マッチングアプリが主流になったイギリス、それでも「合コン」は存在するのか?―現代英国の出会い事情を探る

はじめに

近年、イギリスではマッチングアプリの利用が急激に広がり、出会いの形は大きく変化している。Tinder、Hinge、Bumbleといった主要アプリが若年層を中心に圧倒的な人気を誇る一方で、従来の方法による出会いは完全に姿を消したわけではない。果たして「合コン」に相当するような集団の出会いは今でも存在するのだろうか?また、マッチングアプリ以外で恋人やパートナーと出会う人々は、どのようなシチュエーションに恵まれているのだろうか?

本稿では、イギリスにおける出会いの文化について、マッチングアプリの浸透とその影響、そしてアプリ以外での主な出会いの場を多角的に考察する。


1. マッチングアプリの爆発的な普及

1-1. 数字で見るマッチングアプリの存在感

イギリスにおけるマッチングアプリの普及率は、ヨーロッパの中でも特に高い。2020年のパンデミック以降、外出制限やリモートワークの影響により、オンライン上での出会いを求める人が増えた。Statistaによると、2024年時点でイギリスでは約30%の成人がマッチングアプリを使用した経験があるとされており、特に25〜34歳の層ではその割合が50%を超えている。

1-2. アプリ文化が変えた出会いの常識

マッチングアプリの登場以前、イギリスではパブやクラブ、職場、大学といったリアルな場所での出会いが一般的だった。しかし現在では、スマホ一つで数十人と「出会いの可能性」を瞬時に得られるアプリの存在が、恋愛観そのものに影響を与えている。
特に都市部では、アプリで出会ったカップルが珍しくなく、むしろ「自然な出会い」というより「戦略的な選択」の一つとして受け入れられている。


2. イギリスに「合コン」はあるのか?

2-1. 合コンに近い文化:「グループデート」「Pub meet-up」

日本の「合コン」に相当する文化がイギリスに存在するかといえば、「Yes, but not exactly(あるけれど、少し違う)」というのが正しい表現だ。

イギリスでは「group hangout」や「group date」という形で、友人同士の集まりが自然にカジュアルな出会いの場になるケースが多い。たとえば、AさんとBさんが交際中で、Aさんの友人とBさんの友人を招いてパブで飲む――こうした形の「半ば意図された紹介」のような集まりは今でも存在する。これが最も合コンに近いスタイルだろう。

また、MeetupやFacebookグループを活用して「シングル限定パブイベント」「ワインテイスティング合コン」「ボードゲーム・ナイト」などのテーマ型出会いイベントが各地で行われており、合コンよりもやや社交的・趣味ベースな要素が強い。

2-2. 合コン的イベントの実例

以下はイギリスで開催されている「合コンに近い」イベントの一例:

  • Speed Dating(スピードデート)
    数分間ずつ複数人と会話し、最後にマッチングを記録する形式。ロンドンでは毎週のように開催されている。
  • Singles’ Pub Quiz Night
    クイズ形式でチームを組むイベント。自然と協力が生まれ、仲が深まるきっかけになる。
  • Blind Date Night
    事前にプロフィールを主催者に送り、当日はその情報に基づいてマッチされた相手と出会う。合コンよりも少人数・1対1の色が強い。

つまり、「合コン」という言葉自体は一般的ではないが、それに類似した出会いの仕組みは、形式を変えて今も健在なのである。


3. マッチングアプリ以外の出会いの実情

マッチングアプリ全盛の現代でも、「オフライン」での出会いが依然として重要であり続けている。以下は、イギリス人がマッチングアプリを使わずに出会う主要なパターンである。

3-1. 職場・学校・大学

今でも非常に多い出会いの場である。イギリスでは職場恋愛が比較的オープンに受け入れられており、同僚同士の交際や結婚も多く見られる。HRポリシーによっては報告義務がある場合もあるが、日本ほどの「職場恋愛=タブー」といった風潮は少ない。

大学や大学院では特にサークル活動(Societies)やスポーツチームを通じての出会いが活発。居住が寮に限定されることも多く、自然と親密になりやすい。

3-2. 趣味を通じた出会い

最近では「共通の趣味」を軸にした出会いが重要視されている。以下のような活動が人気だ:

  • ボランティア活動:地域の清掃、チャリティイベントなど
  • スポーツクラブ:フットボール、ランニング、クライミングなど
  • アート系イベント:陶芸、絵画、詩の朗読会など

これらの活動を通して自然な形で信頼関係が築かれ、その延長として恋愛に発展するケースも多い。

3-3. 友人の紹介

意外にも根強いのが「友人からの紹介」だ。イギリスではプライバシー重視の文化がありつつも、友人同士のネットワークは重要で、信頼できる相手を紹介することはよくある。

紹介される際は、必ずしも恋愛前提ではなく「ちょっと会ってみれば?」という軽いノリが多いため、プレッシャーが少なく、自然な関係構築がしやすい。


4. 出会いにおける文化的背景の違い

イギリスにおける恋愛文化は、一般的に「個人主義」と「カジュアルさ」が特徴だ。

  • デートは最初から恋愛前提ではなく、「お互いを知るプロセス」として段階的に進む。
  • 同棲期間が長く、結婚はその後に考えるカップルが多い。
  • アプリで知り合ってもすぐに親密になるわけではなく、友達期間が長いこともある。

この文化的背景が、出会いの場においても「型にはまらない自由な関係構築」を重視する傾向につながっている。


まとめ:アプリ時代でも「人と人との出会い」は多様であり続ける

マッチングアプリの登場と普及は、確かにイギリスの出会いの形を劇的に変えた。しかし、「合コンに近いイベント」や職場、趣味、友人の紹介など、アプリ以外の出会いも依然として多様に存在している。

イギリス社会では、恋愛は「選択と探求」のプロセスと捉えられ、出会いの形式もそれに合わせて柔軟に進化している。マッチングアプリが便利なツールであることは間違いないが、それがすべてではない。

最後に、イギリスの恋愛観で重要なのは「オーセンティシティ(本物らしさ)」と「自立性」。どのような場で出会ったとしても、自分らしさを大切にした関係を築くことが、現代の英国的な恋愛の本質なのかもしれない。

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