
イギリスの銀行制度は、長い歴史と厳格な監督体制に支えられ、顧客の資産保護を最優先に設計されています。特に注目すべきなのが「預金保証制度(Deposit Guarantee Scheme)」であり、万一の金融機関の破綻時にも、一般消費者が保有する預金が一定額まで保護されるようになっています。
金融サービス補償制度(FSCS)とは?
イギリスでは、預金者保護を目的としてFSCS(Financial Services Compensation Scheme)という公的な補償制度が運用されています。これは、銀行、建設協同組合(Building Society)、信用組合などに預けられた資金が、金融機関の破綻時に一定の条件で補償される仕組みです。
預金の保証限度額
現在(2025年6月時点)、FSCSでは以下のような補償制度が適用されています:
- 個人預金者1人あたり:£85,000まで
- 共同名義口座:£170,000まで(1人あたり£85,000×2)
この保証は、金融機関ごとの「ライセンス単位」で適用されるため、同じグループ傘下であっても異なるライセンスを持つ銀行に預ければ、それぞれ別個に補償を受けることが可能です。
一時的に高額となる預金への対応
特定のライフイベント(例:住宅売買、保険金の受領、相続、退職金など)によって、一時的に大きな金額が預金口座に入金される場合があります。このようなケースに対しても、FSCSでは特例として最大£1,000,000までを最長6ヶ月間補償する「Temporary High Balance(THB)」制度を設けています。
2025年12月以降の予定変更
2025年12月から、FSCSの補償額が引き上げられる予定です。これは預金者の保護強化を目的とした制度見直しによるもので、以下のような変更が提案されています:
項目 | 現行制度(〜2025年11月) | 新制度案(2025年12月〜) |
---|---|---|
個人預金 | £85,000 | £110,000 |
共同名義口座 | £170,000(85k×2) | £220,000(110k×2) |
一時高額預金保護 | £1,000,000(最大6ヶ月) | £1,400,000(最大6ヶ月) |
この改定案が実施されれば、消費者の資産はより広範に保護されることになり、特に住宅取引や相続を控える預金者にとっては大きな安心材料となるでしょう。
補償制度の利用方法
万が一、銀行が破綻した場合、FSCSは自動的に補償を行います。預金者側で特別な手続きは原則不要であり、通常は破綻後7営業日以内に補償金が振り込まれるとされています。ただし、THBなどの特例に該当する場合には、証明書類の提出が必要になるケースがあります。
補償対象となる金融商品
FSCSによる補償は、次のような預金商品に適用されます:
- 普通預金(Current Account)
- 定期預金(Fixed Term Deposit)
- 貯蓄口座(Savings Account)
- ISA(個人貯蓄口座)など
ただし、株式や投資信託、暗号資産(仮想通貨)などは預金補償の対象外となるため、注意が必要です。
まとめ
イギリスの銀行制度は、顧客保護を重視した仕組みが整備されており、万一の破綻時でもFSCSを通じて預金が保障される体制が確立されています。特に、2025年12月からの補償額引き上げにより、さらなる安全性が確保される見込みです。
海外移住者や長期滞在者、投資家なども安心して資金を預けられる環境が整っており、イギリスの金融インフラは世界的にも高く評価されています。
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