
イギリスに住んでいた、あるいは旅行で訪れた日本人の多くから聞かれるフレーズ――
「イギリスのご飯って、どうしてあんなにまずいの?」
「まずい」という印象が先行しがちですが、これは本当に普遍的な評価なのでしょうか。
まず前提として、イギリス料理の歴史的背景、食文化、消費税・労働賃金などの社会構造、そして「比較対象としての日本料理」がもたらす心理的ハードルなど、複雑な要因が絡んでいます。
だからこそ、「飯マズ国家」という言説だけで片づけてしまうのはもったいない。むしろ視点を変えてみると、意外な発見もあるものです。
その意味で、「イギリスに食べログは成立するのか?」「美味しいところ数件だけなら、そもそもレビューサイトいらなくない?」という問いは、非常に良い切り口かもしれません。
食のレビュー文化と「多様性」の重要性
■評価の母数が少ないって、実際どうなの?
日本のように「食」に対する関心が社会文化として根付いている国では、グルメサイトが充実し、レビューも数十件〜数百件と膨大です。
しかし、イギリスにおいては、そもそも外食文化が日本とは異なります。
・レストランよりパブやカフェ文化が強い
・テイクアウトが中心的である
・家庭料理もバリエーション豊かだが、それをレビューに求めない風潮
そのため、某グルメサイトにおけるレビュー数も総じて少なめ。たとえば人気のフィッシュ・アンド・チップス店に10件、パブに20件といった規模感。
日本で同じ店のレビュー数が500件だったら、むしろ「少ない」と感じるのが自然かもしれません。
ただ、それでも「数件」のレビュー自体が意味を成さないか、というとそうではありません。
むしろ数十件でも、
・現地の人が評価しているなら注目すべき
・旅行者視点と地元視点の違いが分析できる
・信頼性や予測度の高いレビューが浮き彫りになる
と考えられます。
つまり、レビュー母数が少ないからといって「不要」とは限らないのです。
■レビュー少なめでも「質」で勝負できる食べログ型サービスの可能性
少ないレビュー数だからこそ、「質」が問われます。英国内のアルコール事情も踏まえ、
- 評価者の信用度(常連の地元客/臨時の観光客)
- 評価内容の具体性(味、雰囲気、コスパなど)
- 文量の濃さと写真の質
が重要になります。
ここで極端な話、レビューが8件しかなくても、実はその中の5件がプロ並みのコメント(例:「鱈の衣のサクサク感とタルタルの酸味のバランスが絶妙」「北部名産のチェダーチーズを使ったチーズ&チップスは塩加減と溶け具合が理想的」等)であれば、それだけで十分に役立ちます。
イギリスの美味しい「数件」を見つける醍醐味
■「穴場」を探す面白さ
日本の都市部で「旨い店」探しをしても、メジャーすぎて発見が少ない。
一方イギリスには、観光客には知られていない隠れ名店が多数存在します。
・ロンドン郊外の町で地元に人気のパブ飯
・コッツウォルズのファーム・カフェ
・北部でしか味わえない伝統的パイ料理
「イギリスマズいなんて誰が言った?」となるような味に出会えれば、その希少性だけで記憶に残ります。
■レビューが少ないからこそ「間違いにくい」
日本のレビューサイトにありがちな「ランキング操作」「ファン同士の評価バイアス」「同業ライターによる介入」などの罠は、イギリスでは比較的少ないと考えられます。
母数は少なくとも、そこに変なノイズが少なければ、「素直なレビュー」の確率はむしろ高まるのです。
食べログ型サービスの意義とは?
「美味しいところが数件しかない国」では、レビューサイトが不要なのか――?
私はそうは思いません。以下のような点で、食べログ的機能は有用です。
- 地元人のリアルな声が得られるプラットフォーム
地図や営業時間の整理から始まり、「ここは日曜しか開かない」「クレジットカードNG」など、生活者視点の情報は旅行者にとって貴重です。 - 観光とローカルの接点をつなぐ
食べログ的なサイトが、ガイドブックよりも細やかな情報を補い、観光の多様性を豊かにします。 - レビューの蓄積が意味を持つ
母数が増えるほど、トレンドは見えやすくなる。一度の旅行では少数レビューでも、数年間蓄積されれば「これが定番だ」「この町の名物はこれだ」と見えてきます。 - 「美味しい数件」を旅行前に押さえられる
日本人旅行者がイギリスに行くとき、事前調査が不可欠。その時に「確実な3店」が候補リストに入っていれば安心感は大きい。食べログ的サイトは、その候補選定に使えます。
イギリスで実際に高評価な店の例(ちょっと紹介)
※ここではあえて名前は伏せますが、こんな店が評価されています:
- ロンドン某所のパブ:フィッシュ&チップス&ギネスの組み合わせが秀逸。レビュー件数は約20件+地元支持。
- マンチェスター近郊の中華:移民コミュニティによる本格炒飯の香りが本格派。レビュー件数7件ながらコメントの濃度が高い。
- エディンバラ旧市街のシーフードバー:ターンオーバーで素材の味を活かした軽食。レビュー15件。観光客・地元半々。
レビュー数に差はあるものの、「内容」の質が高いため、信頼感があるのです。
「美味しいのを探す旅」にこそレビューは価値がある
海外旅行での食選びは、ある種のギャンブル。「当たり」を狙うほどレビューの価値は上がります。
イギリス旅行経験者が少しずつレビューを書き蓄えることで、有意義な情報が育ちます。
「飯マズ国家」などと自嘲的に言うより、むしろ
「まずいと思ってほしくない」
「実はこんなにおいしい店もあるんだ」
と肯定的に拾い上げていくレビュー文化こそ、食べログ的サイトにぴったりなのではないでしょうか。
まとめ:数は少なくても、レビューの意味は濃い
- イギリスは「まずいと感じやすい」文化的背景があるものの、決して食べ物がダメな国ではない。むしろ発見がある。
- 日本と比べるとレビュー数は少ないが、そこに悪意や操作が薄ければ「素直な情報」が得られる。
- 「美味しい数件」を抑えることは、旅行者・地元民ともにプラス。食べログ型の情報プラットフォームは、その価値を担保できる。
「イギリスは飯まずいからレビューいらない」なんてことはありません。
むしろ今は、サイトとしてスタートするには最適な環境かもしれない。
そういう前向きな視点で、ぜひ「イギリス飯のリアルな声」を集めてみませんか?
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