
ポジティブな影響(短期・部分的)
- 一部の職種での雇用機会増
- 移民が多かった清掃・単純労働・一部工場労働などで、イギリス人の雇用機会が広がる可能性。
- 競争が減ることで、一部労働者は就職しやすくなる。
- 賃金上昇圧力
- 人手不足により、雇用主は国内労働者を確保するため賃金や条件を改善せざるを得なくなる。
- 特に農業、介護、物流、建設などで「賃金が上がる=一部イギリス人にとって魅力が増す」効果が期待できる。
- 公共サービスや住宅需要の緩和
- 学校・病院・ソーシャルハウジングの利用圧力が一時的に減る。
- 都市部賃貸住宅の需要が減り、家賃上昇圧力が和らぐ可能性。
- 心理的・文化的な安心感
- 一部の人々にとっては「街の変化が止まった」「文化的に落ち着いた」と感じること自体が利益。
- 移民削減を公約した政治勢力にとっては支持者への成果となる。
ネガティブな影響(中長期・構造的)
- 労働力不足と産業停滞
- NHS(医師・看護師の多くが移民)、介護(人手不足13万人超)、農業(季節労働者数万人規模)、物流(HGVドライバー不足)、外食・ホテル業、建設など、移民依存度の高い産業が崩壊的な人手不足に直面。
- 結果として診療待機の悪化、介護崩壊、収穫放棄、住宅建設遅延、飲食店閉業などが現実化。
- 経済成長の鈍化・税収減
- 移民は労働者であると同時に納税者・消費者。彼らがいなくなると労働人口が減り、経済成長率は低下、税収も縮小。
- 高齢化社会で年金・福祉を支える人が減り、財政負担が逆に増す。
- 住宅市場の歪み
- 賃貸需要は減るが、根本的な供給不足は解消せず。
- 一方で海外投資家は高級住宅を買い続けるため、一般的なイギリス人が買いやすくなるわけではない。
- 結果として「下は緩むが上は高止まり」という二極化が進む可能性。
- 富裕層への影響
- 家政婦・ナニー・介護職、レストラン・ホテルスタッフ、建築業者などが減り、サービスコストが上昇。
- 高級不動産市場は「国際都市ロンドン」の魅力低下で長期的には資産価値が不安定化。
- 経済停滞による社会不安が治安リスクとして富裕層にも跳ね返る。
- 国際競争力の低下
- 大学は留学生収入に依存(23%以上)、移民・留学生減で赤字校が増える。
- 研究・ハイテク分野の人材確保が難しくなり、イノベーション力が低下。
- 金融都市ロンドンの「国際性プレミアム」が剥落し、長期的に投資先としての魅力が落ちる。
- 社会的不均衡の拡大
- サービス不足で最も困るのは高齢者や低所得層。
- 「移民排斥で良くなるはず」と考えていた層が逆に生活の質の低下に直面し、不満が増幅する。
- 政治的な分断や社会不安が長期化する恐れ。
全体像
- 短期的には:「職を奪われていた」という感覚を持つ一部労働者や、「サービスや住宅が移民で混雑している」と感じていた層にとってはプラス。心理的満足感も得られる。
- しかし中長期的には:労働力不足、税収減、経済停滞、サービス崩壊、社会不安、国際競争力低下などのコストが膨大になり、イギリス人全体にとってマイナスの影響が大きい。
✅ 結論:
移民がいなくなったときの「利益」は短期的で限定的、主に感覚的・局所的なもの。
「不利益」は中長期で広範かつ深刻で、社会全体の持続可能性を損なう。
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