イギリスの若者を脅かすニタゼン――偽の錠剤に潜む危険、症状・後遺症・禁断症状

「ネットで買った睡眠薬だから大丈夫」。その思い込みが、英国では命に関わる可能性がある。英国政府は、偽造医薬品にニタゼン類という強力な合成オピオイドが含まれる危険を、16~24歳の若者に向けて警告している。購入者は、ニタゼンを摂取するつもりなどなかったかもしれない。そこに、この問題の怖さがある。

ニタゼンとは何か。「成分」は一つではない

ニタゼンは一種類の薬物名ではない。イソトニタゼン、メトニタゼン、プロトニタゼンなど、似た化学構造を持つ合成オピオイドのグループを指す。そのため「ニタゼンの成分はこれ」と、一つの分子式で説明することはできない。英国の医薬品規制当局によると、調査対象となったこれらの物質は、英国で医薬品として承認されたこともない。

作用の強さも種類によって大きく違う。英国の薬物乱用諮問委員会は、一部のニタゼンについて、実験条件によってはフェンタニルより強い作用を示したと報告している。ただし、すべてのニタゼンが同じ強さという意味ではない。街で売られる錠剤や粉末は中身も量も一定ではなく、見た目から危険性を判断できない。

英国では、どこから若者の手に渡るのか

ニタゼンはヘロインに混入するだけでなく、偽の睡眠薬や抗不安薬などにも見つかっている。英国政府は、とりわけ違法なオンライン販売経由の偽造医薬品を警戒している。「違法薬物には手を出さない」と考えていた若者でも、錠剤を薬だと信じて購入する可能性がある。

被害は数字にも表れている。英国国家犯罪対策庁(NCA)が2025年に記録したニタゼン関連の死亡は359件。2024年の435件より少ないものの、2025年分は検査結果が確定すると増える可能性がある。なお、これは全年齢を含む数字であり、若者だけの死亡者数ではない。

摂取すると、どんな症状が出るのか

ニタゼンは脳のオピオイド受容体に作用する。多幸感や痛みの軽減、強い眠気のほか、吐き気や混乱が起こり得る。最も危険なのは呼吸が遅くなり、やがて止まってしまうことだ。

過量摂取を疑う兆候には、次のものがある。

  • 呼びかけたり肩に触れたりしても反応しない
  • 呼吸が極端に遅い、乱れている、または止まっている
  • 唇や指先が青色・灰色になっている
  • 瞳孔が非常に小さい
  • 普段と違う大きないびきや、ゴロゴロという呼吸音がする

「酔って寝ているだけ」に見えても、呼吸が危険な状態かもしれない。アルコールや睡眠薬などを一緒に摂取している場合は、危険がさらに高まる。

助かった後も、後遺症は残るのか

ニタゼン特有の長期的な健康影響は、まだ十分に分かっていない。 ただし、過量摂取で呼吸が長く抑えられ、脳に酸素が届かなくなれば、脳損傷が起こり得る。その場合、命が助かっても記憶力や集中力、体の動きなどに長期の影響が残る可能性がある。これはニタゼンに限らず、深刻なオピオイド過量摂取で懸念される後遺症だ。

繰り返し使用した場合は、依存も懸念される。また、注射による使用には血管の損傷や感染症の危険が加わる。

やめたときの禁断症状

オピオイドに体が依存した状態で使用を減らしたり、突然やめたりすると、離脱症状、いわゆる禁断症状が出る。発汗、寒気、筋肉痛、鼻水、吐き気、下痢、不眠、不安、落ち着かなさなどが代表的だ。再び使いたいという強い欲求に苦しむこともある。ニタゼンは種類や実際に摂取した量が分からない場合も多く、症状の出方や続く期間を一律には予測できない。

使用をやめた後の再使用にも注意が必要だ。オピオイドへの耐性が下がると、以前は耐えられた量でも過量摂取につながり得る。依存が疑われる場合は、一人で抱えず、医師や薬物治療サービスに相談することが重要だ。

目の前で倒れた人がいたら

英国でニタゼンなどのオピオイドによる過量摂取が疑われたら、直ちに999へ通報する。ナロキソンがあれば、製品の指示に従って使用する。呼吸がなければ通報先の指示を受けながら心肺蘇生を始め、意識がなくても呼吸がある場合は回復体位にしてそばを離れない。ナロキソンで一度意識が戻っても、再び呼吸が悪くなることがあるため、救急隊による診察が必要だ。

ニタゼンの恐ろしさは、使用する人だけの問題にとどまらない。本人が「何を飲んだか」を知らないまま命を落とし得ることだ。英国で広がる偽造医薬品への警告は、薬のように見える錠剤ほど中身を確かめられない、という現実を突きつけている。

最後に

本当の問題は、違法薬物への依存だけではありません。若者たちが、違法薬物に手を出してしまう環境そのものに、知らず知らずのうちに依存していることではないでしょうか。

仕事もなく、特に趣味もない。定期的に受け取る給付金を酒やドラッグに使い、そんな生活から抜け出せなくなっている若者がごまんといます。

彼らに生きる希望を与え、結婚して家庭を持つ幸せを教える大人がいなくなってしまった。その結果として起きた問題ではないでしょうか。現代社会が生み出したこの問題の根本的な責任は大人たちにある――そのことを、多くの人はまだ理解していないのです。

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