「日本の桜はイギリスから来た」は本当か?——歴史と科学から徹底検証

はじめに

春になると日本全国が薄紅色に染まり、桜の開花がニュースで報じられるほど、桜は日本文化の象徴として根付いています。ところが近年、SNSや一部のメディアで「実は日本にある桜はイギリスから来たものだ」という説が流布されています。本記事では、この説の真偽を歴史的記録・植物学的知見・国際交流史などの観点から徹底分析し、誤解の背景にも迫ります。

結論:日本の桜は日本原産である

先に結論を述べると、「日本にある桜がイギリスから来た」という説は事実ではありません。日本の桜の多くは日本原産であり、特に観賞用として有名な「ソメイヨシノ(染井吉野)」は19世紀中頃に江戸で人工的に交配・栽培された品種です。

誤解の発端:なぜ「イギリス由来説」が出たのか?

1. 欧米から逆輸入された桜

20世紀初頭、日本からアメリカやイギリスに桜が贈られ、現地で育てられた例が多数あります。特にアメリカ・ワシントンD.C.の桜は有名です。これが「イギリスで育てた桜が再び日本に戻された」という誤解を生んだ可能性があります。

2. 植物学的な分類混乱

桜はバラ科サクラ属(Prunus)に属しており、世界中に200種以上あります。イギリスやヨーロッパ原産の野生種(例:ヨーロッパスモモ Prunus domestica やサクランボ類)と、東アジア原産の桜が混同された可能性もあります。

3. 園芸品種と学名の混乱

ソメイヨシノの学名は Prunus × yedoensis ですが、19世紀にヨーロッパの植物学者たちがこの種を分類した際、標本がロンドンのキューガーデン(王立植物園)に保存されたことで、「ヨーロッパで作られた品種」と誤解されたとも考えられます。

日本の桜の起源:主な種類とルーツ

ソメイヨシノ(染井吉野)

  • 江戸時代後期に、東京・染井村(現在の豊島区)で人工交配によって作出。
  • 親木はオオシマザクラ(伊豆諸島など原産)とエドヒガン。
  • クローン繁殖により全国に広がる。

ヤマザクラ(山桜)

  • 日本全土の山地に自生。古来より和歌に詠まれる桜の代表格。
  • 奈良や吉野山の桜はすべてこの種。

カンザクラ、シダレザクラ、カスミザクラ など

  • いずれも日本固有もしくは東アジア原産の品種。
  • 多くが古代から野生的に分布していた。

イギリスとの関係:逆に「日本からイギリスへ」渡った桜たち

  • 19世紀末から20世紀初頭、日本は多くの桜を欧米へ輸出。
  • イギリスの園芸家たちは日本の桜を愛し、現地で栽培・品種改良。
  • 例:キューガーデンには現在も日本由来の桜が多数栽培されている。

DNA解析の結果も「日本原産」を裏付け

近年の遺伝子解析により、ソメイヨシノを含む日本の主要な桜の品種は日本国内で交配・発展してきたことが科学的にも明らかになっています。とくに、韓国がかつて主張した「桜の起源は済州島」という説も、DNA解析により否定されています。

まとめ:桜は日本の歴史と自然が生んだ奇跡

「桜=イギリスから来た」という説は、科学・歴史の両面から見て誤りです。実際には、日本の風土と文化が育んだ桜が世界に広まり、イギリスなどで愛されるようになったのが真実の姿です。

むしろ誇るべきは、日本の桜が国境を越えて愛され、他国の春をも彩る存在になったということではないでしょうか。

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