イギリスの料理はなぜまずいといわれるのか?

イギリス料理がまずい、という評判は世界中に広まっています。旅行者の間でも、「イギリスに行ったけど食事はちょっと……」という声を耳にすることが多いのが現実です。この悪名高いイメージには、いくつかの歴史的・文化的な背景があります。

歴史的背景

産業革命以降のイギリスでは、食文化が大きく変容しました。都市化が進み、労働者階級が増える中で、簡便で保存のきく食品が求められるようになり、新鮮な食材や手間をかけた調理は徐々に避けられるようになりました。また、第二次世界大戦中および戦後の配給制度の影響で、多くの食材が不足し、味の多様性も大きく損なわれました。

気候と食材の問題

イギリスの気候は湿潤で寒冷なため、野菜や果物の種類が限られていました。こうした気候条件が食材の選択肢を狭め、結果として料理のバリエーションも限定されがちになりました。

保守的な食文化

イギリスの伝統料理は、比較的素朴で味付けも控えめな傾向があります。スパイスやハーブを豊富に使う国々と比較すると、どうしても「味気ない」と感じられてしまうことがあるのです。

しかし、このようなイメージが完全に正しいわけではありません。特に近年では、ロンドンをはじめとする都市部で多文化的な食文化が根付き、イギリス料理自体の質も大きく向上しています。

イギリスには料理学校がないのか?

「イギリス料理がまずい=料理を学ぶ環境がない」という誤解も多く見られますが、実際にはイギリスには優れた料理学校が数多く存在します。

有名な料理学校

イギリスには、プロのシェフを目指す人のための料理学校が複数あります。代表的なものとしては以下のような学校が挙げられます:

  • Le Cordon Bleu London(ル・コルドン・ブルー ロンドン校):フランス発祥の有名料理学校のロンドン校で、世界中から学生が集まります。
  • Westminster Kingsway College:ロンドンにある歴史ある調理専門学校で、プロフェッショナルな料理人育成に定評があります。
  • The Culinary Arts Academy:実践的なトレーニングを中心としたコースが用意されており、レストラン運営まで視野に入れた教育が行われています。

また、地域のカレッジでも調理・ホスピタリティ関連のコースが提供されており、資格取得も可能です。

イギリスの料理人に必要な資格とは?

日本のように「調理師免許」が国家資格として必要な国と異なり、イギリスでは基本的に料理人として働くための国家資格は存在しません。しかし、食品安全や衛生に関する資格を取得していることは、雇用において大きなアドバンテージとなります。

主な関連資格

  • Level 2 Food Safety and Hygiene Certificate:レストランやカフェで働くためには、食品安全と衛生管理に関するこの資格が一般的に求められます。
  • NVQ(National Vocational Qualifications) in Professional Cookery:これは職業訓練の一環として取得できる資格で、プロの調理人としてのスキルを証明するものです。

イギリスのシェフの給料事情

料理人の給料は、経験、勤務地、レストランの格、雇用形態などによって大きく異なります。以下はイギリスにおける一般的な給料の目安です(2024年時点のデータを参考)。

平均年収

  • 見習いシェフ(Commis Chef:年収 18,000〜23,000ポンド(約340〜440万円)
  • 中堅シェフ(Chef de Partie:年収 24,000〜30,000ポンド(約450〜560万円)
  • 上級シェフ(Sous Chef:年収 30,000〜40,000ポンド(約560〜750万円)
  • 料理長(Head Chef / Executive Chef:年収 40,000〜70,000ポンド(約750〜1,300万円)

ミシュラン星付きのレストランや高級ホテルで働く場合は、さらに高額な給料になる場合もあります。

その他の要因

  • ロンドン vs 地方:ロンドンでは生活費が高い分、給料も比較的高めに設定されている傾向があります。
  • 自営業シェフ:自らのレストランを持つシェフは、成功すれば年収100,000ポンド以上も夢ではありません。

現代のイギリス料理と多様化

近年では、イギリス料理はその「まずさ」のイメージを払拭しつつあります。多国籍文化の影響を受けた新しいフュージョン料理が多数生まれており、英国料理界でもスターシェフが台頭しています。

有名シェフの活躍

  • ゴードン・ラムゼイ(Gordon Ramsay:世界的に有名なイギリス人シェフで、数多くのレストランを展開しています。
  • ジェイミー・オリバー(Jamie Oliver:家庭料理の普及と食育活動で知られ、TV番組でもおなじみです。

こうしたシェフたちの影響もあり、イギリスの料理の質は確実に向上しています。

結論:イギリス料理の未来は明るい?

「イギリス料理はまずい」というステレオタイプは、もはや過去のものとなりつつあります。料理学校の充実、プロフェッショナルとしての訓練機会、多文化的な影響、そして新進気鋭のシェフたちの活躍によって、イギリスの食文化は今や世界でも注目される存在となっています。

給料水準も悪くなく、調理人としてのキャリアを積む場として、イギリスは決して悪い選択肢ではありません。今後のイギリス料理界のさらなる進化に期待が集まります。

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