
イギリスでは再び、失業に関する暗いニュースが世間を覆っている。
スカイニュースによれば、企業が人員を削減するペースは2021年のコロナ・ロックダウン期以来で最も速くなっているという。
👉 元記事はこちら(Sky News)
2025年夏の状況
イングランド銀行の「Decision Maker Panel(DMP)」調査によると、2025年6月から8月の3か月間で雇用は前年同期比 0.5%減少。これは2021年以来の最大規模の落ち込みとされる。さらに企業は、今後12か月間でも同様に 0.5%の削減を見込んでいる。まさに雇用環境が冷え込みつつあることを裏付ける数字だ。
人員削減の理由
公式には、
- 最低賃金の引き上げ
- 健康保険料(National Insurance)の引き上げ
- ビジネスレート(事業税)の増加
など、企業にかかるコスト増が理由とされている。しかし実際には、売上の低下や利益率の悪化が背景にあると考えるのが自然だ。調査では、企業の利益率が落ち込み、34%が販売価格を引き上げ、20%が賃金抑制策を取ったと回答している。コスト負担増を直接の原因としながらも、実態としては業績の停滞が人員削減の大きな要因となっている。
AIと業務効率化の影響
さらに近年、AIの導入が進むことで、特に単純な事務作業が不要になりつつある。まだ調査結果に直接は現れていないが、実際の現場では「人が不要になる仕事」が増えているとの声も出始めている。こうした技術的要因も、雇用を取り巻く不安感を増幅させている。
政策と経済環境
政府は企業負担を増やす形で財政再建を進める一方で、企業側はそれを人員削減で吸収している構図だ。加えて、インフレ率の高止まりと利下げの難しさも相まって、企業経営は圧迫されている。結果として「賃金上昇」「コスト増」「需要の弱まり」が同時に進行するスタグフレーション的な様相を呈している。
今後の見通し
イギリスの失業率はすでに4.7%に達し、中期的に見ても高水準となっている。企業側の削減姿勢が続けば、雇用市場の冷え込みは一段と鮮明になるだろう。スカイニュースの記事が示す通り、2021年の悪夢を思い出させるような状況が再び広がっており、AIの進展や政策判断の難しさといった構造的要因も重なり、先行きの不透明感はますます強まっている。
Comments