イギリスでの身分証提示事情──大人でもIDが必要な場面と日本人が気をつけたいこと

日本では、成人すると日常生活で身分証(ID)を提示する機会は意外と限られています。例えば、銀行の口座開設や運転免許の取得、賃貸契約など特別な手続きの際に必要になる程度で、普段の生活の中で身分証を持ち歩いていない人も少なくありません。

ところが、海外、特にイギリスでは、意外な場面で身分証の提示を求められることがあります。イギリスに滞在する日本人にとって、その文化の違いは少し戸惑うこともあるかもしれません。特に「実年齢よりも若く見られる」傾向のある日本人は、思わぬ場面でIDを求められて慌ててしまうことも。

この記事では、イギリスにおける身分証の必要性、どんな場面でIDが求められるのか、そして日本人が特に注意したいポイントについて詳しく解説します。

1. イギリスにおける身分証の考え方

1-1. 日本との大きな違い:国民ID制度がない

まず知っておきたいのは、イギリスには日本の「マイナンバーカード」や他国のような全国民共通の「身分証明カード」が存在しないという点です。イギリス人が持っているIDといえば、主に以下のものです:

  • 運転免許証(Driving Licence)
  • パスポート(Passport)
  • 学生証(Student ID)※若者に限る

つまり、日本と同様、イギリスでも「必ず持ち歩かなければならない国民ID」というものはないのです。しかし、その一方で「提示を求められる機会」が日本よりも多いというのが現実です。

2. イギリスで身分証が必要になる主な場面

2-1. お酒やタバコの購入時

イギリスでは、18歳未満へのアルコールやタバコの販売は禁止されています。そのため、店員が年齢を確認するためにIDの提示を求めることがあります。

特にスーパーやパブ、バー、クラブなどでは、「25歳以下に見える場合はIDを確認する」というポリシー(”Challenge 25″)を導入しているところが多くあります。つまり、25歳以上であっても、見た目が若いと判断されればIDを提示しなければなりません。

これは、販売側が法律を遵守するために行っていることなので、提示できないと購入や入場が拒否される可能性があります。

2-2. クラブやバーへの入場

パブやクラブに入場する際にも、年齢確認のためにIDが必要になることがあります。特に夜間営業のクラブでは、入り口でセキュリティスタッフがIDチェックをするのが一般的です。

このとき求められるIDは、写真付きで、公的に発行されたものでなければなりません。たとえば、日本の学生証や社員証では通用しません。

受け入れられるIDの例:

  • パスポート
  • イギリスの運転免許証
  • BRP(Biometric Residence Permit:滞在許可証)

2-3. 年齢制限のある映画やイベント

映画館やコンサートなど、一部のイベントでも年齢制限がある場合、IDの提示を求められることがあります。

たとえば、18歳以上のレーティングがある映画を観る際、特に顔立ちが若く見える人には確認が入ることがあります。

2-4. 郵便物の受け取りや契約手続き

イギリスでも、日本同様、特定の郵便物を受け取る際にIDの提示が必要なことがあります。また、銀行口座を開くときやSIMカードを契約する際なども、IDの提示が求められます。

このときに必要なのは、写真付きのIDに加えて、住所証明(Proof of Address)の提出が必要になるケースもあるので注意が必要です。

3. 日本人が特に注意したい「若く見られる」という現象

日本人を含む東アジア人は、欧米人と比較して「実年齢より若く見られる」ことが多い傾向があります。これは一見するとポジティブな要素にも思えますが、イギリスではそれが不便に感じる場面もあるのです。

3-1. 「30代でもIDを求められる」ことは珍しくない

筆者自身の経験でも、30代の日本人がパブでビールを注文した際にIDを求められ、持っていなかったために販売を拒否されたケースがありました。日本ではまず考えられない出来事です。

もちろん店員にもよりますが、「若く見える=IDを求める」というのはマニュアル化されている部分もあり、個人の裁量ではないことが多いのです。

4. どんなIDを持ち歩くべきか?

では、イギリス滞在中、どんなIDを携帯しておくのが望ましいのでしょうか?

4-1. 日本のパスポート

最も一般的で確実なIDです。国際的にも通用し、写真付きで偽造が困難なため、多くの場面で受け入れられます。ただし、盗難や紛失のリスクもあるため、常に持ち歩くのは推奨されません。

4-2. パスポートのコピー+別のID

実用的な方法としては、パスポートの顔写真ページをコピーして持ち歩くことです。ただし、クラブやバーなど、厳しいIDチェックがある場所ではコピーでは通用しないこともあります。

4-3. 国際運転免許証(IDP)

運転をする予定がある人は、国際運転免許証も身分証として機能します。ただし、これも公的なIDとして受け入れられない施設もあるので万能ではありません。

4-4. Biometric Residence Permit(BRP)

学生ビザやワーキングホリデービザなどで長期滞在している場合には、BRPカードが最も安心なIDです。イギリス政府が発行しているカードで、パスポートの代わりとして多くの場面で通用します。

5. 結局、大人でもIDは持ち歩くべき?

5-1. 答えは「YES」

イギリスでは、「大人だからIDは不要」とはなりません。むしろ、大人であっても、見た目が若ければID提示が求められる社会なのです。

日本ではあまり意識しない「見た目年齢」が、イギリスではとても重要な意味を持つという点を理解しておくことが大切です。

5-2. 安全対策とバランス

  • パスポートの原本はなるべく持ち歩かず、コピーを携帯
  • 外出先でID提示が求められそうなときは、BRPカードや写真付きの公的IDを持参
  • クラブやパブに行くときは、必ず有効なIDを準備

6. まとめ:身分証は「備えあれば憂いなし」

イギリスでは、大人であっても身分証を持ち歩く習慣が必要です。特に日本人のように実年齢よりも若く見られやすい人にとっては、IDの提示が必要な場面に何度も遭遇する可能性があります。

慣れないうちは煩わしく感じるかもしれませんが、これも文化の違いの一つです。現地のルールを理解し、必要な場面に備えてIDを用意しておけば、スムーズで快適なイギリス生活が送れるでしょう。

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