英国の税金の種類について

英国の税制は、国民や企業からの収入を集めるための複雑で多様なシステムを持っています。これらの税金は、公共サービスの提供やインフラの維持、社会福祉制度の支援などに使われています。本記事では、英国の主要な税金の種類について詳しく解説します。

1. 所得税(Income Tax)

所得税は、個人の収入に対して課される税金です。給与、賃貸収入、投資利益、年金など、さまざまな収入源に対して適用されます。所得税の税率は累進課税制度に基づいており、所得が高くなるほど高い税率が適用されます。

  • 基本税率(Basic Rate): £12,571から£50,270までの収入に対して20%の税率が適用されます。
  • 高額税率(Higher Rate): £50,271から£150,000までの収入に対して40%の税率が適用されます。
  • 追加税率(Additional Rate): £150,000以上の収入に対して45%の税率が適用されます。

また、個人には年間の免税枠(Personal Allowance)があり、2023/24年度では£12,570までの収入は非課税です。

2. 国民保険料(National Insurance Contributions, NICs)

国民保険料は、社会保障制度の財源として徴収される保険料です。主に年金、失業手当、医療サービスなどに使用されます。雇用者、被雇用者、自営業者が支払う義務があります。

  • 雇用者のNICs: 収入に応じて計算され、週給£242を超える部分に対して12%の保険料が課されます。
  • 自営業者のNICs: 収入に応じてクラス2とクラス4の保険料が課されます。クラス2は年間£3.45、クラス4は収入が£11,908を超える部分に対して9%が課されます。

3. 付加価値税(Value Added Tax, VAT)

付加価値税は、商品やサービスの購入時に課される間接税です。標準税率は20%で、一部の商品やサービスには軽減税率が適用されます。

  • 標準税率: 20%(一般的な商品やサービス)
  • 軽減税率: 5%(家庭用エネルギーや子供用の安全シートなど)
  • ゼロ税率: 0%(基本的な食品や書籍、子供用の衣料品など)

企業は一定の年間売上高(2023/24年度では£85,000)を超えると、VATの登録が義務付けられます。VAT登録企業は、仕入れ時に支払ったVATを控除することができます。

4. 法人税(Corporation Tax)

法人税は、企業の利益に対して課される税金です。英国では、国内外の収入に対して課税されます。

  • 基本税率: 2023/24年度では19%の税率が適用されます。

特定の控除や税額控除(例えば、研究開発税額控除など)を受けることができ、これにより課税所得が減少します。

5. キャピタルゲイン税(Capital Gains Tax, CGT)

キャピタルゲイン税は、資産の売却による利益に対して課される税金です。不動産、株式、貴金属などが対象となります。

  • 個人のCGT税率: 基本税率は10%、高額税率は20%です。住宅用不動産の売却利益に対してはそれぞれ18%と28%の税率が適用されます。
  • 年間免税枠: 2023/24年度では£12,300までの利益は非課税です。

6. 相続税(Inheritance Tax, IHT)

相続税は、亡くなった人の遺産に対して課される税金です。

  • 基本税率: 40%(遺産が£325,000を超える部分に適用)
  • 免税枠: £325,000までの遺産は非課税です。この枠は「ニルレートバンド(nil-rate band)」と呼ばれます。夫婦間の遺産は非課税であり、未使用の免税枠は配偶者に引き継ぐことができます。

7. 印紙税(Stamp Duty Land Tax, SDLT)

印紙税は、不動産や土地の購入時に課される税金です。

  • 住宅用不動産: 購入価格が£250,000を超える部分に対して課税され、最大税率は12%です。
  • 非住宅用不動産: 購入価格が£150,000を超える部分に対して課税され、最大税率は5%です。

初めて住宅を購入する場合、一定の控除が受けられることがあります。

8. 自動車税(Vehicle Excise Duty, VED)

自動車税は、車両の所有者に対して課される税金です。税額は車両の二酸化炭素排出量やエンジンのサイズに基づいて決定されます。

  • CO2排出量に基づく税率: 新車購入時の初年度に適用される税率は、車両のCO2排出量に基づいて段階的に設定されます。
  • 標準税率: 2年目以降の標準税率は、多くの車両に対して年間固定額が適用されます。

9. 確定申告(Self Assessment)

確定申告は、自営業者、フリーランサー、その他の特定の収入源を持つ個人が、自分で税金を申告するシステムです。確定申告を通じて、所得税、NICs、CGTなどを自己申告します。

  • 期限: 確定申告は、毎年1月31日までにオンラインで提出する必要があります。

10. その他の税金

その他の税金として、地方税(Council Tax)や環境税(Environmental Taxes)などがあります。

  • 地方税(Council Tax): 住居に対して地方自治体が課す税金で、住居の評価額に基づいて計算されます。地方サービス(ごみ収集、図書館、公園など)の提供に使用されます。
  • 環境税(Environmental Taxes): 環境保護を目的とした税金で、例えばプラスチックバッグ税や炭素税などがあります。

まとめ

英国の税制は多岐にわたり、それぞれの税金が特定の目的や収入源に基づいて課されています。所得税、国民保険料、付加価値税、法人税、キャピタルゲイン税、相続税、印紙税、自動車税など、様々な税金が国の財政を支え、公共サービスや社会福祉制度の維持に貢献しています。これらの税金は、個人や企業の経済活動に直接影響を与え、国全体の経済の健全な発展に寄与しています。

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