イギリスのEU離脱、その後、独立の代償と再加盟の可能性

2020年1月31日、イギリスは長年所属していた欧州連合(EU)を離れ、いよいよ「独立国家」としての新たな道を歩み始めました。しかし、その後の展開を見ると、まるで「自由を得た代償」として次々と試練を自ら招いたかのような状況になっています。

経済の低迷、政治の混乱、そして国民の間での「やっぱりEUに戻った方がいいのでは?」という気運の高まり──。こうした現状を皮肉を交えながら振り返り、イギリスが再びEUの扉を叩く可能性について考えてみましょう。

経済の現状:離脱のツケは大きかった

「イギリスはEUから独立すればもっと自由になり、経済も活性化する!」──そんな夢を抱いてBrexit(ブレグジット)を支持した人も少なくなかったでしょう。しかし、現実は甘くありませんでした。

まず、物価の高騰。2022年10月には、消費者物価指数(CPI)が前年同月比11.1%増と、1981年以来の高インフレを記録しました。つまり、日常生活に必要なものが次々と値上がりし、庶民の財布がどんどん厳しくなっていったのです。2024年3月には3.2%まで下がったものの、それでも家計の負担は依然として大きいままです。

また、EUを離れたことで貿易に関するハードルが増え、企業のコストも上昇しました。以前は自由に行き来できた商品や労働力が、今では手続きや関税の壁に阻まれ、経済の流れがスムーズにいかなくなっています。

さらに、EU離脱後にイギリス国内の労働市場も深刻な人手不足に陥りました。EUから来ていた労働者が減り、特に物流や飲食業、医療分野などで働き手が足りなくなっています。結果として、ビジネスの成長が鈍化し、投資も減少。「日の沈まない国」とまで呼ばれたイギリスが、今では「経済が沈みかけている国」と皮肉られる始末です。

政治の混乱:迷走するリーダーたち

EU離脱後のイギリスは、政治的にも安定とは程遠い状態が続いています。保守党政権はEUとの新たな関係構築に四苦八苦し、労働党も決定的な解決策を打ち出せずにいます。

特に注目すべきは、2023年9月にフランスとドイツが提案した「イギリスのEU準加盟案」。これは、完全なEU再加盟ではないものの、ある程度の経済協力や貿易の自由化を認めるというものでした。

しかし、イギリス政府はこれを拒否。「そんな中途半端な関係はごめんだ!」とでも言いたげな態度を取ったわけですが、実際には「そもそもEUを出たのが間違いだったのでは?」と国民の間で疑問の声が強まる結果となりました。

イギリスは「EUに戻る気はない」と強がっているものの、実際のところ、出口戦略すら見えてこない迷走状態が続いています。

国民の意識変化:「やっぱりEUに戻りたい?」

面白いことに、国民の意識も変わりつつあります。

2023年11月の世論調査では、「もし今EUに戻るかどうかの国民投票をしたら?」という質問に対し、57%が「再加盟を支持する」と回答しました。さらに、かつてEU離脱を支持した人たちの35%が「やっぱり戻った方がいい」と考えを改めたのです。

EU離脱の際には「これでイギリスは独立し、より良い未来を築ける!」と信じた人も多かったでしょう。しかし、いざ離脱してみると、経済は落ち込み、政治は混乱し、物価は上がる一方──。「思っていたのと違う…」と後悔する人が増えるのも無理はありません。

「去る者は日々に疎し」という言葉がありますが、イギリスの場合、「去った後に恋しくなる」という皮肉な展開になっています。

EU再加盟の可能性:簡単にはいかない「出戻り」

とはいえ、イギリスがEUに戻る道は決して平坦ではありません。

まず、政治的リーダーシップの問題。現在の労働党のキア・スターマー党首は、はっきりと「EUに再加盟するつもりはない」と明言しています。EUとの関係修復を模索することはあっても、完全に戻るつもりはない、というスタンスです。

一方で、EU側の態度も冷ややかです。過去に自らの意志でEUを離れたイギリスに対し、「また戻りたい?そう簡単にはいかないよ」と慎重な姿勢を示しています。

たとえば、EUの主要メンバー国は、「もしイギリスが戻りたいなら、以前と同じ条件では受け入れない」と考えています。EU加盟国は共通のルールを守る必要がありますが、イギリスが「自分たちに都合のいい条件で戻りたい」と言い出すことを警戒しているのです。

まるで「別れた恋人が復縁を望んでも、相手はもう素直に受け入れてくれない」というような状況になっています。

まとめ:「独立」とは何だったのか?

イギリスは「EUを離れれば、もっと自由になり、経済も政治も良くなる」と信じて離脱を選びました。しかし、その結果はどうでしょう?

・経済は低迷し、物価は上昇
・政治は迷走し、リーダーシップ不在
・国民の間では「やっぱりEUに戻りたいかも」という声が増加

とはいえ、今さら「やっぱりEUに戻ります!」と言っても、簡単に受け入れてもらえるわけではありません。

「独立」とは響きのいい言葉ですが、その裏には多くの困難がつきまとうことを、イギリスは身をもって証明したのかもしれません。果たして、この国はどこへ向かうのか──。今後の展開に注目です。

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