イギリスで生活していると、時々「衛生面に対する感覚が日本とはかなり違う」と感じる場面があります。家の中に靴のまま入る、キッチンや床の清潔さに対する感覚が緩い、古い建物の隙間や湿気、ネズミの問題にそこまで驚かない――こうした日常の違いは、文化の違いとして片付けられることも多いです。
しかし、衛生管理の甘さが単なる「生活習慣の違い」では済まされない場合もあります。その一つが、ネズミなどのげっ歯類を介して感染するハンタウイルスです。
ハンタウイルスは、感染したネズミなどの尿・フン・唾液に含まれるウイルスを、人間が吸い込んだり、触れた手で目・鼻・口に触れたりすることで感染する可能性があります。UKHSAも、感染したげっ歯類の排泄物や体液を吸い込むことが主な感染経路だと説明しています。
「ネズミがいるだけ」では終わらない問題
ロンドンを含むイギリスの都市部では、古い建物、地下室、共有ゴミ置き場、庭、飲食店の裏側など、ネズミが入り込みやすい環境が少なくありません。特に、古いフラットやテラスハウスでは、壁や床下、配管周りに隙間が残っていることもあります。
日本人の感覚では、ネズミのフンを見つけたらすぐに大問題として扱う人が多いかもしれません。しかし、イギリスでは「まあ、古い家だから仕方ない」「ロンドンならよくあること」と流されることもあります。
もちろん、全てのイギリス人が衛生面に無関心というわけではありません。ただ、社会全体として、日本ほど細かく清潔さを気にしない場面があるのは事実です。特に、賃貸物件の共用部、古いキッチン、物置、ガレージ、地下室などでは、「見た目が少し汚い」ことが日常として受け入れられてしまうことがあります。
しかし、ハンタウイルスの問題は、単に「汚いから気分が悪い」という話ではありません。ネズミの尿やフンが乾燥し、それがホコリと一緒に舞い上がった場合、人がそれを吸い込むリスクがあるとされています。CDCも、ネズミの尿やフンへの接触を避けることが最も重要な予防策だと説明しています。
掃除の仕方を間違えると危険になる
ハンタウイルスで特に注意すべきなのは、ネズミのフンを見つけた時に、いきなり掃除機をかけたり、ホウキで掃いたりすることです。
普通の掃除感覚では、「フンがあるなら掃除機で吸えばいい」と思うかもしれません。しかし、これによって汚染されたホコリが空気中に舞い上がる可能性があります。CDCは、ネズミの痕跡を掃除する際には特別な手順を取るべきだとしています。
安全に対応するには、まず換気をし、手袋を着用し、フンや尿の跡を消毒液などで湿らせてから拭き取ることが重要です。乾いた状態でかき混ぜないことが大切です。
これは、イギリスの住宅事情では特に重要です。古い物置、屋根裏、ガレージ、地下スペース、長期間使っていない部屋などは、ネズミが入り込んでいたとしても気づきにくい場所です。久しぶりに掃除する時こそ、注意が必要です。
「清潔さ」は見た目だけではない
イギリスでは、見た目のインテリアやデザインにはこだわる一方で、目に見えない衛生面には意外と無頓着な場面があります。おしゃれなキッチンでも、床下やゴミ置き場に問題がある。綺麗に見えるフラットでも、裏庭や共用部にはネズミの痕跡がある。こうしたことは珍しくありません。
ハンタウイルスのような感染症は、日常的に大流行するものではありません。過度に怖がる必要はありません。しかし、「めったにないから気にしなくていい」という考え方も危険です。
感染リスクが低くても、発症すれば重症化する可能性がある病気だからこそ、普段からネズミを寄せ付けない環境づくりが必要です。食べ物を出しっぱなしにしない、ゴミをしっかり密閉する、建物の隙間を塞ぐ、ネズミの痕跡を見つけたら放置しない。こうした基本的な対策が、最も現実的な予防策になります。CDCも、家やガレージの隙間を塞ぎ、ネズミを減らし、餌になるものを片付けることを推奨しています。
イギリス生活では「自分で気をつける」意識が必要
日本では、清潔さや衛生管理が社会全体の前提としてかなり高い水準で保たれています。飲食店、住宅、公共施設、学校などでも、細かい衛生感覚が当たり前になっています。
一方で、イギリスでは「多少汚れていても気にしない」「古い建物だから仕方ない」「ネズミくらい出ることもある」という感覚に出会うことがあります。これは文化の違いでもありますが、感染症や害獣の問題に関しては、文化の違いでは済まされません。
特に賃貸物件に住んでいる場合、ネズミのフン、かじられた跡、異臭、壁の中の音などに気づいたら、すぐに大家や管理会社へ連絡するべきです。放置すれば、衛生面だけでなく、建物の損傷や電気配線の問題にもつながる可能性があります。
ハンタウイルスは、イギリスで日常的に大きく報道される感染症ではありません。しかし、ネズミが多い都市環境、古い住宅、衛生感覚の違いを考えると、決して他人事ではありません。
まとめ
ハンタウイルスの問題は、「ネズミが気持ち悪い」という単純な話ではありません。ネズミの尿やフンに含まれるウイルスを吸い込むことで、人間が感染する可能性があるという、現実的な衛生リスクです。
イギリスでは、日本人の感覚から見ると、衛生面に対して驚くほど大ざっぱに見える場面があります。もちろん、それが全て悪いというわけではありません。しかし、ネズミや害虫、カビ、湿気、ゴミの管理に関しては、「文化の違い」として見過ごすべきではありません。
清潔さとは、見た目をきれいにすることだけではありません。目に見えないリスクを減らすことも、本当の意味での衛生管理です。
イギリスで生活するなら、周りの感覚に合わせすぎず、自分と家族の健康を守るために、ネズミの痕跡や不衛生な環境には敏感でいるべきです。特に古い物件や共用部の多い住宅では、「少しくらい大丈夫」と思わず、早めに対策することが大切です。










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