
イギリスで日本食といえば、多くの人がまず思い浮かべるのは「寿司」でしょう。しかし、実際に日本料理はイギリスでどれほど人気があるのでしょうか? ロンドンの中心部では日本料理店を見かけることが珍しくなくなりましたが、郊外や地方都市ではまだまだ馴染みが薄いようです。今回は、イギリスにおける日本料理の人気度をデータとともに深掘りし、どの料理が受け入れられやすいのか、またその背景にある文化的な要因を探っていきます。
イギリスにおける日本料理の普及状況
ロンドンではすでに定着? 30年前との比較
ロンドンでは約30年前から日本料理店が登場し始め、現在では市内中心部の至る所で見られるようになりました。特に高級寿司店やラーメン店は、現地の富裕層や観光客に支持され、増加傾向にあります。例えば、「Nobu London」や「Sushi Samba」といった高級店は、ロンドンの食文化の一部として定着しています。
一方で、日本料理店の郊外進出はまだ始まったばかりといった状況です。例えば、マンチェスターやバーミンガムなどの大都市ではある程度見かけますが、小さな町や地方都市では日本料理を提供する店が極端に少ないのが現状です。
日本料理の店舗数と成長率
統計データを基に、日本料理店の増加傾向を見てみましょう。
- イギリス全体の日本食レストラン数(2023年)
約2,000軒(2013年比で約2倍に増加) - ロンドンにおける日本食レストランの割合
約1,000軒(全レストランの約2%) - イギリスの中華料理店の数
約12,000軒(日本料理の6倍) - イギリスのインド料理店の数
約9,000軒(日本料理の4.5倍)
このデータからもわかるように、日本料理店は増加傾向にあるものの、中華料理やインド料理には遠く及びません。
イギリス人にとって日本料理=寿司? 他の料理の認知度は?
寿司のイメージが強すぎる問題
イギリス人に「日本食といえば?」と尋ねると、多くの人が「寿司」と答えます。しかし、日本食にはラーメン、焼き鳥、天ぷら、カレーライスなど、さまざまなバリエーションがあります。しかし、これらの料理はまだ広く知られていません。
たとえば、イギリスの大手スーパーマーケット「Tesco」「Sainsbury’s」「Waitrose」では、寿司パックが販売されており、手軽に寿司を楽しむ文化が根付いています。しかし、日本のカレーライスやお好み焼きがスーパーで売られていることはほとんどありません。
日本のカレーライスはイギリスで知られているのか?
「日本のカレーは世界中で人気」と思う人もいるかもしれませんが、実はイギリスでは日本のカレーはほとんど知られていません。イギリス人にとって「カレー」といえば、インド料理のカレーです。
イギリスは19世紀の植民地時代にインド料理を取り入れ、現在ではインド風のカレーが国民食といえるほど普及しています。特に「チキンティッカマサラ」はイギリス独自のカレーで、多くのレストランや家庭で食べられています。そのため、日本のカレーライスのような「とろみのあるカレー」は、まだまだ一般的ではありません。
しかし、近年「ココイチ(CoCo壱番屋)」がロンドンに進出し、日本のカレー文化を広めようとしています。これがどこまで浸透するかが今後のポイントでしょう。
なぜ日本料理は中華・インド料理ほど広まらないのか?
日本料理が中華やインド料理ほどイギリスで普及しない理由には、いくつかの要因があります。
1. 価格が高い
日本料理は一般的に価格が高くなりがちです。たとえば、ロンドンの寿司レストランでは、1人あたり£30(約5,000円)以上かかることも珍しくありません。一方、中華料理やインド料理は比較的リーズナブルで、£10〜£15(約1,500〜2,500円)程度で満足できる料理が多いです。
2. イギリス人の味覚になじみにくい
日本料理は繊細な味付けが特徴ですが、イギリス人は比較的「濃い味」「スパイシーな味」を好みます。例えば、醤油や出汁の風味が主役の和食は、スパイスが効いたインド料理に比べるとインパクトが弱く、物足りなく感じる人もいるようです。
3. 日本の食文化の理解がまだ浅い
イギリスでは「和食=寿司」というイメージが強く、他の料理への理解が進んでいません。これは日本料理のPR不足や、日本人が現地で飲食ビジネスを展開する機会が少ないことも影響しているでしょう。
今後の日本料理の可能性
1. ラーメンブームの到来
寿司以外の日本料理として、イギリスで今最も注目されているのが「ラーメン」です。2010年代後半から、ロンドンには「一風堂」や「博多一幸舎」などのラーメン専門店が相次いで進出し、多くの現地客を獲得しています。
特に、寒い冬が長いイギリスでは、温かいスープ料理は受け入れられやすく、ラーメンの人気は今後さらに高まる可能性があります。
2. スーパーでの日本食品の増加
最近では、大手スーパーに「Kikkoman(キッコーマン)」の醤油や「Yutaka(ユタカ)」の寿司酢、味噌などの日本食材が並ぶようになりました。また、冷凍食品として餃子や唐揚げも販売されており、今後は家庭でも日本食を楽しむ文化が根付く可能性があります。
3. フードデリバリーの活用
イギリスでは「UberEats」や「Deliveroo」などのフードデリバリーサービスが普及しており、日本料理のデリバリー需要も増えています。特に寿司やラーメンはデリバリーとの相性が良く、今後さらに普及する可能性があります。
まとめ
イギリスにおける日本料理は着実に広まりつつありますが、中華料理やインド料理と比べるとまだ発展途上です。寿司のイメージが強い一方で、ラーメンや日本のカレーライスなどの料理はまだまだ知られていません。しかし、ラーメンブームやスーパーでの日本食材の普及など、今後の展開には期待が持てます。今後、日本料理がイギリスの食文化にどれだけ根付くのか、引き続き注目していきたいところです!
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