スコッチエッグの起源と進化

スコッチエッグ――外はカリッと揚げられた挽肉の衣、中にはゆで卵というシンプルながらも魅力的な料理。イギリスを代表するこの料理には、意外にも奥深い歴史と多彩なバリエーションが隠されています。この記事では、スコッチエッグの起源に関する複数の説、現代に至るまでの進化、そしてスコットランドでの人気とおすすめ店舗までを掘り下げてご紹介します。


起源にまつわる3つの有力説

1. フォートナム&メイソン説(ロンドン発祥)

スコッチエッグの起源について最も広く知られている説は、ロンドンの老舗高級百貨店「フォートナム&メイソン」が1738年に考案したというものです。当時のレシピは、味付けした挽肉(フォースミート)で茹で卵を包み、パン粉をつけて油で揚げるという現在とほぼ同様のスタイルでした。この料理は、長距離旅行をする裕福な人々向けの携帯食として提供されたと言われています。

2. ヨークシャー発祥説と「スコット」の名の由来

もう一つの説は、19世紀にヨークシャー州ホイットビーの「ウィリアム・J・スコット&サンズ」という店が、魚のすり身で卵を包んだ料理を「スコッチエッグ」として販売していたというものです。これにより、この料理名の「スコッチ」は、スコットランド由来ではなく、この店名「スコット」に由来するという見方も生まれました。

3. インド料理「ナルギシ・コフタ」起源説

さらに興味深いのが、ムガル帝国時代のインド料理「ナルギシ・コフタ(Nargisi Kofta)」が原型という説です。この料理は、スパイスを効かせた挽肉でゆで卵を包み、揚げたり煮込んだりするもので、見た目も作り方もスコッチエッグに酷似しています。イギリスがインドを植民地として支配していた時代に、こうした料理が英国に伝わり、現地の風土に合う形に変化していった可能性が考えられます。


名前の「スコッチ」にまつわる誤解

多くの人がスコッチエッグの「スコッチ」はスコットランドに由来すると考えがちですが、実際には様々な語源説があります。前述のウィリアム・J・スコットのように人名に由来する説のほか、「scotched(刻まれた、切れ目を入れた)」という英語から来ているという説もあります。かつては調理の際に肉に切れ目を入れていたことから、そう呼ばれるようになったというのです。


進化するスコッチエッグ

スコッチエッグは、シンプルな家庭料理としてだけでなく、近年ではガストロパブや高級レストランでアレンジを加えられた一品として提供されることも増えています。

  • ブラックプディング(血のソーセージ)入り
  • スモークサーモンで包んだもの
  • ダックエッグ(鴨の卵)を使用した高級版
  • ベジタリアン用にレンズ豆や豆腐を使ったバージョン

など、食材や調理法にバリエーションが加わり、現代の食文化に合わせて進化し続けています。


スコットランドでのスコッチエッグ文化

スコッチエッグがイングランド発祥であるにも関わらず、スコットランドでも非常に人気があります。特にパブやデリカテッセン、カフェなどでは定番メニューとして親しまれています。

スコットランド独自のアレンジ

スコットランドでは、ハギス(羊の内臓やオートミールを使った伝統料理)を挽肉の代わりに使用したスコッチエッグも提供されています。これは観光客にも珍しさから人気で、スコットランドの食文化を象徴する一品にもなっています。


スコットランドで味わうべきスコッチエッグの名店

エディンバラ

  • Makars Gourmet Mash Bar 伝統的なスタイルのスコッチエッグを提供しつつ、地元の食材をふんだんに使用。エディンバラ中心部でアクセスも良好。
  • Berties Proper Fish & Chips クラシックなイギリス料理が楽しめる店。カジュアルな雰囲気で家族連れにもおすすめ。

グラスゴー

  • The Gannet ダックエッグとブラックプディングを使った高級感のあるスコッチエッグが名物。地元のグルメにも人気。
  • Innis & Gunn Taproom クラフトビールとの相性抜群のスコッチエッグを楽しめるパブ。友人との集まりにもぴったり。
  • Bothy ハギスを使ったスコッチエッグが特徴。落ち着いた雰囲気のレストランで、記念日など特別な日のディナーにも最適。

まとめ:伝統と革新が共存する英国の味

スコッチエッグはその起源に多くの謎を秘めつつも、イギリス国内外で愛される料理へと成長しました。シンプルでありながらも多様性に富み、食べる人を楽しませてくれる存在です。スコットランドでは、伝統を大切にしつつも革新的なアレンジが施されており、旅行の際にはぜひ現地のスコッチエッグを味わってみてください。その一口には、歴史と文化、そして職人の技が詰まっています。

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