2026年9月28日時点
静かな村に、夜明け前から武装警察が集まる。海辺の街では抗議が荒れ、北アイルランドでは、長く封じ込められてきた宗派間の緊張が再び表に出る。別々の場所で起きた、原因も性質も異なる出来事だ。それでも、ニュースを追う側には一つの感覚が残る。「最近のイギリス、どこか物騒ではないか」。
空軍基地の近くで、85世帯が避難
9月27日未明、米軍も使用するRAFフェアフォードへ向かっているように見える不審な車両3台について、警察に通報が入った。グロスターシャー州ウィールフォード付近で男5人が爆発物に関する容疑で逮捕され、その後、テロ行為の準備容疑でも逮捕された。軍の爆発物処理部隊が車両を調べ、周辺の約85世帯が予防的に避難した。
現時点で、テロが実行されたわけではない。何を計画していたのかも捜査中だ。それでも、昨日まで普通の住宅地だった場所に規制線が引かれ、住民が家を離れる光景は重い。遠い戦地の話だと思っていた緊張が、突然、誰かの玄関先まで来たように映る。
北アイルランドで、28年前の対立が再び表面に
同じ27日、北アイルランドのポータダウンでは、プロテスタント系のオレンジ・オーダーによる行進をめぐって緊張が高まった。主にカトリック系住民が暮らすガーヴァギー・ロードを通る行進が限定的に認められたが、住民らが道路を塞ぎ、警察を挟んで対峙した。問題の経路は、1998年の激しい宗派対立の後、長く行進が認められてこなかった。結局、その日の行進は経路を通れなかった。
警察は、少なくとも27日の発表時点では暴力や騒乱を防げていると説明した。ここを「暴動が起きた」と書くのは違う。だが、数十年を経てもなお、一つの道を誰が歩くかで社会が張り詰める。その事実だけで十分に胸がざわつく。
港町の抗議は、警察官の負傷と逮捕者に
ポーツマスでは9月6日、小型船で到着した人々をめぐる抗議の一部が暴力的な騒乱に変わった。警察などの車両が損傷し、警察官7人が現場で手当てを受けた。翌週の抗議は大部分が平穏だったものの、逮捕者も出た。抗議する権利は大切だ。しかし、その怒りが車を壊し、警察官を傷つけるところまで進めば、街に残るのは恐怖と分断だ。
見逃せないのは、近隣のゴスポートでも9月22日、海峡を渡る小型船の情報を受けて集まった人々の一部が警察官に敵対的になり、6人が逮捕されたことだ。警察はその後、緊急対応に当たる職員への暴行などで3人を起訴した。ポーツマスだけの一夜限りの騒ぎとして片付けるには、後味が悪い。
ミドルズバラ周辺では、組織犯罪への大規模摘発
北東部ミドルズバラ周辺のティーズサイドでも、警察は組織犯罪への対応を強めている。9月21日には130人を超える警察官らがサウスバンク、グレンジタウン、エストンで一斉に活動し、20人を逮捕した。押収されたのは、薬物の疑いがあるものや現金、刃物など。警察は犯罪グループの解体を目指すと説明している。
この摘発だけで犯罪グループが全国に「拡大している」と証明できるわけではない。それでも、住宅街に大勢の警察官が入り、銃器や薬物の容疑で人々が逮捕される現実は、地元の人にとって抽象的な治安論では済まない。
さらにマンチェスターでは9月20日、ユダヤ人コミュニティを標的にしたとみられるテロ計画の捜査で男2人が逮捕された。警察は、長期の捜査によって疑われる計画を阻止したとの見方を示している。こちらも容疑段階であり、フェアフォードの事件との関係が確認されたわけではない。
「何となく怖い」で終わらせたくない
正確にいえば、「イギリス全体で犯罪が急増している」とまでは言えない。イングランドとウェールズの最新の全国犯罪調査では、2026年3月までの1年間の主要な犯罪件数に前年から統計的に有意な変化はなく、殺人や刃物を使った犯罪の警察記録は減っている。
だが、統計の平均だけで、人が感じる安心を測り切ることもできない。基地のそばで住民が避難し、港町で抗議が騒乱となり、別の街では組織犯罪の摘発が続く。宗派間の古い傷も、テロへの警戒も、一斉に私たちの目に入ってくる。
「何となく物騒になった」という感覚を、単なる気のせいで片付けたくない。事件の真相を明らかにし、暴力を確実に止め、地域の不安に具体的に応えること。今のイギリスに必要なのは、日常の安全を取り戻すための、その地道で目に見える仕事ではないだろうか。










コメント