
はじめに
海外生活において、予期せぬトラブルに巻き込まれることは誰にでも起こりうることです。特に「知らない男性に付きまとわれる」という事態は、恐怖や不安を引き起こす重大な問題です。日本とは法制度や支援体制が異なるイギリスで、こうした状況に直面した際、どこに相談し、どのように行動すべきかを知っておくことは、安心・安全な生活を送る上で極めて重要です。
この記事では、イギリスで見知らぬ男性にしつこく付きまとわれた際の具体的な相談先、警察の対応基準、支援制度、そして自己防衛のための実用的なアドバイスについて詳しく解説します。
1. 付きまとい(ストーキング)の定義と法的枠組み
イギリスでは、「付きまとい行為(stalking)」や「ハラスメント(harassment)」に関する法律が整備されています。
1-1. ハラスメントとストーキングの違い
- ハラスメント(Harassment):相手に対して不安・苦痛を与える行為の繰り返し。例えば、何度も不要なメッセージを送る、後をつける、嫌がらせの電話など。
- ストーキング(Stalking):ハラスメントの一形態で、より執拗で不気味な行為。物理的に尾行する、家の周りに現れる、職場や学校に押しかけるなど。
イングランドおよびウェールズでは、2012年に導入された「保護自由法(Protection of Freedoms Act 2012)」により、ストーキングが独立した犯罪と定められました。
2. どのような行為が警察の介入対象になるのか?
警察が動けるかどうかの鍵は、「被害者が合理的に恐怖や苦痛を感じたかどうか」にあります。
2-1. 介入の条件
以下の行為があれば警察は正式に捜査・介入可能です:
- 複数回にわたる嫌がらせ(最低2回の繰り返し)
- 後をつける、家の前に立つ、待ち伏せする
- メール、SNS、電話などによる連絡が執拗に繰り返される
- 無断で写真や動画を撮られる
- ギフトを送りつける
- 被害者の家族や友人に接触を試みる
重要なのは、「一見無害に見える行動でも、繰り返されれば犯罪となる」という点です。
3. 相談・通報の方法と支援団体
3-1. 警察への通報
警察への連絡は以下の方法があります。
- 緊急(命の危険や今すぐ助けが必要な場合):999番
- 非緊急(今すぐでないが通報が必要):101番
- オンライン通報:イギリス警察の公式ウェブサイト(www.police.uk)
警察に通報する際は、次のような情報を準備しておくとスムーズです:
- 被害の具体的内容(いつ、どこで、何があったか)
- 加害者の特徴(服装、顔立ち、使用車両など)
- メールやSNSのスクリーンショット、録音、写真などの証拠
3-2. 警察が取る対応
警察は通報を受けると、以下の対応を取る可能性があります:
- 警告文の送付(Police Information Notice, PIN)
- 仮の接近禁止命令(Non-Molestation Order)の申請支援
- 加害者の事情聴取・逮捕
- 被害者のためのセーフティープラン作成
- 必要に応じて、支援団体への紹介
4. 支援を受けられる団体・機関一覧
ストーキングやハラスメント被害を受けた際、以下の団体が相談窓口となります。
4-1. National Stalking Helpline
- https://www.suzylamplugh.org/
- ストーキング専門の相談機関。匿名相談可能。安全対策や法的対応の助言を受けられます。
4-2. Victim Support(被害者支援団体)
- https://www.victimsupport.org.uk/
- 24時間のホットラインやオンラインチャットで、心理的ケアや生活支援を提供。
4-3. Refuge(女性支援団体)
- https://www.refuge.org.uk/
- 女性のための緊急シェルターや法的サポートを提供。DVやストーキング被害にも対応。
4-4. Citizen’s Advice Bureau(市民相談窓口)
- https://www.citizensadvice.org.uk/
- 無料で法律、住居、生活支援などを受けられる公的サービス。
5. 自分でできる安全対策・記録方法
5-1. 被害の証拠を記録する
- 日記や記録帳を作り、日付・場所・行動内容を毎回記録。
- SNSのメッセージや通話履歴は削除せず保管。
- 不審者が写っている監視カメラ映像や写真を保存。
5-2. 生活の中での防犯意識
- 一人で夜道を歩かない、人気のないルートを避ける
- 友人に居場所を共有するアプリを使う(例:Life360)
- ドアや窓の鍵を強化、防犯カメラの設置も検討
- 相手に住所・勤務先などの個人情報を絶対に明かさない
6. 警察以外で法的保護を得るには?
6-1. 非接近命令(Restraining Order)
警察の介入がない場合でも、民事裁判所を通じて非接近命令を申請することが可能です。この命令に違反すれば刑事罰の対象になります。
6-2. 弁護士に相談する
ストーキング被害に精通した弁護士に相談することで、スムーズな法的手続きが可能になります。市民相談所(Citizen’s Advice)を通じて無料相談も受けられます。
7. 精神的なサポートも忘れずに
ストーキング被害は心に深い傷を残します。放っておくとPTSDや不安障害、抑うつ症状を引き起こす可能性もあります。
以下の支援を検討してください:
- NHS(イギリス国民保健サービス):GP(家庭医)を通じてカウンセリングにアクセス
- Mind(メンタルヘルス支援団体):https://www.mind.org.uk/
- Samaritans(無料電話相談):116 123(24時間)
まとめ
知らない男に付きまとわれた場合、イギリスでは法律・支援制度が比較的整備されており、泣き寝入りする必要は一切ありません。怖い、困ったと感じた時点で相談・通報することが、自分と周囲を守る第一歩です。
最後に、以下のポイントを再確認しましょう:
- ストーキングは犯罪です。証拠を記録し、必ず通報しましょう。
- 相談先や支援団体は多数存在します。一人で悩まず専門家の力を借りましょう。
- 自分自身の安全対策を日常生活の中で常に意識しましょう。
- 心のケアも忘れずに。精神的ダメージは必ず回復できます。
あなたの安全と尊厳は、どこにいても守られるべきものです。万が一に備えて、正しい知識を持ち、必要な時に行動できるようにしておきましょう。
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