なぜ日本人は簡単にイギリスに移住できないのか――経済的立場とグローバル化の限界から考える

かつて「経済大国」として世界に名を馳せた日本。しかし、現代において日本人がイギリスなどの欧州諸国へ移住するのは決して容易ではない。そこには、表面からは見えにくい経済的な背景と、グローバル化に乗り切れない構造的問題が存在する。

日本人がイギリスに移住しづらい理由とは?

まず前提として、イギリスをはじめとする欧州諸国では、ビザ発給の条件が近年ますます厳しくなっている。ブレグジット(英国のEU離脱)以降、EU圏外の人材に対する移民政策は実利重視にシフト。学歴、職業、年収水準、英語力などが数値化され、一定の基準を満たさなければ滞在許可は下りない。

ここで日本人の立場を見てみると、決して悪条件ではないはずだ。高い教育水準、比較的安定した収入、治安の良さ――こうした要素は一見するとイギリスの求める「優秀な外国人労働者像」に合致する。しかし実際には、日本人の長期移住や永住権取得はハードルが高く、数としても少ない。

日本の経済的な立場が逆に足かせに?

意外に思われるかもしれないが、「経済的に安定している国の国民」であることが、日本人にとって移民のハードルを上げる要因となっている。イギリスを含む多くの移民受け入れ国は、基本的に「自国にとってメリットのある移民」を歓迎する。例えば、内戦や貧困から逃れる人々は人道的観点から、または低賃金労働者としての需要から受け入れ対象になる。

一方で、日本人は「安全な自国に住み続けるインセンティブが高い」とみなされやすく、イギリス側からすれば「本当に来たいのか?」「すぐ帰国するのでは?」という警戒が働く。さらに、日本のパスポートは非常に信頼性が高く、短期滞在ならビザ免除で入国できるため、「観光客」扱いで済んでしまい、長期的な定住という観点では警戒感が拭えない。

なぜ日本はグローバル化できないのか

この問題の根底には、日本社会が未だに「内向き」であるという文化的・制度的な課題も存在する。言語の壁だけでなく、就職・教育・社会保障などあらゆる制度が「日本語を話し、日本文化に完全適応できる人」を前提としており、外国人にとっても、日本人が外に出ていくにも不利な構造となっている。

さらに、日本の若者の「海外志向の低下」も深刻だ。内閣府の調査によると、海外で働きたいと考える日本の若者は年々減少傾向にある。留学経験者も少なく、英語を使った業務経験も乏しい。結果的に、海外で通用するスキルや人脈を築けず、移住に必要なポイント(英語力、職歴、ネットワークなど)をクリアできないまま時間が過ぎていく。

結論:閉じた島国に潜む「見えない壁」

日本人がイギリスへ移住するのが難しいのは、単に政策的な問題だけではない。むしろ、日本という国の経済的な立場が「難民でも労働力でもない中途半端な存在」として扱われやすくしており、同時に、日本社会の内向きな構造が人材の流動性を阻んでいる。つまり、「移民される国」であることが、逆に「移民しづらい国民性」を生んでしまっているのだ。

真のグローバル化とは、単に英語を話せるようになることではない。世界で通用するスキルを磨き、多様な社会に適応する柔軟さを持ち、自国から外へ出る勇気を持つこと――この3つがなければ、日本人が世界に打って出る未来は遠いままだ。

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