
「イギリス人って、毎週末ホームパーティーしてるって本当なの?」
そんな疑問を聞いたことがあるかもしれません。紅茶、パブ、紳士的な会話──そんなイメージの強いイギリスで、実は密かに広がっている“家での社交文化”。
パンデミック以降、その傾向はますます顕著になり、今や「毎週末誰かの家で集まる」というスタイルが、特定の層の間で定着しつつあるのです。
では、本当にイギリス人は毎週末ホームパーティーを開いているのでしょうか?
この記事では、イギリスの社交文化の背景から、なぜ今「ホームパーティー」が注目されているのか、その魅力や実態を深掘りしていきます。
◆ イギリスの社交スタイル:伝統的な“パブ文化”とは?
イギリスの社交といえば、まず思い浮かぶのが「パブ(Pub)」。
パブは“Public House”の略で、ただの飲み屋ではなく、まさに地域コミュニティの拠点。地元の人々が日常的に集い、ビール片手に語らい、サッカー中継を観たり、ちょっとしたイベントが開かれたりと、老若男女問わず集う場所として愛されています。
パブ文化には数百年の歴史があり、特に仕事終わりの「1パイント」はイギリス人にとって欠かせない習慣の一つ。都市部でも田舎でも、パブは地域社会のハブとなっていました。
◆ コロナ禍で変わった人々の行動様式
しかし2020年、コロナウイルスの世界的流行がその文化に大きな打撃を与えました。
ロックダウンによりパブは軒並み閉店、外出そのものが制限され、人々は「家の中」での過ごし方を模索するようになります。
その中で静かに広がっていったのが、“ホームパーティー文化”です。
もともとイギリスでは「家を招く」「人をもてなす」という文化も根強く、特に中流以上の家庭では、リビングやキッチンにこだわりを持つ傾向がありました。
この価値観がコロナをきっかけに再注目され、自宅での交流が一気に加速していきます。
◆ なぜホームパーティーが人気なのか? 5つの理由
実際に、イギリスの若い社会人や子育て世代の間では「週末は誰かの家に集まって、ワインや食事を囲むのが普通」という習慣が生まれつつあります。
その背景には、いくつかの合理的な理由があります:
1. コストパフォーマンスが高い
イギリスの外食費は日本と比べてかなり高め。特にロンドンなどの都市部では、パブで数杯飲むだけでも相当な出費になります。
その点、自宅で食材を持ち寄ったりすれば、コストを大幅に抑えることができます。
2. リラックスできる環境
家では靴を脱いでくつろぎ、ソファに深く座って過ごせます。照明や音楽も自由に設定でき、まさに「自分たちの空間」を演出できるのです。
ときには子どもを遊ばせながら、大人たちはキッチンでワイン片手におしゃべり──そんな光景が当たり前になっています。
3. 親密な関係を育める
パブやレストランではどうしても周囲の目や雑音が気になるもの。
一方ホームパーティーでは、少人数での深い会話が可能に。家族ぐるみのつながりや、友人同士の絆を強めるには最適なシチュエーションです。
4. テーマや演出を楽しめる
イギリス人はテーマ設定が大好き。
「イタリアンナイト」「70年代風ドレスコード」「ボードゲーム大会」「ワインテイスティング」など、遊び心のあるホームパーティーが人気を集めています。
5. “見せる家”への意識
イギリスでは「自宅=個人のステータス」と捉える文化があります。
きれいに手入れされたキッチンや、アンティーク家具、アートや植物など、家全体が“もてなしの一部”として機能するのです。
◆ “ローテーション制”で毎週末開催?
実際に、ロンドン郊外やブライトン、マンチェスターなどの都市部では、ホームパーティーを“交代制”で開くグループが存在します。
例えばある家族グループでは、4組の家庭が月に一度ずつホストを担当し、他のメンバーが料理や飲み物を持参して集まるスタイル。
週末に誰かの家で自然と集まるサイクルが出来上がっているのです。
この「ローテーション制」は、日本の「鍋パーティー」や「持ち寄り女子会」の進化版とも言えそうです。
◆ 日本との比較:なぜイギリスでは“家に呼ぶ文化”が根付くのか?
興味深いのは、イギリスでは初対面の人を家に招くことも珍しくない点です。
日本では「家に人を招く=かなり親しい間柄」というイメージがある一方、イギリスではむしろ“家で交流することで距離を縮める”という考え方があります。
これは、住宅そのものが“プライベート空間”でありながら“社交空間”でもあるという、独特な文化的認識に基づいています。
加えて、イギリスの住宅はリビングが広く、キッチンと一体化した“オープンプラン”が多いため、自然と会話が生まれやすい設計になっているのも特徴です。
◆ ホームパーティーで人気のスタイルは?
イギリスのホームパーティーでは、形式にとらわれないカジュアルなスタイルが主流です。以下のようなスタイルが人気です:
- ポットラック形式:ゲストがそれぞれ一品持参し、バラエティ豊かな食卓に。
- バーベキュー(BBQ):春~秋にかけては庭でBBQ。これも定番の一つ。
- 映画ナイト:プロジェクターで映画を上映し、ポップコーン片手にくつろぐ。
- 子ども向けコーナー設置:家族ぐるみでの交流のため、キッズスペースも整える工夫が。
インテリアにもこだわりが見られ、テーブルセッティングや照明、アロマキャンドルなど、非日常感を演出する要素がたっぷり詰まっています。
◆ イギリス人にとって“ホームパーティー”とは何か?
ホームパーティーは単なる「飲み会」ではなく、ライフスタイルの一部であり、コミュニティを育む重要な場でもあります。
「食事=コミュニケーションの手段」という感覚が強く、“もてなすこと”そのものが一つの喜びなのです。
また、デジタル化が進む現代において、人と人が直接顔を合わせる時間はますます貴重なものになっています。
その中で、安心できる場所で深い会話を交わす──それが、イギリスのホームパーティーが支持される理由なのかもしれません。
◆ おわりに:日本でも楽しめる“イギリス式ホームパーティー”
「イギリスでは毎週末ホームパーティーをしている」というのは、すべての人に当てはまるわけではありません。
しかし、特定の層ではそれが確かに「普通の週末の過ごし方」として根付いています。
その背景には、経済的な理由だけでなく、「親しい人と、リラックスした空間で、心を込めた時間を過ごす」という価値観があります。
これは、国を問わず多くの人に共感される考え方ではないでしょうか?
次の週末、あなたもイギリス式の“ちょっと気の利いたホームパーティー”を開いてみてはいかがでしょう。ワインを開けて、手料理を囲み、気の合う人と語らう夜は、何よりも贅沢な時間になるはずです。
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