家賃滞納したらどうなる?イギリス賃貸トラブル完全ガイド

こんにちは!イギリスに住む皆さんにとって、賃貸住宅の家賃は毎月必ず支払わなくてはならない大切な義務です。でも、人生には予期せぬ出来事がつきもの。収入の減少や失業、思わぬ出費などで、家賃を払えなくなることだってあります。
そんなとき、「家賃を滞納したらすぐに追い出されるのか?」 という疑問が頭をよぎる方も多いでしょう。

今回は、イギリスの賃貸制度に基づき、滞納から退去までの流れを詳しく解説します。どのくらい滞納できるのか、どんな通知が届くのか、そして最終的にどうなるのか。期間の目安を含めてお伝えします。


1. 家賃滞納は何ヶ月で「アウト」なのか?

まず覚えておきたいポイントは、家賃を1ヶ月滞納したからといって即座に追い出されるわけではないということです。イギリスでは、賃貸借契約の種類と状況に応じて手続きが進みますが、一般的に家賃滞納が2ヶ月(または8週間)に達すると、大家は法的手続きを開始できるようになります。

つまり、2ヶ月分の家賃を滞納した段階が、法的措置のスタートラインと考えてください。

しかし、これは「2ヶ月滞納したら即日退去させられる」という意味ではありません。ここから通知、裁判、退去命令、強制執行というステップを順に経ることになります。


2. 大家から届く「通知」とは?

家賃滞納後、大家はテナントに退去を求める法的な通知を送付します。代表的なのが次の2種類です。

Section 8 通知(理由ありの退去要求)

Section 8 は、家賃滞納などの正当な理由がある場合に発行できる退去要求通知です。家賃が2ヶ月分滞納した場合、この通知が使われるのが一般的です。

  • 通知には最低2週間の猶予期間が含まれます。
  • この間に滞納分を支払えば退去を免れることも可能。

大家はこの通知期間終了後、裁判所に「Possession Order」(立ち退き命令)の申立てを行うことができます。

Section 21 通知(「無過失」退去要求)

Section 21 は、大家が理由を明示しなくても使える退去要求通知です。賃貸契約の終了後、2ヶ月前までに通知すれば正当とされます。

ただし、近年の法律改正により、Section 21 は今後廃止される予定であり、将来的には家賃滞納や契約違反などの理由がなければ退去要求が難しくなる方向にあります。


3. 裁判所を通じた立ち退き命令の流れ

Section 8 通知の猶予期間が終了すると、次のステップとして大家は裁判所に立ち退き命令の申し立てを行います。

このときの流れは以下の通りです。

  1. 裁判所に申請提出
    大家が滞納を理由として立ち退き命令を求めます。
  2. 裁判期日が決定
    通常、数週間から数ヶ月後に裁判所の審理が行われます。
    実際には裁判所の混雑具合に左右され、平均で1〜4ヶ月程度が目安です。
  3. Possession Order(立ち退き命令)の発行
    裁判所が大家の主張を認めた場合、立ち退き命令が発行されます。
    テナントには通常、14日間の猶予が与えられますが、状況に応じて最長6週間の猶予が認められることもあります。

この段階でも自主的に退去すれば、強制執行は行われません。


4. 退去命令を無視した場合

立ち退き命令が発行されてもテナントが自主的に退去しなかった場合、大家は次のステップとして裁判所に「強制執行(Warrant of Possession)」を申請します。

この強制執行により、裁判所が執行官(Bailiff)を派遣し、物理的にテナントを立ち退かせることができます。

  • 執行官による退去執行は、申し立てから数週間から2ヶ月程度で実行されます。
  • 執行日は事前に通知が届きますので、テナントには最終的な退去準備をする時間があります。

5. 全体としてどのくらい滞納できるのか?

実際にどのくらい滞納状態で居住し続けられるのか、期間の目安をまとめると次の通りです。

  • 1ヶ月滞納
    督促状や連絡が来るが、即時追い出しはない。
  • 2ヶ月滞納
    Section 8 通知が届く可能性あり。ここから2週間の猶予。
  • 2ヶ月滞納+通知後
    裁判所に申し立て → 審理 → 立ち退き命令まで約2〜4ヶ月。
  • 立ち退き命令後
    自主退去しなければさらに1〜2ヶ月で強制執行。

これらを合計すると、早ければ3〜4ヶ月、遅ければ6ヶ月以上滞納しながら住み続けることが可能というのが現実的なところです。場合によっては、裁判所の混雑などにより1年近く滞納しても物理的に追い出されないケースもあります。

ただし、これはあくまで「追い出されるまでの期間」であり、その間も滞納額は積み上がり、最終的には裁判所命令によって家賃滞納分+訴訟費用+利息を支払う義務が発生します。


6. 滞納中にできる対策

もし支払いが困難になった場合、テナントとしてできることは以下の通りです。

① 大家と交渉する

事情を正直に説明し、支払計画(Repayment Plan)を提案することで、Section 8 通知や裁判所への申し立てを遅らせたり回避できることがあります。
コミュニケーションが重要です。

② 公的支援を受ける

低所得者や収入減少者には、以下のような支援が利用できます。

  • Housing Benefit または Universal Credit(家賃補助)
  • 地方自治体(Council)の緊急支援

状況が深刻な場合には、地元自治体に連絡し、ホームレス予防チームの支援を求めることができます。

③ 「Breathing Space」制度の活用

イギリス政府が設けている「Breathing Space」は、正式な債務アドバイスを受けることで最大60日間、督促を停止できる制度です。この期間内に家賃滞納問題の解決策を見つける時間が確保できます。


7. 家賃滞納の最終的な結末

最終的には、次のような流れになります。

  • 裁判所による Possession Order が発行される。
  • 退去命令後も居座り続けると、執行官が派遣され強制的に退去させられる。
  • 滞納家賃に加えて訴訟費用、執行費用、利息などが請求される。

さらに、強制退去は信用記録に悪影響を与えるため、将来別の物件を借りる際に不利になります。


8. まとめ

イギリスの賃貸制度においては、家賃滞納によっても即座に追い出されることはありません。以下の点をしっかり把握しておきましょう。

  • 1〜2ヶ月程度の滞納では即日退去はない
    ただし督促や通知が始まる。
  • 2ヶ月滞納で正式な手続きが開始される可能性が高い
  • 裁判所の審理・退去命令・執行官の訪問まで含めれば、3〜6ヶ月は滞納状態でも住み続けられることが多い
  • 長期的に放置すれば1年近く滞納し続けることも可能だが、最終的に強制退去と多額の請求を受けることになる

結論として、「滞納すればすぐ追い出される」というわけではありませんが、「滞納が長期化すればするほど、負担が増し、解決が困難になる」というのが現実です。

困難な状況に陥った場合は、できるだけ早く大家に連絡し、支援制度の活用や専門家の助言を受けることをおすすめします。

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