経済悪化と生活不安
イギリスは少し前までとても裕福な国でした。しかし、コロナパンデミックが収束して以降、経済は右肩下がりとなり、多くの人が職を失いました。また、公定歩合の引き上げによって住宅ローンの返済額は増加し、インフレは加速。生活費の上昇など、暗いニュースばかりが続いています。
そのような中で、「なぜ自分たちの暮らしが良くならないのか」と考える人が増え、その理由を「移民のせいだ」と言い始める人が現れました。自分たちに余裕があった時には気にもとめなかった存在に対して、生活が苦しくなった途端、責任を転嫁するようになったのです。
これは、誰にでも起こりうる自然な心理の流れと言えるでしょう。
日本でも起こりうる未来
同じことは、日本でも近い将来起こる可能性があります。日本はすでに人口が減少しており、労働力と納税者を海外から受け入れざるを得ない状況にあります。
ここで考えてほしいのは、「移民も一人の人間であり、同じ権利を持つべきだ」という点です。生まれた場所が違うだけで、なぜその人の価値が低くなるのでしょうか。
海外から移住してきた人々の中には、現地出身者より優秀な人も多く存在します。ただし、割合としては少数であるため目立ちにくいだけです。多くの移民は、その国の恩恵を受けるために、自らリスクを負って海を渡って来ているのです。
移民に求められる姿勢と現実
もちろん、異国に移住するからには、その国の文化や言語を学び、敬意を示すことは必要です。しかし一方で、住居や食料が無償で提供され、働かなくても一定期間生活できる制度に頼り、「イギリスは天国のような場所だ」と捉えてしまう移民が存在することも事実です。
とはいえ、だからといって彼らを邪魔者扱いすることは間違いです。彼らはたまたま、自国が内戦など非常に危険な状況にあり、生まれながらにして命の危険にさらされる環境にいたにすぎません。生まれる場所を選べる人間など、誰一人いないのです。
余裕を失ったイギリス社会
かつてイギリス人は非常に寛容な人々でした。しかし現在は、移民を目の敵にし、「移民さえいなくなれば街が安全になり、給料が増え、大きな家が買え、良い車に乗れる」と信じて疑わない人が多く存在しています。
これは、イギリス人が経済的にも精神的にも余裕を失ってしまったことが原因です。経済的余裕と精神的余裕は比例するため、経済的な基盤を取り戻さない限り、かつての寛容さを取り戻すことはできないでしょう。
しかし、本当は逆であり、「精神的な余裕を持つことで、経済的な余裕が戻ってくる」ということに気づけていないのです。それほど、視野が狭くなってしまっているのです。
本当の問題に気づく日は来るのか
もし今後、5年、10年と時間が経ち、移民が大幅に減ったとしても、生活がより苦しくなることは目に見えています。その時になって、ようやく「原因は移民ではなかった」と気づくのでしょうか。










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