
昔ながらの銀行強盗はもう時代遅れ。現代のイギリスでは、犯罪の主戦場はインターネットへ移っています。 ハッキング・フィッシング詐欺・暗号資産の不正送金など、デジタル時代ならではの「近代的犯罪」が急増。 本記事では、イギリスの犯罪動向の変化と最新のサイバーセキュリティ対策をわかりやすく解説します。
銀行強盗が消えた理由:犯罪の「オールドスタイル」化
イギリスでは1990年代後半から2000年代初期にかけて、実際の店舗を狙う銀行強盗が多発していました。 しかし、近年その件数は激減。現金利用の減少・店舗防犯強化・監視カメラとAI導入などにより、 「リスクの高い犯罪」から「効率の悪い犯罪」へと変化しました。
ロンドン警視庁(Met Police)によると、2020年代以降の銀行強盗は1990年代比で約90%減少。 一方で、サイバー犯罪関連の被害届は年々増加しています。
台頭するハッキング犯罪の実態
現在のイギリスでは、「デジタル強盗」=ハッキング犯罪が新たな脅威となっています。 その多くは金銭的目的で行われ、ターゲットは銀行・企業・政府機関・一般ユーザーにまで及びます。
- オンラインバンキングやスマホ決済アプリの乗っ取り
- 個人情報の流出を狙ったフィッシング攻撃
- 企業ネットワークへの侵入・ランサムウェアによる金銭要求
- 暗号資産ウォレットの不正アクセス
実際、2024年にはイギリス国内のサイバー犯罪被害総額が10億ポンドを超えたと報告されており、 銀行強盗よりもはるかに「静かで、効率的な」犯罪が主流になっています。
ハッカーたちの手口と狙い
現代のハッカーは、もはや一人の天才犯罪者ではなく、組織化された国際ネットワークです。 特に以下のような手法が増えています:
- フィッシング詐欺:偽メールや偽サイトで銀行IDやパスワードを盗む
- ランサムウェア:データを暗号化し、解除のために金銭を要求
- スミッシング/ボイスフィッシング:SMSや電話で情報を抜く
- AIを悪用した詐欺:生成AIで音声・顔を偽装し、信頼関係を悪用する
犯罪の「近代化」は、テクノロジーの発展とともに加速しています。 ハッカーは物理的に銀行に侵入する必要がなく、ノートパソコン1台で世界中の資金を狙える時代です。
イギリス政府と警察の対策
イギリス政府は「National Cyber Security Centre(NCSC)」を設立し、国家規模でサイバー防衛を強化。 また、Metropolitan PoliceのCyber Crime Unitや「Action Fraud」が通報窓口を担っています。 近年は、民間銀行との情報共有やAIによる不正検知も進化しています。
さらに2024年には、AIによる詐欺検知を義務化する新法が可決され、 オンライン取引や電子送金の安全性が大幅に強化されました。
個人でできる防御策
- パスワードを定期的に変更し、複数サイトで使い回さない
- 二段階認証(2FA)を必ず設定する
- 銀行からのメール・SMSはURLを開かず公式アプリで確認
- 不審な電話・メッセージには応答しない
- 公共Wi-Fiではオンラインバンキングを使わない
サイバー犯罪は「誰でも被害者になり得る」時代。 小さな警戒が、大きな損失を防ぐ最善策です。
今後の犯罪トレンドと注意点
専門家は、今後の犯罪の主戦場は「AIとデータ」と予測しています。 個人情報の価値が高まる中、デジタル資産=新しい金庫です。 犯罪はよりスマートになり、リアルな銃よりもキーボードが武器になる時代が到来しています。
イギリスでは、サイバー教育・リテラシー教育の拡充が急務とされており、 国民一人ひとりがデジタル社会の「自衛力」を持つことが求められています。
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