不動産投資で儲ける時代に終止符がうたれる???

英国の不動産売買価格が下がり始めた。といっても数年前から不動産価格は過熱気味と言われていたので、上がったものは自然の摂理で下がるときがくるのは誰にも止めることはできません。問題は価格が下がる原因とどのくらい下がるかということです。不動産価格の下落には国内の問題と国外の問題と2つあります。今回の下落は、双方が原因です。 不動産価格下落の内的要因 内的要因は、皆さんもご存じの住宅ローンの値上がりでしょう。英国の中央銀行が2021年の12月から公定歩合をなんと13回にわたり引き上げてきました。英国は2008年のリーマンショック以降、金利の引き下げを行い、2009~2020年の3月まで金利1%以下という状況でした。金利の引き下げは、もちろん住宅ローンに反映し、人々の不動産購入意欲を煽る結果となり、多くの人々がマイホームや投資用物件を買い、不動産価格は右肩上がりに上昇しました。英国で物件を購入する際、住宅ローンを固定金利にするか、変動金利にするか選ぶことができます。固定金利の場合、2年、3年、4年、5年など、個人によって固定される期間が違ってきます。通常期間が短いと金利が高くなり、期間が長くなると金利が低くなります。ただ、この固定金利の期間が過ぎると住宅ローンを組みなおす必要があります。もし、5年固定ローンを組んだ人が今年5年の期間が終了する場合、1~2%の金利だったのが、5~6%という金利で住宅ローンを組むという状況になります。この金利の差は月々の返済にどのぐらいしてくるのかといいますと、個人によって異なってきますが、平均約500~600ポンドと言われています。500~600ポンド月の出費が増えるということは、一般家庭にとって大きな痛手となることは言うまでもありません。また、住宅ローンの金利が上がったことにより、住宅ローンの審査が通らないひとがでてきます。住宅ローンの返済額は、個人の収入をもとに計算されますが、返済額が500~600ポンド上がることによって現在の収入では返済が難しいですよとなってしまうのです。住宅ローンの値上がりが購入者の減少させ、需要の減少で、不動産価格が下がり始めたのです。 不動産価格下落の外的要因 外的要因は。ロシア資金の凍結です。英国はロンドンだけではなく、全国的にロシア人の投資先として多額の資金が流れ込んでいました。しかし、ロシアのウクライナ侵攻により、英国政府はロシアから資金の流れを完全にストップしてしまいました。過去20年間は、ロシア、中国資金が英国の不動産価格を下支えしたと言っても過言ではないぐらい、資金は膨大なものです。そのロシア資金の流動がなくなってしまったのです。中国資金は、いまだに流動していますが、自国の経済が悪化し始めている影響もあり、前ほど膨大な資金は動いていないという噂もちらほら耳にするようになりました。 物件価格の下落はいつまで続くのか? 内的要因の住宅ローンに関しては、国内のインフレ率が下がり次第、固定歩合も下がり、住宅ローンの金利もさがるので、不動産市場にもひとが戻ってくるでしょう。英国人の基本的な考え方として、物件は賃貸より購入というのが根付いているので、今後も物件を購入する人の割合は減ることはないと思います。問題は海外の資金が今後どのくらい戻ってくるかということです。恐らくロシアからの資金は戦争が終わってもしばらくの間は戻ってくることはないでしょう。今回のロシア資金の凍結が、多くのロシア投資家に金銭的ダメージを与えたのは間違いありません。また、いつどこでプーチンが戦争を起こすのかわからない状況では、ロシア投資家はしばらく静観といったところではないでしょうか。

最近「クライシス」という言葉をよく聞くが

「クライシス(Crisis)」日本語に訳すと「危機」という言葉をコロナパンデミックが始まってからほぼ毎日のようにテレビやネットで見かけるようになりました。英国のEU離脱後からと言ったほうが正しいでしょうか。本日は、英国で過去3年以内に起こったクライシスについて紹介します。 長距離大型トラック運転手のクライシス 簡単に説明すると、長距離大型トラック運転手の大半は東ヨーロッパからの出稼ぎで成り立っていたのだが、英国のEU離脱後に、英国の貨幣価値が下がった影響で東ヨーロッパの人たちが英国から自国へ引き揚げてしまいました。もともと、労働環境の悪い長距離大型トラック運転手という職は英国人には人気がなく、運転手の数は十分だったわけではありませんでした。それが英国のEU離脱後から運転手不足問題が深刻化し、さらにコロナパンデミックが追い討ちをかける形となりました。食料のほぼ50%を輸入に頼る英国にとってはかなり深刻な問題で、一時期スーパーの野菜コーナーから野菜が消えるという事態にまで発展しました。 PPE(個人防護用具)クライシス コロナパンデミックは全世界で起きたことではありますが、英国ではコロナパンデミックが起きた後にいろいろな問題が発生しました。そのうちの1つがこのPPE(個人防護用具)が不足するというクライシスでした。日本でも薬局の店頭からマスクが消えて、ネット上で高値取引されるというのがニュースになっていましたが、英国では病院のスタッフが使うPPEが不足事態となり、医師や看護師が使い捨てのマスクや手袋を使いまわすという状態になり、多くの医師や看護師が命を落とす結果となってしまいました。このクライシスの裏側には政治家の利権問題が大きくかかわっていたのは言うまでもありません。ボリス・ジョンソンが人命よりもお金を重んじる人間だというのが垣間見られた瞬間でもあります。 エナジー・コスト・クライシス ウクライナ戦争が起きてからのガソリン、ガス、電気代の急激な値上がりが、国民の家計をひっ迫しているという話です。英国はロシアのガス供給にそんなに頼っていないので影響ないと思われがちですが、ロシアからたくさんのガス供給を受けていた国々が英国のガスの供給元(ノルウェー、カタール、USなど)からガスを購入することになり供給が一気に加速したのです。ロシアからのガスの供給がなくなったから、ガスは使いませんとはなりません。そのため、ガスがある国に注文が殺到するわけで、ガス所有国がそれを断る理由はありません。需要が増え、価格が上がるのは自然の摂理といえるでしょう。ただ、英国では石油会社、ガス会社が過去最高益をただき出してバッシングを浴びていますが、石油会社、ガス会社が利益を上げているのは、各会社の投資部門が大きな利益を上げているというだけで、一般市民から高い公共料金をせしめて利益を上げているわけではありません。バッシングされる相手はいまだに30-40%の税金をガソリンにかけている英国政府なのではないでしょうか。 賃貸物件クライシス 賃貸物件クライシスとは、賃貸物件の件数が昨年にくらべ3分の1に減少したことで、家賃が急激に上昇してしまったことです。ロンドン市内の平均賃貸価格は17%も上昇しました。賃貸物件もガソリン、ガスと同じで原理で供給が急激に減り、需要は去年と変わらないので、家賃が上昇してしまうのは当たり前の話です。ただ、問題はなぜ賃貸物件が減少したのかということです。ある調査によりますと、今年の3月~6月にかけて約94%の賃貸物件のオーナー(英国ではランドロードと呼ばれています。)が物件の貸し出しを辞めて売りに出したという報告がされています。理由は、税制の改正や中央銀行の金利引き上げなどで不動産投資自体にうまみがなくなってしまったことでしょう。 住宅ローン・クライシス 賃貸物件クライシスとつながってきますが、英国中央銀行が利上げに踏み切ったことで、住宅ローンの金利も今後上がってきます。通常は2年、5年の固定金利で住宅ローンを組むのが一般的で、今までは安い金利の人だと2%、通常で3.5%でした。それが今後ローンの金利が6%ぐらいに上がることになりますので、月々の返済額が約4%上がります。人によっては400~500ポンドの出費となり、住宅ローンを払えずに銀行に家をとられてしまう人が出てくることも考えられます。さらに、これから物件を買おうと考えていたひとが金利の引き上げに伴い、既に通っていた住宅ローンの融資実行が取り消しになる事態も発生しています。9月下旬から10月上旬にかけ、約2000件の住宅ローンの融資実行が取り消しになりました。前の首相リズ・トラスのせいだというマスコミもいますが、本当の理由は金利の引き上げです。 フード・コスト・クライシス 単純に食料品の値段がとにかく上がって一般家庭の家計をひっ迫している状態です。英国はとにかく昔から物価が高いということを言われていましたが、ここ10年ぐらいはそんなに物価が上がっているという実感はありませんでした。しかし、今年に入りウクライナ戦争が始まってからは、食料品の値上げに歯止めがかかりません。先月の食料品だけに関しての値上げ率は17%と、異常な値上がり率になっています。英国には、フードバンクという生活保護団体が低所得者向けにスーパーの食料品を無料で配布するサービスが普及しており、現在そのフードバンクを利用している人の数は英国内で217万いると言われています。 今後どうなる? 英国に現在住まわれている方、これから英国に来る予定の方がいちばん知りたいのは、今後英国はどうなっていくのか、ではないでしょうか。正直わかりませんが、このまま政府が何もしなければ、状況がよくなることはないと思います。英国はアメリカと同じで、金融の引き締めという道を選んでしまったため、もとの金融緩和に戻ることは、まず、ありえないでしょう。金融緩和がないということは、減税も恐らく行われないでしょう。ただ、底辺の人たちを見捨てないというのが英国のいいところではあるので、金融支援的なことは要所要所で行われることになるでしょう。英国にいれば、飢え死にすることはないということです。

イングランド銀行が公定歩合を2.25%に引き上げたことによって今後起こりえること

公定歩合の上昇はインフレを鈍化させる? 公定歩合の引き上げは、単純にお金を借りたときの金利が上がることに直結します。英国人はとにかく借金が大好きな人種で、何か買い物をするとき手持ちのお金には手をつけずクレジットカードなどで支払いします。手元のポートフォリオが目減りすることを嫌う、まさに企業経営者の考えが英国では一般家庭にも浸透しているのです。今までは低金利で借金できたものが、今後はそれなりの金利を支払わなければいけなくなるのです。中央銀行のイングランド銀行は、消費者には直接お金を貸すことはありません。イングランド銀行がお金を貸すのは各銀行、そして、各銀行を通して消費者にお金が貸し出される仕組みは日本も同じですよね。ということは、イングランド銀行が利上げをしたということは、各銀行の金利はそれよりも高くなければいけません。現時点で公定歩合は2.25%なので各銀行は消費者にお金を貸し出すときおそらく最低でも倍の5%の金利をつけて貸し出すことになります。では、消費者の心理として今までは気軽に借金して買い物を楽しんでいたのに、金利が上がることで物を買うという欲求がかなりの割合で落ちます。つまり、人が物を買わなくなります。皆さんもご存じのように物価というのは需要と供給で決まってきますので需要(買いたいという欲求)が減少するイコール、物の値段が下がるということにつながり、インフレが鈍化するのではないかというのが、英国政府とイングランド銀行の見通しです。 インフレからデフレにはならないのか? さて、前項で金利上昇が物価上昇を鈍化させるという話をしたのですが、インフレからデフレ(物価の下落)になるのかという疑問が出てきますが、残念ながらデフレになるのはまだまだ先の話です。というのも、今回の急激なインフレのきっかけは皆さんもご存じ「ウクライナ戦争」です。ガス、原油の高騰が、各企業のコスト高につながり、物価を押し上げてしまったのです。ということは、この戦争が終わらない限り物価の下落は起こりにくいということになります。英国も日本と同じで食料品の約46%を輸入に頼っています。日照時間が短い国なのでしょうがないと言えばしょうがないのですが、戦争などでその道が絶たれると連動して弱くなってしまいます。ということで、公定歩合が上がっただけではデフレになる可能性はかなり低いのではないでしょうか。 住宅ローンの金利があがることで、住宅の販売価格は急落するのか? 各銀行は住宅ローンの金利を2年間の固定金利6%に、5年間の固定金利を5.8%にすると発表しましたが、住宅の販売価格は下落するのでしょうか。これは私見ですが、住宅の価格は下がらないと思います。なぜかと言いますと、前項でも言いましたように、価格というのは需要と供給のバランスで決まってきます。住宅ローンの金利が高くなったから今は家を買わないという選択をする人は出てくるかと思いますが、ローンの金利が高くなったから家を買わないで済む人はいいですが、家を買わなければいけない人が英国にはたくさん存在します。そういった人たちは住宅ローンの金利が高くなろうが、欲しい家が見つかれば買うのです。住宅ローン金利の引き上げは、今の右肩上がりの相場を一瞬崩すことになることは考えられます。でも、いずれ多くの人は住宅ローンの金利が今後下がることはないことに気づくでしょう。住宅ローンの金利は2000年~2008年は4-6%で推移していました、2008年にリーマンショックがあり、それを皮切りにどんどん下がり、コロナパンデミックがさらに金利の下げに拍車をかけ、2021年の後半には、1.2%まで下がりました。(参考文献)英国政府というか先進諸国の多くは景気が悪くなったら金利を下げるということを繰り返し行ってきたが、景気回復につながりませんでした。つまり、今後景気が悪くなっても金利を下げることはもうないのではないかとみています。遅かれ早かれ人々が5%、6%の金利に慣れてしまいます。そうなってから本当の好景気が訪れるのではないかと私は予測しています。