よく飼われているペットの種類と割合、そして英国人がペットを飼う深層心理
イギリスに住んでいると、すぐに気づくことがあります。
とにかく犬が多い。
公園にも犬。
カフェにも犬。
電車にも犬。
パブにも犬。
オフィスにも犬。
そして、犬を連れている人はだいたい幸せそうです。
さらに、猫を飼っている人も多い。
庭の塀を歩く猫、窓辺に座る猫、近所を自由に歩き回る猫。
イギリスの住宅街には、どこか必ずペットの気配があります。
では、なぜイギリス人はこれほどペットを飼うのでしょうか。
故エリザベス女王のコーギー愛の影響なのか。
単に動物好きの国民性なのか。
それとも、もっと深い心理があるのでしょうか。
この記事では、イギリスでよく飼われているペットの種類と割合、そしてイギリス人がペットを飼う背景にある心理を掘り下げていきます。
イギリスは本当にペット大国なのか
結論から言うと、イギリスはかなりのペット大国です。
UK Pet Foodの統計では、イギリスでは約1,550万匹の犬が飼われており、世帯の41%が犬を飼っています。また、猫は約1,300万匹で、世帯の31%が猫を飼っています。
PDSAの2025年データでは、イギリス成人の30%が犬を飼っており、推定犬人口は1,110万匹。猫は成人の24%が飼っており、推定猫人口は1,050万匹。ウサギは成人の2%が飼い、推定70万匹とされています。
調査機関によって数字に差はありますが、共通しているのは、イギリスでは犬と猫が圧倒的に多く、かなり多くの家庭が何らかのペットと暮らしているということです。
イギリスでよく飼われているペットの種類と割合
イギリスでよく飼われているペットは、やはり犬と猫が中心です。
犬
最も存在感が強いのは犬です。
UK Pet Foodによると、イギリスでは約1,550万匹の犬がペットとして飼われ、41%の世帯が犬を飼っています。
PDSAの2025年推計でも、成人の30%が犬を飼っており、犬はイギリスで最も代表的なペットの一つです。
イギリスで犬が多い理由は分かりやすいです。
公園が多い。
散歩文化がある。
犬連れに比較的寛容。
パブやカフェに犬を連れて行ける場所が多い。
一人暮らしや高齢者の相棒として犬が選ばれやすい。
イギリス人にとって犬は、単なるペットではありません。
友人であり、家族であり、生活のリズムを作る存在です。
猫
猫も非常に多いです。
UK Pet Foodによると、イギリスでは約1,300万匹の猫が飼われ、31%の世帯が猫を飼っています。
PDSAの2025年データでは、成人の24%が猫を飼っており、推定猫人口は1,050万匹です。
猫は、犬ほど散歩や外出の手間がかからないため、忙しい人や高齢者、アパート暮らしの人にも人気があります。
イギリスでは、猫が外に出ることも珍しくありません。近所を歩き回り、庭に入り、別の家の窓辺に座っていることもあります。
犬が「一緒に暮らす相棒」だとすれば、猫は「同じ家に住む自由な同居人」のような存在です。
魚
魚もイギリスでは根強い人気があります。
UK Pet Foodの2024年発表では、魚はイギリスの21%の家庭で飼われているとされています。
魚は犬や猫と違い、散歩も鳴き声もありません。
そのため、賃貸住宅や忙しい家庭でも比較的飼いやすいペットです。
水槽を眺めることには癒やし効果があり、インテリアとしての役割もあります。イギリス人にとって魚は、触れ合うペットというより、静かに眺めて落ち着く存在なのかもしれません。
ウサギ
ウサギも伝統的に人気がありますが、近年は減少傾向があります。
PDSAの2025年データでは、イギリス成人の2%がウサギを飼っており、推定70万匹とされています。
また、PDSAは2024年時点でも、犬・猫に大きな変化はない一方、ウサギの飼育割合は2023年より減少したと説明しています。
ウサギは一見飼いやすそうに見えますが、実際には広いスペース、適切な食事、運動、獣医ケアが必要です。かわいいから簡単に飼える、という動物ではありません。
鳥・鶏・小動物・爬虫類
犬猫ほどではありませんが、鳥や小動物、爬虫類を飼う人もいます。
UK Pet Foodによると、室内鳥は約140万羽で、2.7%の世帯が飼っています。また、ペットとしての家禽、つまりニワトリなどは約90万羽で、1.1%の世帯が飼っています。
イギリスでは、郊外や庭付き住宅でニワトリを飼う人もいます。これはペットであると同時に、卵を得る実用的な意味もあります。
また、ハムスター、モルモット、爬虫類などは、子どものいる家庭や、犬猫を飼えない家庭で選ばれることがあります。
エリザベス女王とコーギーの影響
イギリスのペット文化を語る上で、故エリザベス女王とコーギーは避けて通れません。
エリザベス女王は幼い頃からコーギーを愛し、生涯で30匹以上のコーギーを飼ったと広く報じられています。彼女のコーギー愛は、王室の堅いイメージの中に、人間らしさと温かさを見せる象徴にもなりました。
女王とコーギーの姿は、写真、映像、記念硬貨、さらには2012年ロンドン五輪のジェームズ・ボンドとの演出にも登場し、世界的な英国イメージの一部になりました。
ウェールズ公式観光サイトも、エリザベス女王がコーギー人気に与えた影響は疑いようがなく、女王が最初のコーギーを贈られた年には子犬登録が56%増え、2022年のプラチナ・ジュビリーの年にはPembroke corgiのKennel Club登録が30年ぶりの高水準に達したと紹介しています。
つまり、エリザベス女王は単に犬好きだっただけではありません。
彼女は、イギリスにおける「犬と暮らす生活」の象徴でもあったのです。
ただし、イギリス人がペット好きなのは女王の影響だけではない
もちろん、イギリス人がペットを飼う理由をすべてエリザベス女王の影響と考えるのは単純すぎます。
女王のコーギーは、確かに犬を愛する英国文化の象徴でした。
しかし、イギリス人のペット好きは、もっと深い生活文化に根ざしています。
イギリスでは、動物愛護の意識が非常に強いです。
RSPCAのような動物福祉団体も有名で、ペットは「所有物」というより「家族の一員」として扱われることが多いです。
また、庭付き住宅、公園、カントリーサイド、散歩文化、パブ文化、孤独な高齢者の生活など、ペットと暮らしやすい条件もそろっています。
エリザベス女王はその象徴であって、原因のすべてではありません。
深層心理1:イギリス人は感情表現が苦手だからこそ、ペットに心を開く
イギリス人は、感情を大げさに表現しない文化を持っています。
人前で泣きすぎない。
弱音を吐きすぎない。
他人に踏み込みすぎない。
本音を冗談で隠す。
「Not too bad」と言って済ませる。
こうした文化の中で、ペットは非常に特別な存在になります。
人間相手には言えないことも、犬や猫には言える。
人間相手には見せない優しさを、ペットには見せられる。
社会では感情を抑えていても、家に帰れば犬が全力で喜んでくれる。
猫が膝に乗るだけで、心がほどける。
イギリス人がペットを愛する背景には、人間関係では出しにくい感情を、動物には安心して出せるという心理があります。
これは、かなり大きいと思います。
深層心理2:孤独を埋める存在
イギリスは個人主義の国です。
成人した子どもは家を出る。
家族が離れて暮らす。
近所付き合いも日本ほど濃くない。
高齢者の一人暮らしも多い。
友達同士でも、適度な距離を保つ。
自由である一方、孤独もあります。
その孤独を埋める存在として、ペットは非常に重要です。
犬は毎朝散歩に連れ出してくれます。
猫は家の中に気配を作ってくれます。
魚は静かな部屋に動きを与えてくれます。
ウサギや小動物は世話をする理由を与えてくれます。
人間関係は面倒でも、ペットとの関係はシンプルです。
裏切らない。
批判しない。
政治の話もしない。
階級も関係ない。
英語のアクセントも気にしない。
ただそこにいてくれる。
この安心感が、イギリス人にとって非常に大きいのです。
深層心理3:家族の代わり、子どもの代わり
イギリスでも少子化や晩婚化、子どもを持たない選択が広がっています。
子どもを持たないカップル。
結婚しない人。
離婚後に一人で暮らす人。
子どもが独立した高齢者。
仕事中心で家庭を持たない人。
こうした人々にとって、ペットは家族の代わりになることがあります。
近年よく聞く言葉に、fur baby があります。
直訳すれば「毛の生えた赤ちゃん」。犬や猫を子どものように扱う表現です。
もちろん、ペットと人間の子どもは同じではありません。
しかし、愛情を注ぐ対象、世話をする対象、日常の中心になる存在という意味では、ペットが子どものような役割を持つことがあります。
ベビーカーの代わりに犬用カート。
子どもの誕生日のように犬の誕生日。
クリスマスプレゼントもペット用。
家族写真にも犬や猫。
これは少し大げさに見えるかもしれませんが、現代のイギリスでは珍しくありません。
深層心理4:犬は「階級」と「ライフスタイル」の記号でもある
イギリスで犬を飼うことは、単なる動物好き以上の意味を持つことがあります。
犬種によって、何となく飼い主のライフスタイルが見えることがあります。
ラブラドールやスパニエルなら、カントリーサイドやファミリー感。
コッカプーやキャバプーなら、都市部の若いファミリー感。
グレイハウンドなら、レスキュー意識や落ち着いた生活感。
ブルドッグなら英国らしさ。
コーギーなら王室イメージ。
小型犬なら都市生活や高齢者の相棒。
もちろん完全な偏見ですが、イギリスでは犬種が一種のライフスタイル表現になることがあります。
日本で車や時計やバッグがその人の趣味を示すように、イギリスでは犬がその人の暮らし方を表すことがあります。
犬は、単なるペットではなく、自己紹介の一部なのです。
深層心理5:自然への憧れ
イギリス人は、意外なほど自然が好きです。
週末に公園へ行く。
カントリーサイドへ行く。
ナショナル・トラストの庭園を歩く。
犬を連れて森や丘を散歩する。
雨でも歩く。
風が強くても歩く。
犬を飼うことは、この自然志向と非常に相性が良いです。
犬がいるから散歩に行く。
犬がいるから外に出る。
犬がいるから季節を感じる。
犬がいるから近所の公園を知る。
イギリス人にとって犬は、自然と日常をつなぐ存在です。
特に都市生活では、仕事と家の往復だけでは心が閉じてしまいます。
犬がいることで、強制的に外へ出る。
これが精神的なバランスを保つ役割を果たしているのです。
深層心理6:ペットは会話のきっかけになる
イギリス人は、知らない人といきなり深い話をするのは苦手です。
しかし、犬がいると話は別です。
「Lovely dog.」
「What breed is he?」
「How old is she?」
「Is he friendly?」
犬がいるだけで、会話の入口が生まれます。
公園で犬同士が近づく。
飼い主同士が話す。
近所で顔見知りになる。
散歩ルートで毎日会う。
つまり、ペットは人間関係の潤滑油にもなります。
イギリスでは、天気の話と犬の話はかなり安全な会話ネタです。
政治や宗教やお金の話は避けても、犬の話なら問題ありません。
ペットは、イギリス人の距離感を少しだけ縮める道具でもあるのです。
深層心理7:人間よりペットの方が信用できる
少し皮肉を込めて言えば、イギリス人の中には、人間よりペットの方が信用できると考えている人もいます。
人間関係は面倒です。
約束を守らない人もいる。
裏切る人もいる。
職場では気を使う。
家族関係も複雑。
離婚もある。
友人関係も薄くなる。
しかし、犬は毎日同じように喜んでくれます。
猫は気まぐれでも、嘘はつきません。
ペットは、社会的な駆け引きをしません。
イギリスのように皮肉や建前、階級意識、距離感がある社会では、動物の率直さが救いになるのかもしれません。
ペットにお金をかけるイギリス人
イギリスでは、ペットにかけるお金も大きいです。
ペットフード。
保険。
獣医費用。
トリミング。
おもちゃ。
ベッド。
服。
誕生日プレゼント。
クリスマスギフト。
ドッグウォーカー。
ペットシッター。
デイケア。
特に犬の場合、飼育費用はかなり高くなります。
しかし、それでも飼う人は多い。
これは、ペットを「余ったお金で飼う趣味」ではなく、「生活の一部」と考えているからです。
イギリス人にとって、ペットのためにお金を使うことは、家族にお金を使うことに近い感覚なのです。
コロナ後に変わったペットとの関係
コロナ禍も、イギリスのペット文化に大きな影響を与えました。
ロックダウン中、多くの人が孤独を感じ、家にいる時間が増えました。
その結果、犬や猫を迎える人が増えました。
UK Pet Foodは、2024年時点で過去4年間に1,090万世帯が新しいペットを迎え、子犬は370万世帯、子猫は260万世帯に迎えられたと発表しています。
コロナ中、ペットは単なる癒やしではありませんでした。
生活の支えであり、孤独への対抗策であり、日常を保つための存在でした。
在宅勤務で家にいる時間が増えたことも、ペットを飼う後押しになりました。
特に犬は、外に出る理由を作ってくれます。
猫は、家の中の孤独を和らげてくれます。
しかし、ペット大国には問題もある
ペットを飼う人が多いことは、良いことばかりではありません。
衝動買い。
飼育放棄。
高すぎる獣医費用。
ペット保険の負担。
賃貸でペット可物件が少ない問題。
犬のしつけ不足。
騒音。
糞の放置。
動物福祉の問題。
PDSAは2025年のPAW Reportで、犬の推定数が過去最高に達する一方、ウサギは減少し、ペットを迎える前に一度しか会わない、または十分に確認しない飼い主がいること、さらにSNSがペット取得の意思決定に影響していることを指摘しています。
つまり、ペット人気が高まるほど、責任のない飼い方も問題になります。
かわいいから飼う。
SNSで見たから飼う。
流行っている犬種だから飼う。
在宅勤務だから大丈夫と思って飼う。
しかし、犬も猫も長く生きます。
生活が変わっても、費用が上がっても、病気になっても、世話は続きます。
イギリスがペット大国であるということは、同時にペット責任大国でなければならないということです。
イギリス人がペットを飼う理由を一言で言うなら
イギリス人がペットを飼う理由を一言で言えば、人間社会で足りないものを補ってくれるからです。
孤独を埋める。
愛情を注ぐ対象になる。
家族の代わりになる。
自然とつながる理由になる。
会話のきっかけになる。
感情を出せる相手になる。
生活にリズムを作る。
自分のライフスタイルを表現する。
ペットは、イギリス人にとって単なる動物ではありません。
人間関係がほどよく薄い社会で、最も濃い関係を築ける相手。
感情を抑える文化の中で、安心して愛情を出せる存在。
個人主義の社会で、毎日自分を待っていてくれる家族。
それがペットなのです。
まとめ:イギリス人はペットを飼っているのではなく、ペットに支えられている
イギリスでペットを飼う人が多い理由には、故エリザベス女王のコーギー愛のような文化的象徴もあります。女王とコーギーの関係は、英国人にとって犬がいかに特別な存在であるかを示す分かりやすい例でした。
しかし、それだけではありません。
イギリスでは、犬と猫を中心に多くの家庭がペットと暮らしています。UK Pet Foodの統計では、犬は約1,550万匹、猫は約1,300万匹に上り、犬を飼う世帯は41%、猫を飼う世帯は31%とされています。
その背景には、孤独、個人主義、感情表現の苦手さ、自然志向、家族観の変化、そして人間関係の距離感があります。
イギリス人はペットを「かわいいから」だけで飼っているのではありません。
ペットに話しかけ、癒やされ、外に連れ出され、生活のリズムを作られ、孤独を埋められています。
つまり、イギリス人はペットを飼っているようで、実はペットに支えられているのです。
エリザベス女王にとってコーギーが単なる犬ではなかったように、一般のイギリス人にとっても、犬や猫はただの動物ではありません。
家族であり、友人であり、心の安全地帯です。
そして、もしかするとイギリス人が人間相手にはなかなか見せない優しさを、最も素直に見せている相手こそ、ペットなのかもしれません。










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