ロンドン賃貸市場に「失速」の兆し

ロンドンの賃貸市場の下落を象徴するイラスト。背景にロンドンの街並みと赤い下向き矢印、前景に「FOR RENT」の看板が描かれている。

空室増加と家賃の高止まりが同時進行

ロンドンの賃貸市場が深刻な局面を迎えている。借り手がつかず、空室が目立ち始めているのだ。

かつては賃貸物件数の減少により家賃が上昇傾向にあったが、現在は状況が一変。市場に出回る物件が増えたにもかかわらず、家賃の高止まりが続いている。家主が強欲だからではなく、維持費や税負担の増加により簡単に賃料を下げられない構造的な問題があるためだ。

では、なぜ家賃は下がらないのか。その背景を探ってみよう。

ロンドンの労働市場の低下

昨年から今年にかけて、ロンドンの労働市場は明らかに冷え込みを見せている。特に優秀な人材が国外へ流出しているのが現状だ。

その要因の一つが、移民に対する風当たりの強さである。外国人労働者の多くが差別的な空気に嫌気をさし、イギリスを離れている。イギリスの「移民排除」の姿勢は国際的にも知られるようになり、英国行きを予定していた人々のキャンセルも相次いでいる。

さらに、ロンドンの生活コストは上昇を続け、体感ではアメリカを上回る水準に達した。景気の悪化と社会の分断、極右的な思想の台頭により、国としての魅力は低下している。低賃金労働者の流入が賃金全体を押し下げている点もマイナス要因だ。

犯罪率の上昇

移民問題とは別に、国内の犯罪率も上昇している。景気の悪化に加えて生活コストの上昇が続き、「生活保護」「失業給付」「児童手当」「住宅扶助」などの社会保障が削減されたことで、人々の生活は苦しくなっている。増税も追い打ちをかけており、犯罪の増加は避けられない状況だ。

特に子どもを持つ海外移住者の家庭にとって、安全は最優先事項である。そのため、ロンドンは移住先として敬遠される傾向が強まっている。

政府とメディアによる隠ぺい

イギリス政府や主要メディア(特にBBC)は、こうした現実を意図的に隠しているとの批判もある。「臭いものには蓋をする」という国民性が、問題解決をさらに遅らせているのだ。

政治家たちは保身に走り、誰も実際に行動を起こさない。イギリス社会は、まさに負のスパイラルに陥っているといえる。

AIの普及と雇用の喪失

大手テック企業ではリストラが相次いでおり、その背景にはAI(人工知能)の急速な普及がある。AIが人間の仕事を代替し、特にソフトウェア開発やプログラミング分野で雇用が失われている。

その結果、IT分野で働いていたインド人技術者の帰国が増加し、イギリス政府はインドからの移民受け入れを制限する方針を検討しているとも伝えられている。

トランプの影響

アメリカのトランプ大統領による関税引き上げは、イギリス経済にも大きな影響を与えている。アメリカへの輸出が制限され、輸出依存度の高い企業の業績は悪化した。

さらに、EU離脱の影響でヨーロッパ市場にも安く商品を供給できず、EU側も高値でイギリス製品を購入する理由がない。国内生産基盤が弱いイギリスでは、輸出先の喪失が直撃となっている。

まとめ

今のイギリスは、明らかに衰退の道をたどっている。唯一、資産価値を維持していた不動産価格までもが下落すれば、国全体が深刻な危機に直面するだろう。

それでもなお、問題を隠し続けるのか――。イギリスは、現実を直視すべき時を迎えている。

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