
イギリスといえばフィッシュアンドチップス。サクサクに揚げた白身魚にホクホクのフライドポテトを添え、モルトビネガーをたっぷりかけて食べるのが定番です。イギリスを訪れたことがある人なら、一度は口にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、「イギリス人は実は魚の匂いも形も大嫌いだ」という噂を聞いたことはありますか?これは意外なようでいて、実は多くのイギリス人が魚を避ける傾向があるのです。本記事では、イギリス人の魚嫌いの実態、その背景にある文化や歴史、そしてなぜフィッシュアンドチップスだけが例外なのかについて詳しく探っていきます。
1. イギリス人の魚嫌いは本当なのか?
「イギリス人は魚が嫌い」という話を聞くと、すぐに疑いたくなるかもしれません。何しろ、イギリスは島国ですし、漁業も盛んなはず。それなのに魚が嫌いとはどういうことなのでしょうか?
実際にイギリスの食文化を調べてみると、多くのイギリス人が魚を積極的に食べようとしない傾向があるのは事実です。特に、生魚や強い魚の匂いがする料理に対する拒否反応が顕著です。
イギリス人の食卓では、魚料理のバリエーションが極端に少ないことに気づきます。フィッシュアンドチップス以外では、スモークサーモンやツナ缶、フィッシュフィンガー(魚のフライを棒状にしたもの)ぐらいしかポピュラーではありません。しかも、これらの魚料理には共通点があります。それは、強い魚臭さがないことです。
2. 魚嫌いの背景にある歴史と文化
では、なぜイギリス人は魚の匂いや形を嫌う傾向があるのでしょうか?その理由にはいくつかの歴史的背景が関係しています。
2.1 魚の保存方法が問題だった
かつてのイギリスでは、新鮮な魚を手に入れるのが難しい時代がありました。冷蔵技術が発達する前は、魚を塩漬けや燻製にするのが一般的でした。しかし、こうした方法では魚の匂いが非常に強くなり、多くの人にとっては不快なものになってしまいました。このため、魚の匂いを嫌う文化が根付いてしまったのです。
2.2 工業革命と食文化の変化
18世紀から19世紀にかけての工業革命により、多くのイギリス人が都市部に移住しました。これにより、漁業よりも農業や畜産業が発展し、食生活も肉中心へと変化しました。都市部では新鮮な魚が手に入りにくく、代わりに肉やジャガイモ、パンといった保存がきく食品が主食となりました。この流れが現在の食文化にも影響を与えています。
2.3 宗教的な影響
イギリスでは中世のカトリック時代に「金曜日には肉を食べずに魚を食べる」という習慣がありました。しかし、宗教改革後にこの習慣は徐々に廃れ、魚を食べる機会が減少しました。結果として、魚が食卓に並ぶことが少なくなり、馴染みのない食材として扱われるようになったのです。
3. フィッシュアンドチップスだけはなぜ人気なのか?
ここで疑問に思うのが、「なぜフィッシュアンドチップスだけは例外的に人気があるのか?」ということです。
3.1 揚げることで魚の匂いを消している
フィッシュアンドチップスの最大の特徴は、衣をつけて揚げていることです。揚げることで魚の匂いが抑えられ、特有のクセが気にならなくなります。また、衣がサクサクとしているため、魚の食感が苦手な人でも食べやすいのです。
3.2 モルトビネガーで味を調整
フィッシュアンドチップスにはモルトビネガー(麦芽酢)をたっぷりかけて食べるのが一般的です。この酸味が魚の風味をマイルドにし、食べやすくしてくれます。
3.3 肉の代用品としての歴史
19世紀のイギリスでは、肉が高価だったため、庶民は比較的安価な魚を食べるしかありませんでした。そこで登場したのがフィッシュアンドチップスです。手軽に食べられ、ボリュームもあり、しかも魚臭さが少ないため、多くの人々に受け入れられました。
4. イギリスの魚事情はこれから変わる?
近年、イギリスの食文化にも変化が見られます。寿司や刺身といった生魚を使った日本食が人気を集めたり、新しい魚料理のレストランが増えたりと、少しずつ魚を食べる習慣が広がっています。しかし、依然として魚の匂いに敏感なイギリス人は多く、伝統的な魚嫌いの文化は簡単には変わらないかもしれません。
まとめ
イギリス人の多くは、魚の匂いや形を嫌う傾向があります。その背景には、歴史的な食文化の変遷や保存技術の問題、宗教的な影響などが関係していました。しかし、例外的にフィッシュアンドチップスは広く愛されており、これは調理法によって魚の匂いを消し、食べやすくしているためです。
これからもイギリスの食文化がどのように変わっていくのか、魚嫌いのイギリス人が増えるのか、それとも減るのか、興味深いところですね!
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