
イギリスに住んでいる自動車所有者にとって避けて通れないのが「MOT検査」。これは日本でいう車検に相当する制度で、車両の安全性、環境性能などをチェックするために毎年実施されます。この記事では、MOT検査の具体的な内容、検査に通らなかった場合の対応、業者ごとの違い、そして信頼できる整備工場の選び方について、深く掘り下げて解説します。
MOT検査の概要
MOT(Ministry of Transport Test)は、車両が公道を安全に走行できる状態かどうかを確認する法的義務のある年次検査です。イングランド、ウェールズ、スコットランドで登録されている車両は、初度登録から3年を過ぎると、毎年MOT検査を受けなければなりません(タクシーや救急車など一部の例外あり)。
検査は、国の認可を受けたMOTテストセンターで行われ、検査合格後には「MOT証明書(VT20)」が発行されます。合格しなかった場合は「MOT失敗通知(VT30)」が出され、指摘された不備を修理し再検査を受ける必要があります。
検査内容とは?
MOT検査でチェックされる項目は主に以下の通りです。
- ブレーキ系統の効き具合と摩耗状態
- タイヤの溝の深さと摩耗状況(最低1.6mm)
- ヘッドライト、ブレーキライト、ウィンカー等の灯火類の動作確認
- サスペンション、ステアリング系統の異常有無
- 排気ガスの排出量(特にディーゼル車)
- シートベルトの固定と機能
- ワイパーやウォッシャー液の動作
- 車体番号(VIN)が確認可能かどうか
- ドアやボンネット、トランクの開閉確認
- 車両の下回りの腐食や損傷
検査は視認確認が中心で、部品の分解や内部の点検までは行いません。そのため、見た目に現れない故障や問題点はMOTでは見逃される可能性もあります。
MOTで不合格になった場合の対応
MOT検査に不合格となると、指摘された箇所を修理し、再検査を受ける必要があります。ここで問題になるのが、検査業者がその後の対応についてどのように扱うかです。
業者によって異なる「連絡の有無」
MOT検査に落ちた際に、
- すぐに連絡をくれる業者
- 連絡なしで単に「Failed」の通知のみ渡す業者
という2種類の対応が見られます。
法律的にはどちらが正しい?
イギリスの運輸省(DVSA: Driver and Vehicle Standards Agency)のガイドラインでは、MOTテストセンターには検査結果を正確に報告する義務はありますが、「連絡義務」や「修理の提案義務」はありません。つまり、業者が連絡をくれるかどうかは法律で定められていないため、業者の方針次第となります。
ただし、顧客サービスの観点から、問題点を説明したり、修理の選択肢を提示する業者の方が信頼されやすいのは確かです。
修理費の違いと注意点
MOTで不合格になった後に必要な修理費用は、業者によって大きく異なることがあります。以下の理由が考えられます:
- 部品の仕入れ先・価格差
- 工賃の違い(都市部ほど高め)
- 検査と修理が同じ場所で行われる場合の割引有無
- MOTに合格させるだけの”最低限修理”か、完全修理かの違い
中には、意図的に高額な見積もりを出し、実際には軽微な修理しかしていないケースもあるため、見積書は詳細まで確認することが重要です。
信頼できる整備工場の見極め方
修理業者の選定は、費用面だけでなく安全性の面でも非常に重要です。以下のポイントに注意しましょう:
1. レビューと評価をチェック
GoogleマップやTrustpilot、Yell.comなどでの顧客レビューを確認し、特に「MOT後の対応」や「料金透明性」に関するコメントに注目しましょう。
2. 認定マークの有無
「Good Garage Scheme」や「Motor Ombudsman」に登録されている業者は、一定の顧客対応基準を満たしており信頼性が高いとされています。
3. 見積書の明確さ
詳細なパーツ明細、工賃、VATの有無まで明示されている見積書を出す業者は、信頼性が高い傾向にあります。口頭説明のみの業者は要注意です。
4. 修理前の承諾確認
修理前に必ず確認を取る業者(=勝手に修理を進めない)は、顧客との信頼関係を大事にしている証拠です。
まとめ:MOT検査を味方につけるには
イギリスでのMOT検査は単なる義務ではなく、安全・安心なカーライフを守るための重要なチェックポイントです。検査内容を理解し、業者ごとの対応の違いを知ることで、不必要な出費や不安を避けることができます。
- MOT検査は車両の安全性・環境性能の年次点検
- 不合格時の連絡は業者次第、法的義務はなし
- 修理費用は業者によって大きく異なる
- 信頼できる工場を選ぶにはレビュー、見積、認定制度が鍵
車のメンテナンスは命を預ける行為でもあります。信頼できる業者を見つけ、MOTを面倒ではなく「安心材料」として活用していきましょう。
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