
はじめに
イギリスでは日常生活からビジネスまで、あらゆる場面で宅配サービスが欠かせません。ネットショッピング、医薬品の配送、オンラインフード購入……配送が滞るだけで日常が大きく狂うことは誰しも経験があるでしょう。しかし、どうもイギリスの配送業者は「もう少し何とかならないのか?」と思わせるような、信じられない欠陥を露呈しています。
この記事では、「苦情を言っても改善されない」「人が変わるたび同様のミス」「システム作りも苦情の共有もしない」「AIに丸投げで定型応答のみ」といった、使えない理由を徹底分析し、最終的にはどうすればほんの少しでも改善が見込めるか、考察します。
苦情を言っても改善されず、人が変わるとリセット状態に
配送トラブルが起きたとします。トラッキングが途中で止まる、誤配送される、配達通知電話ばかりで夕方にドライバー不在……さまざまなケースがあります。しかし、苦情を入れても多くの場合、
- 担当者が異動・退職すると記録が引き継がれず、再度エントリーからスタート
- 同じミスに対し、異なる担当者が過去を知らないまま対応
- 問い合わせ対応の知識やマニュアルすら統一されていない
など無限ループに。結局「ご迷惑をおかけしました」「今後注意します」レベルで終わり、また同じ過ちを繰り返します。苦情から改善点を見出してシステムに反映する文化が乏しく、担当が変わるとゼロに戻る状態です。
同じミスを繰り返す構造的問題
- トラッキング情報の精度が低い
最新のスキャンが反映されず、「配達中」とされ続け、実は配達されてから丸一日以上経っている。 - 配達物の所在情報が曖昧
ドライバーが手渡し前に配送センターへ戻ったり、配送完了後に戻されていたり。 - 誤配送・遅延の自動リトライ対応も曖昧
「再配達します」と言いながら、結局いつやるのか分からず放置。 - 他の配送業者との連携が杜撰
いくつかの業者が関わる国際配送では、「どの会社の管轄か」が関係者全員に共有されず、確認すらされないまま荷物放置。
こういったミスが、1回だけならまだしも「またか」「また同じ会社でやられた」と感じさせるレベルで頻発。苦情を受けても「たまたまドライバーの当たりが悪かった」扱い。そもそも原因を根本解決する気が薄い。
システム構築・履歴共有を怠る組織文化
多くのイギリス配送業者は、まさに“人海戦術”+“個人任せ“。トラッキング・CS・統計管理が社内でバラバラで、以下のような状況すら普通です:
- トラブル発生
- 顧客が問い合わせフォーム or チャット or 電話で連絡
- 対応中の担当者が「CRM」に苦情報告
- 統括部署や別拠点に共有されず、翌日には誰も苦情を知らない
- 同様トラブルが再発し、また「誰か」が即席対応
レビューサイトを見ると、数ヶ月前に同様の件で怒っている投稿が見えても、会社はどうせ「全社共有」していない。社内ナレッジが醸成されず、全社員・全拠点を横断できるシステムは未整備。たとえば、CRMはあるが活用されておらず、現場には存在しないかのような状況です。
AI苦情応答の限界と“人間不在の壁”
さらに悪いのは、CS(カスタマーサービス)にAI対応が導入された結果、「機械が苦情を聞いて、定型返答を返す」体制ができてしまっていることです。AI対応には以下の問題があります:
- パターン化された応答のみ
「お荷物の状況を確認致しました」「申し訳ございませんでした」と、定型テンプレートばかり。個別ケースへの踏み込みが全くありません。 - 柔軟な交渉や判断ができない
1日遅延しただけでも、「£5のクーポン」しか提示できず、それ以上の補償は認められない。金額交渉や事情説明による柔軟対応が一切ナシ。 - 感情へのケアが皆無
人間同士のやり取りなら、「お客様のお気持ち、痛いほど分かります」といった共感やフォローが重要ですが、AIはそれができません。 - エスカレーションも不明瞭
「上司に繋ぎます」と言われても、電話口が切り替わらず、結局最後までAI。人間が介在する窓口が表にはないかのよう。
苦情対応の“顔”が見えず、人間味も柔軟性も奪われています。しかも、苦情対応のAIから送られた定型文は一度出されると再度「このテンプレ文で十分」と記録され、手直しされることもありません。結果、改善どころか「テンプレ強化状態」という悪循環に陥るのです。
改善には欠かせない“仕組み”と“ヒューマンオペレーション”
配送サービスを改善するには、以下のような構造改革が必要です。
- CS苦情報告の全社共有システム化
— CRMと連動し、苦情案件を全社全拠点に通知。複数拠点にまたがる案件は自動で関係部署へアラート。 - エスカレーションルールと人間担当者の確保
— AI対応だけでなく、明確に「人間オペレーターが最終対応」に入るシステム。 - 原因分析と再発防止プロセスのPDCA化
— 毎月「苦情分析レポート」を更新し、傾向・問題点を社内共有。トラッキング遅れの傾向に対するマニュアル更新など、実効性ある改善策を盛り込む。 - ドライバー教育・評価制度の整備
— 配達記録・レビューなどの実績を可視化。改善対象者には教育を施し、「改善されたら再度評価」で評価に連動。 - 顧客への透明なフォローアップ
— 配達トラブル後、定期的に進捗報告を入れる仕組みを導入。「現在、原因を調査している」など、顧客が安心できる対応ができる体制が必要。
現場の声:せめて人間相手に返答してほしい
実際に苦情を入れた人たちの声を見ても、こんな声が多数です。
「AIから“申し訳ありません”だけ言われて、いつどうなるんだかまるで分からない」
「AIの返答に“そうじゃない”って返したら、次も同じテンプレで返信されるだけだった」
「2回目以降は人間に代わるのかと思いきや、ずっとAI。人の声すら聞けない」
“人間相手に話を聞いてほしい” という願いもむなしく、画面の向こうに無機質なAIだけがいる現状。それにより「クレームの先に顧客がいる」ことがほとんど忘れ去られています。
終わりに:小さな改善でも積み重なれば
正直、イギリスの配送業者がすぐに完璧にシステムを刷新するかどうかは分かりません。しかし、本当に必要なのは「顧客の声を聞く姿勢」、そして「苦情を最低限でもデータとして蓄積し、活用する文化」。たとえAIを使うなら、
- “人間との併用が明確”
- “定型文を改善するロジックが組み込まれている”
- “顧客のフィードバックをAIトレーニングデータに使い、よりよい回答に進化させる”
くらいの本気を見せなければ、「また同じミス」「機械相手だけ」という苦い体験が延々と繰り返されます。仕組みが整い、CSが人間中心へ戻る日を願いつつ、次回の送料無料配送時には、せめて“人間がつながっている”ことだけでも実感したいものです。
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