いまのイギリスで、特に10代の若者たちを見ていると、将来に希望を持てないまま荒んでいく現実が見えてくる。
窃盗、強盗、殺人、レイプ、暴力、違法薬物。以前なら一部の地域や特殊な環境の話と思われていた犯罪が、いまは決して遠い世界の出来事ではない。街を歩けば万引きやひったくりが日常のように起き、スマートフォンや自転車を狙った窃盗も珍しくない。若者による暴力事件や刃物を使った犯罪のニュースも、もはや驚かなくなってしまった。
では、なぜイギリスの若者はここまで荒れているのか。
理由は明らかだ。家庭が壊れ、両親が離婚し、親が失職し、生活が苦しくなり、貧困層が急増している。物価は高いままで、家賃も食費も光熱費も下がらない。真面目に働いている大人でさえ生活が苦しいのだから、十分な教育も家庭の支えもない若者が将来に希望を持てないのは当然ともいえる。
学校に行かない。行っても勉強に意味を見いだせない。仕事もしない、あるいは仕事を探しても見つからない。
学校へ行き、勉強し、大学を卒業しても、安定した仕事が保証されるわけではない。学費や生活費の負担だけが残り、卒業後も低賃金の仕事しかない。そんな現実を見ている若者にとって、「真面目に努力すれば報われる」という言葉は、もはや説得力を失っている。
そうなると、彼らの中には別の考え方が生まれる。
どうせ学校に行っても将来がない。どうせ大学を出ても仕事がない。だったら若いうちに手っ取り早く犯罪で金を稼ぎ、ある程度お金が貯まったら海外で悠々自適に暮らせばいい。
そんな発想を持つ若者が増えていても、不思議ではない。
犯罪は、最初から強盗や殺人で始まるわけではない。最初は万引きや自転車の窃盗、スマートフォンのひったくり、軽い薬物の運び屋など、小さな犯罪から始まる。成功すれば、短時間で現金が手に入る。学校で努力しても得られなかったお金や、家庭では得られなかった承認を、犯罪の世界では簡単に手に入れられるように見えてしまう。
しかし、一度その世界に足を踏み入れれば、犯罪は次第にエスカレートしていく。
もっと稼げる犯罪へ。もっと危険な仕事へ。もっと大きな組織へ。
違法薬物の販売は、その典型だ。イギリスのギャングは常に新しい使い捨ての駒を探している。家庭に居場所がなく、学校にも馴染めず、仕事も見つからず、金もない若者は、彼らにとって格好の標的になる。
最初は「簡単な運びだけ」「一度だけ」「危ないことはない」と言われるかもしれない。しかし実際には、そこから抜け出すことは簡単ではない。借金、脅迫、暴力、仲間内の裏切り、警察、刑務所。気がつけば、自分の人生を自分で選べない場所まで追い込まれている。
問題は、若者が最初から犯罪者になりたいわけではないことだ。
将来が見えず、努力する意味が分からず、家庭も社会も自分を守ってくれないと感じたとき、犯罪が唯一の生き残る術のように見えてしまう。まともな仕事よりも、違法薬物の販売や窃盗の方が早く稼げる。大学卒業後に不安定な生活が待っているなら、若いうちに稼いで海外に逃げればいい。そう考える若者が出てくるのは、個人のモラルだけでは説明できない。
いまイギリスの若者に待っているのは、希望に満ちた未来ではない。
教育を受けても仕事がない。働いても生活が苦しい。家族は分裂し、地域のつながりも弱くなり、犯罪組織は弱い立場の若者を狙っている。その結果、万引きや窃盗から始まった犯罪が、強盗、薬物、暴力、そして取り返しのつかない犯罪へと進んでいく。
これは一部の若者だけの問題ではない。イギリス社会そのものが、若者を追い詰め、犯罪組織にとって都合のよい環境を作ってしまっている。
未来を失った若者が増えれば増えるほど、社会はさらに不安定になる。そして、その代償を払うのは、犯罪に巻き込まれる一般市民だけではない。犯罪に手を染めた若者自身もまた、本来なら選ばずに済んだはずの人生を失っていくことになる。










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