メンタルが弱いイギリス人がよくやるメンタルケア

はじめに

「イギリス人は紅茶と皮肉があれば幸せだ」などと冗談めかして言われることもありますが、実際にはイギリスはメンタルヘルスに対して非常に真剣な社会です。特に冬の長さや曇りがちな天候、人と人の距離感の文化などが重なり、メンタルの不調を訴える人が少なくありません。そんな環境の中で、イギリス人は「自分の心を守る」ために、日常の中にちょっとしたメンタルケアの工夫を取り入れています。

では、どんなことをしているのか?この記事では、イギリスで実際によく見られる、日常に根付いたメンタルケアの方法を紹介していきます。


1. 他人とのつながりを大切にする

孤独感はメンタル不調の大きな原因の一つです。イギリスでは、一見クールに見える人たちでも「友人や家族とのつながり」をとても大切にしています。たとえば、

  • 友人と週に一度パブで会う
  • 家族と毎週日曜に「サンデーロースト」を囲む
  • 近所の人と立ち話をする

こうした「対面での交流」が心を軽くしてくれるのだと考えられています。単なるおしゃべりでも、雑談でも「自分が誰かとつながっている」という感覚そのものが支えになるのです。


2. 体を動かすことが習慣

運動はメンタルケアの大定番。イギリス人もその重要性をよく理解しています。ただし、必ずしも激しいスポーツである必要はありません。

  • 仕事帰りの公園散歩
  • 朝のジョギング
  • 自転車通勤
  • 近所のジムやヨガクラスに通う

寒い冬でもウォーキング用の厚手のコートと手袋で外に出る人が多く、自然の中を歩くだけで「すっと気分が楽になった」と言う人がとても多いです。


3. 新しいことに挑戦する

「新しいスキルの習得は自己肯定感を高める」という考えが根付いています。イギリスでは、料理やガーデニング、楽器演奏を始める人が多いのが特徴です。ガーデニングは特に人気で、小さなスペースでも自分だけの庭を作り「植物を育てる喜び」を感じることがメンタルケアになると信じられています。

また、語学学習やDIY、手芸など「自分のペースで楽しめる趣味」を通じて、日常に新鮮さを取り入れることも一般的です。


4. ボランティア精神

「人のために行動すること」が自分の精神的健康にもよい影響を与えるという考え方もイギリス社会には浸透しています。たとえば、

  • 地域の清掃活動に参加する
  • 高齢者施設でおしゃべり相手をする
  • チャリティイベントの手伝い

他者への「親切な行動」を習慣化することで、自分の存在価値を感じ、前向きな気持ちを取り戻す人が多いです。自己犠牲ではなく「楽しみながら」「無理なく」がポイント。


5. マインドフルネスの実践

近年、イギリスでも「マインドフルネス」が一般に広がっています。瞑想、深呼吸、ボディスキャンなど、「今この瞬間に集中する」ことで、不安やストレスを軽減しようというアプローチです。

自宅で静かに行うほか、企業や学校にも導入が進んでおり「ちょっとした休憩時間に数分間のマインドフルネス」を取り入れる人が増えています。


6. 自然とのふれあい

「グリーンスペース(公園や自然)に行くこと」は、イギリス人の心のケアに欠かせない習慣です。ロンドンなどの都会に住んでいても、少し足を延ばせば美しい公園があります。

  • 週末に森や湖に出かける
  • ピクニックをする
  • 野外水泳(冷たい川や湖で泳ぐ)

自然に触れることで、自分を取り巻く日々の小さな悩みを「リセット」する人が多いのです。


7. 睡眠を最優先

「スリープハイジーン(睡眠衛生)」という言葉もよく聞かれます。具体的には、

  • 毎晩同じ時間に寝る
  • 寝室を落ち着いた空間に整える
  • 寝る前はスマホやPCを見ない
  • カフェインを夕方以降控える

質の良い睡眠が「メンタルの土台」であることを意識し、快適なナイトルーティンを守る人が増えています。


8. ジャーナリング(感情を文字にする)

感情や思考を日記やメモに書き出す「ジャーナリング」もイギリスではポピュラーです。特に感謝を書き留める「グラティチュードジャーナル(感謝日記)」が注目されています。

  • 1日の終わりに「良かったこと」を3つ書く
  • 自分の不安を書き出して客観視する
  • 前向きな言葉を書いて自分を励ます

これにより、自分の感情の整理ができ、気持ちが落ち着くのです。


9. 「デジタルデトックス」の重要性

情報過多やSNS疲れを自覚し、「意識的にスマホやネットから離れる」習慣も広がっています。

  • 寝る1時間前はスマホを触らない
  • 週に一日は「スマホを持たない日」を作る
  • SNSのアカウントを一時的に休止

「デジタルデトックス」が習慣になることで、心のスペースを作り出し、自分の本当の気持ちに向き合えるようになります。


10. 小さな“楽しみ時間”を意識的に作る

イギリス人にとって「紅茶とビスケットの時間」は単なる習慣ではなく、立派なメンタルケアです。好きな音楽を聴きながらゆっくり紅茶を飲むだけで、ほっと一息つけます。

また、お気に入りのコメディを観る、猫と戯れる、キャンドルを灯すといった「自分だけの小さな楽しみ」を意識的に作ることも大切にしています。


まとめ:ゆるやかに、継続的にケアする

イギリスで見られるメンタルケアは、どれも「簡単で身近なことばかり」です。そして特徴的なのは、「完璧にやらなければならない」という強迫観念がないこと。「調子が悪ければ休む」「自分を責めず、自分を甘やかす」ことを当然の権利として受け入れている人が多いのです。

  • 誰かと話す
  • 自然の中を歩く
  • しっかり眠る
  • スマホから少し離れる
  • 好きなことに熱中する

これらをすべて一度にやる必要はなく、できることをできるときにやる、という「ゆるやかな自己ケア」のスタンスがイギリス流。自分の心の調子に合わせて、優しく、自分自身をケアしていく——これこそが、メンタルが弱い人でも持続できるケアの秘訣なのです。

読んでくださった皆さんも、ぜひ一つから試してみてください。まずはお気に入りの紅茶を入れて、深呼吸するところからでも十分です。それだけでも、きっと心が少し軽くなります。

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