだ」と言い返される始末。客を客と思わない態度に愕然としました。 ・価格に見合わない内容 メインディッシュ1品で£25〜30(日本円で約5,000〜6,000円)はざらで、それに前菜とドリンクをつければすぐに£50を超えます。それにも関わらず出てくるのは大味で脂っこい料理。味のばらつきもひどく、盛り付けも適当。 ・極めつけはサービスチャージ最大20% 不満があっても、何も言わなければ20%近いサービスチャージが当然のように追加されます。しかもそのサービスが丁寧ならまだしも、愛想もなく、料理の説明すらしてくれないウェイターが運んできて終わり、というケースが少なくないのです。 これはもう「詐欺」と言っても差し支えないのでは?と感じるほど。観光客にとっては「ロンドンだから高いのは仕方ない」と諦めるのかもしれませんが、地元の人間にとってはストレスでしかありません。 食文化に対する姿勢の違い この差は、単に「料理人の腕前」だけの話ではありません。根底には、食文化そのものに対するリスペクトの度合いが違うのではないかと感じます。 アムステルダムでは、街全体が「食」を文化の一部として捉えている雰囲気があり、料理人はもちろん、サーバーも一皿一皿に思いを込めて届けている印象があります。そうした丁寧な姿勢は、客にも自然と伝わってくるものです。 対してロンドンでは、どこか「とりあえず提供しておけばいい」という、効率重視の考えが根底にあるように思えてなりません。もちろん例外はありますが、それが日常的に味わえるレベルで存在していないのが残念です。 最後に:ロンドンのレストラン業界に一言 ロンドンよ、頼むからもう少し「食」を大切にしてくれ。高いお金を払って焦げた料理を食べ、無愛想な店員に接客され、それに対して文句も言えない空気…。これは本当に健全なレストラン文化とは言えません。 アムステルダムのように、料理にもっと「誇り」と「責任」を持ってほしい。そして、「高い=偉い」というロジックではなく、「美味しい=価値ある」というシンプルな原点に立ち返ってほしいのです。 今回の旅で、アムステルダムの魅力を存分に味わえたのはもちろんですが、同時に「自分が普段食べていたものがどれだけ残念だったか」に気づかされる機会にもなりました。 美味しい料理と丁寧なサービスは、それだけで人の心を満たしてくれるものです。だからこそ、日常の中にこそ、そういう体験がもっと増えてほしいと心から願います。
イギリス人とスパゲティ:恋愛と炭水化物の深い関係
国際恋愛には、文化の違いという壁がつきものだ。言葉の違い、価値観の違い、そして何より食文化の違い。筆者は日本人で、現在イギリス人のパートナーと暮らしているのだが、この「食」の壁には何度となく頭を抱えさせられた。 イギリス人というのは不思議な人たちで、パブのフィッシュ・アンド・チップスや朝食のベイクドビーンズ、ブラックプディングといった独特な食文化を持っている一方で、実は本当に愛している料理はイタリアンなのではないかと思わせる瞬間が多々ある。中でも彼らの「スパゲティ愛」は特別だ。 イギリス人にとってスパゲティとは何か? 日本人にとっての味噌汁のように、イギリス人にとってのスパゲティは「安心できる味」なのだと感じる。特にミートソース(彼らは”Spaghetti Bolognese”と呼ぶ)への信頼感は絶大で、どんなに食にうるさいイギリス人でも「今日はスパゲティにしよう」と言われれば、ほとんどの場合ノールックで首を縦に振る。 その理由をイギリス人パートナーに聞いてみたところ、返ってきたのはこんな答えだった。 「子どものころから毎週のように食べてた。家族でテレビ見ながら食べるときもスパゲティだったし、大学時代の自炊の定番もスパゲティ。社会人になって疲れて帰ってきた日も、作るのはスパゲティ。」 つまりスパゲティは、彼らにとって“人生の共通項”なのだ。懐かしく、親しみやすく、でもちゃんと「食事をした」という満足感も得られる。 肉じゃがでは刺さらない理由 私がはじめてイギリス人パートナーに肉じゃがを振る舞った日のことをよく覚えている。こっちは「和食の定番」「ほっとする家庭料理」という意識で、どこかで「これを気に入ってくれたら、私たちはもっと深くつながれる」という淡い期待を抱いていた。 彼の反応はこうだった。 「うん、ヘルシーだね……ポテト……ああ、甘いのか……なるほど…… interesting(興味深い)だね。」 “interesting”という単語をネイティブが使うとき、それが本当に興味深いときではなく、「なんと言っていいか分からないけど肯定しておこう」という微妙なニュアンスを帯びていることが多い。まさにその空気だった。 問題は味の濃淡だけではない。イギリスでは「甘い=デザート」という固定観念が根強く、肉料理に甘みがあると、それだけでかなりのカルチャーショックになる。また、じゃがいもは彼らにとって付け合わせかマッシュポテトであって、「メインの具材」ではない。肉じゃがにおける「肉が添え物」的な構図が、どうにも落ち着かないらしい。 「和風パスタ」は落とし穴 「じゃあスパゲティが好きなら、和風パスタで日本の味を取り入れてみよう」と思うのが自然な発想だろう。たらこパスタ、しょうゆバター、きのこ&大葉など、日本では大人気の和風アレンジだ。 しかし、この発想がまさに落とし穴。 イギリス人にとって「スパゲティ」は、あくまでも「イタリアの食べ物」であり、その基本スタイル(トマトベース、クリームソース、ペストなど)から外れたアレンジに対してはとても保守的だ。しょうゆの香りや大葉の風味は、彼らにとってはまさに「理解不能な異世界の食べ物」なのである。 実際に、しょうゆとバターを使った和風パスタを作って出してみたところ、フォークを止めたまま「これは…スパゲティだよね?」と聞かれた。恐らく「スパゲティであってスパゲティではない」ことに、軽い混乱を覚えたのだろう。 イギリス人を本気で喜ばせるスパゲティの法則 では、イギリス人パートナーが「本気で」おいしいと言って食べるスパゲティとは、どんなものか。経験をもとに以下の3つのルールを導き出した。 1. 味はクラシックが命 ボロネーゼ、アラビアータ、カルボナーラ、ペスト。彼らが「おいしい」と感じるのは、いずれもオーソドックスなレシピに基づいたパスタだ。奇をてらう必要はない。むしろ「どこまでも王道を貫く」ことが高評価につながる。 特にミートソースは、日本の「ナポリタン的な甘さ」とは違い、赤ワインとハーブをしっかり使って煮込んだ濃厚なものが好まれる。 2. パスタはアルデンテ、でも柔らかくても怒らない イギリス人は本来、アルデンテという概念にあまりこだわらない。しかし、うまく作って出せば「これは本場っぽい」と感動してくれることも多い。逆に、ちょっと茹で過ぎてもそこまで責められない。彼らはそこに対して寛容だ。 3. チーズは絶対に忘れずに 「チーズかける?」と聞くと、イギリス人は高確率で「Yes, please」と答える。しかも、けっこうな量を欲しがる。パルメザンチーズを常備しておくと、好感度が地味に上がるのでおすすめだ。 国際恋愛における「スパゲティ戦略」 国際恋愛において、「何を作るか」は相手の文化に対する理解を示す手段でもある。もちろん、いつかはお互いの国の料理をシェアし合える関係になるのが理想だ。しかしその第一歩として、「安心できる味」を出すことがとても大切なのだ。 スパゲティはその点で、まさに「最強の手料理」だ。イギリス人にとっては馴染み深く、日本人にとっても比較的作りやすい。自信を持って振る舞えるし、相手にも喜ばれる。まさにWin-Win。 しかも、ちょっとだけ凝ったレシピを採用すれば、「料理が得意なんだね」と評価も上がる。愛情も伝わりやすい。 最後に:スパゲティは愛の媒介物 「料理で心をつかむ」なんて言うと少し大げさに聞こえるかもしれない。でも、実際にイギリス人のパートナーがスパゲティを食べて笑顔になるのを見ると、「これが文化を超えた共感なんだな」と実感する。 肉じゃがが悪いわけではない。和風パスタも悪気があるわけではない。ただ、それらは「第2ステージ」で登場させるべきなのだ。まずは信頼を得る。そのための最初の一皿として、スパゲティはあまりにも優秀だ。 だから、イギリス人パートナーに「手料理が食べたい」と言われたら、迷わずこう答えよう。 「今夜はスパゲティにしようか」 それだけで、二人の距離はきっともう一歩近づくはずだ。