イギリスで日常的にスーパーマーケットを利用していると、「なんとなく違和感を覚える買い物体験」が少しずつ蓄積されていく。その違和感の正体を突き詰めていくと、ある一つの構造的な問題に行き着く——表示された割引が実際には適用されていないことが異様に多いという現象だ。 「2つで£4」「今だけ£1引き」「会員限定価格」などの目を引くプロモーションが店内の至る所に貼られている。これらの表示は、確かに購買意欲をかき立てる。実際、そうした表示を見て「お得だ」と思い、商品をカゴに入れた経験のある人は多いはずだ。 しかし、いざレジで支払いを済ませてみると、表示された割引が反映されていないことに後から気づく。問題は、これが“たまにある”程度ではなく、あまりに頻繁に起こるという点である。 「割引されていない」ことに気づきにくいシステム設計 たくさんの品物を買ったとき、いちいちすべてのレシートを確認するのは正直言って面倒だ。特に数十ポンド分の買い物をした後に、数ポンドの誤差があるかどうかを見極めるには時間も手間もかかる。 ここに一つのカラクリがある。スーパーマーケット側は、客がそれに気づく労力を“見積もっている”ように見えるのだ。 割引の適用漏れが起きるのは、単なる人的ミスではない。なぜなら、これはどのチェーンでも、どの店舗でも、何度も繰り返し起こるからだ。POSシステム(販売時点管理システム)が商品情報を正確に読み取っていない、あるいはシステムへの割引登録が漏れている。こうしたミスがあまりに多く、そして修正もされないままになっている現状を考えると、これは「仕組みとしてわざとそうなっている」のではないかという疑念が拭えない。 「返金の手間」が消費者心理を巧みに突いてくる もし割引されていなかったことに気づいたとしても、それを訂正してもらうためには「カスタマーサービス」カウンターに行く必要がある。しかし、このカウンターがまた一筋縄ではいかない。 多くの店舗では、この窓口はタバコやギフトカード、返品処理なども同時に取り扱っており、常に行列ができている。返金処理をしてもらうために10分、15分と並ぶ必要があることもざらだ。しかも、そのやり取りもとてもスムーズとは言い難く、証拠となるレシートと商品、さらに時には表示の写真まで必要になることもある。 その面倒さゆえに、多くの消費者は「もういいや」と諦めてしまう。スーパーマーケット側はその“諦め”に依存しているのではないかとすら思えるのだ。 小さな額だからと軽視できない、積み重なる“無意識の損失” 「たかが£1〜2」と思うかもしれない。しかし、もしそれが毎週、何千人という客に対して起きているとしたら、どうだろうか? 一つの店舗だけでなく、全国のチェーン店すべてで同様の“割引未適用”が常態化しているとすれば、それは数百万ポンド規模の“余分な売上”になっている可能性がある。 そしてそれは、顧客からの“正規料金という名の誤請求”によって成り立っているという構図になる。 誰が責任を取るべきなのか? この問題の責任は、レジで働いているスタッフにあるわけではない。彼らはPOSシステムのデータを読み取り、スキャンされたままの金額を処理しているにすぎない。責任の所在はむしろ、店舗運営の根幹を担うマネジメント部門、そして割引情報を管理する本部のシステム設計にある。 つまり、これは現場の労働者の怠慢ではなく、構造的な問題なのである。 今後、私たちができること このような状況の中で、私たち消費者ができるのは、まず「疑ってかかる視点」を持つことだ。レジを通した後のレシートをなるべく確認し、疑問があればすぐに問い合わせる。また、買い物中に「これ本当に割引されているのか?」という意識を持っておくことも重要だ。 加えて、SNSなどを通じてこうした実例を共有することも有効だ。透明性が高まり、店舗側にもプレッシャーがかかる。企業としても、こうした小さな“不信感の積み重ね”がブランドイメージの毀損につながることをもっと真剣に考えるべきである。 「表示された価格で買える」——それは消費者が当然のように期待する権利だ。その基本すら確保されないまま、「面倒だから」「よくあることだから」と諦めてしまえば、いつの間にかそれが“普通”として定着してしまうだろう。 だからこそ、声を上げ、仕組みを問い、正当な価格で買い物をする意識を私たち一人ひとりが持つことが、今求められている。
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イギリスにおけるスーパーの立地と配送サービスの実態
日本と比較してイギリスで生活すると、日常生活のちょっとした不便さに気づくことがあります。そのひとつが、スーパーマーケットの立地です。日本では駅近や通勤路上にスーパーが数多く存在し、帰宅途中に気軽に立ち寄ることができます。しかし、イギリスでは駅から自宅までの間や職場と自宅との間にスーパーがあるというのは珍しく、多くの場合、スーパーは駅の近くになく、自宅からも遠いか、もしくは全く別の方向にあることが多いのです。 通勤路にないスーパーの現実 イギリスの都市計画や住宅街の構造の違いもあり、スーパーは住宅街の中に点在していることが多く、公共交通機関を降りた後、さらにバスを乗り継いだり、車を使わないと行けない場所にあります。特にロンドンを除く地方都市ではこの傾向が強く、駅から自宅までの徒歩圏内にスーパーがあるという人はむしろ少数派でしょう。 このような環境下では、仕事帰りにちょっと食材を買い足す、という日本では当たり前の習慣がなかなか実現しにくいのが現実です。その結果、買い物のタイミングが限られ、週末にまとめて車で買い出しに行くというスタイルが主流になっています。 配送サービスの普及と利用実態 この不便さを補う手段として、近年では大手スーパーマーケット各社がこぞって提供している配送サービス(home delivery)が非常に有効な選択肢となっています。Tesco、Sainsbury’s、Waitrose、Asda、Morrisons などの大手スーパーは、すべてオンラインでの注文と自宅配送サービスを展開しています。特に新型コロナウイルスの流行をきっかけに、このサービスの需要は急増し、現在では多くの家庭で当たり前のように利用されています。 配送サービスは、希望する時間帯を指定して予約し、その時間内に自宅まで買い物を届けてもらえるというものです。夜間帯や土日も指定可能で、仕事帰りや週末のスケジュールに合わせて柔軟に受け取ることができます。特に小さな子供がいる家庭や、高齢者、車を持たない世帯にとっては大変ありがたいサービスです。 また、料金も比較的リーズナブルで、配送料は時間帯によって異なるものの、1回の配送で1ポンドから5ポンド程度です。年間契約で定額の配送料プラン(Delivery Saver)を利用すれば、頻繁に利用する人にとってはさらに経済的です。 配送サービスのメリット 配送サービスのデメリットと課題 便利な配送サービスですが、実際に利用してみるといくつかの問題点が見えてきます。 まとめ イギリスでは日本と比べてスーパーの立地が不便であるため、買い物に対するアプローチが大きく異なります。しかし、その不便さをカバーする形で配送サービスが非常に発達しており、多くの人々の生活を支えています。特に交通手段に制限がある人にとっては、このサービスはまさにライフラインとも言える存在です。 とはいえ、時間の正確性や品質の問題など、まだまだ改善の余地も多く残されています。利用する際には、その特性をよく理解し、自分のライフスタイルに合った使い方を模索することが大切です。今後さらにテクノロジーや物流システムが進化すれば、より高品質で安定したサービスが提供されることが期待されます。 イギリスでの暮らしにおいて、スーパーとの付き合い方を工夫することは、快適な生活を送るための鍵のひとつなのです。
イギリスにコンビニがない本当の理由──文化・制度・生活様式から読み解く「不在の必然」
日本では全国どこでも、都市でも田舎でも、少し歩けば必ず見つかる“コンビニ”。おにぎりや弁当、ドリンク、スイーツなどの食品から日用品、さらには公共料金の支払い、宅配便の受け取り、チケット発券までこなす、現代社会のライフラインともいえる存在です。しかし、世界中を見渡してみると、この“なんでも屋”的な日本型コンビニがそのまま輸出されている国は驚くほど少なく、とくにイギリスでは「コンビニ文化」とは根本的に異なる流通・生活スタイルが根付いています。 この記事では、「なぜイギリスにはコンビニがないのか?」という疑問を深掘りし、その背景にある社会構造や文化的価値観、経済的な要因、そしてコンビニを導入しようとした場合に想定される障害についても掘り下げていきます。 1. すでに“それっぽい”店がある──Tesco ExpressやSainsbury’s Localの存在 まず「コンビニがない」と言っても、まったく類似の業態が存在しないわけではありません。イギリスにはTesco Express(テスコ・エクスプレス)やSainsbury’s Local(セインズベリーズ・ローカル)、Co-op Foodといった、いわゆる“小型スーパーマーケット”が都市部を中心に広く展開しています。これらは店舗の面積こそコンビニサイズに近く、飲み物やスナック、パンやサラダ、冷蔵・冷凍食品、さらには洗剤やトイレットペーパーなどの日用品まで揃っており、日本のコンビニと見た目や品揃えは似ています。 しかし、これらはあくまで**「縮小版のスーパーマーケット」**という位置付けであり、日本のようにサービスの多機能化は進んでいません。公共料金の支払い、宅配便の取り扱い、チケットの購入、ATM機能などの“暮らしの支援機能”は基本的に提供されておらず、あくまで“軽い買い物をする場所”という認識が一般的です。 この違いは単にサービスの数の問題ではなく、「店舗とは何をする場所なのか?」という価値観の差に根ざしています。 2. 24時間営業文化の欠如──「夜は休むもの」という国民性 日本のコンビニといえば、24時間年中無休。深夜の帰宅時でも、早朝の出勤前でも、ふらっと立ち寄れる利便性が最大の魅力です。しかし、イギリスではこの“24時間営業”がほとんど存在しません。 これは単なる経営方針の問題ではなく、イギリス社会全体の労働観と生活リズムに深く関係しています。イギリスでは「夜は家で休むもの」「働きすぎは良くない」という考えが一般的で、労働法制も比較的厳しく、夜勤労働を常態化することに対して社会的な抵抗感があります。実際、ヨーロッパ全体では過剰な営業時間を制限する動きが強く、「24時間営業」は効率ではなく“ブラック”と捉えられる傾向にあります。 また、深夜に出歩くこと自体が日本ほど一般的ではなく、防犯面の不安もあるため、「夜でも気軽に立ち寄れる店」というニーズそのものが存在しにくいのです。 3. 地理と住宅事情──「駅前文化」の欠如 日本では都市構造の特性上、鉄道の駅周辺に商業施設が密集し、その周囲に人が暮らす「駅前文化」が発達しています。多くの人が徒歩で移動し、仕事帰りや学校帰りに「ちょっと立ち寄る」買い物スタイルが定着しています。 一方、イギリスでは都市部を除けば、人々は車移動が基本であり、住宅地は郊外に広がり、駅前に人が密集するような構造は少ないのが現状です。駅を利用するのも通勤者の一部であり、徒歩圏内に多数の人が行き交うエリアというのは非常に限られています。 そのため、「ふらっと立ち寄れるコンビニがあると便利」という需要自体が、日本ほど強くないのです。 4. ネットスーパーと宅配文化の浸透 イギリスでは、ネットスーパーやフードデリバリーのインフラが非常に発達しています。特に**Ocado(オカド)**というオンライン専業のスーパーマーケットは業界の先駆けであり、注文から数時間〜翌日にかけて商品を自宅まで届けてくれます。 さらに、DeliverooやUber Eatsといったフードデリバリーアプリが日常化しており、レストランやカフェだけでなく、スーパーの商品まで配達してくれるサービスも一般化しています。 つまり、「買い物に行く」という物理的な行動の必要性そのものが薄れており、“コンビニに行く”必要がない社会構造が出来上がっているのです。 5. 買い物スタイルの文化的違い──“まとめ買い vs ついで買い” 日本の買い物スタイルは、仕事帰りに晩ご飯のおかずを買ったり、コンビニでちょっとしたスナックやドリンクを買ったりと、「こまめに・必要な分だけ」買うのが主流です。そのため、コンビニのような小型店舗が高頻度で利用され、成り立つ市場があります。 しかしイギリスでは、週末に大型スーパーで一週間分をまとめ買いし、冷凍保存するのが一般的です。冷蔵庫や冷凍庫も大型で、車で大量に買い込むスタイルが根付いています。 この「まとめて買う」という前提の文化では、「毎日立ち寄る店舗」の必要性が低く、コンビニの存在意義が薄れてしまうのです。 6. 商業規制・労働法の違い──小売店の制約 イギリスでは、日本に比べて商業施設の立地や営業時間に対する規制が多く、たとえば日曜日の営業時間規制が代表例です。大型店舗は日曜の営業が制限されており、午後から数時間しか開けられない場合もあります。 また、従業員の働き方に対しても法律上の制約が強く、長時間労働や深夜勤務を継続的に行うには厳しいハードルがあります。コンビニのように、少人数で24時間体制を回すスタイルは、人件費・制度面・倫理面すべてにおいて負担が大きいのです。 7. コンビニが“進出できない”理由──もし作ろうとしても… 仮に日本型のコンビニをイギリスに持ち込んだとしても、いくつかの大きな壁があります。 ■ 採算性の問題 上述の通り、夜間営業・高頻度利用のニーズがそもそも少ないため、日本と同じビジネスモデルでは採算が合わない可能性が高いです。日本では「一日数百人」が立ち寄る前提で成り立っているビジネスが、イギリスでは1/3以下になる恐れがあります。 ■ 人件費・維持コストの高さ 最低賃金が高く、しかも夜間勤務に追加報酬が必要な国では、コンビニが成立するためにはかなりの売上高が必要です。人件費を削ろうとすると労働組合や社会の反発が強くなります。 ■ 顧客行動の壁 そもそも人々の行動様式が「出かけて買う」よりも「配達してもらう」方向にシフトしている以上、新たな店舗型業態を開拓するのは簡単ではありません。 結論:コンビニが「存在しない」のではなく「必要とされていない」 以上のように、イギリスにコンビニが根付かないのは単なる未導入や経済の問題ではなく、文化・社会構造・制度の複合的な違いに起因しています。 イギリスにはTesco Expressのような“それっぽい店”は存在しますが、それ以上の多機能性や24時間営業を求める社会的なニーズが希薄である以上、日本型コンビニをそのまま導入しても受け入れられる余地は限定的です。 …
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ロンドンでの理想的な新生活を始めませんか?
ロンドンにお住まいの方、またはこれからロンドンに移住を計画されている方へ朗報です!英国での生活を豊かに、そして快適にするための素晴らしいお部屋をご紹介します。駐在員の方にもぴったりの2ベッドルームアパートメントが、人気のエリア フィンチリーセントラル に登場しました。 魅力的なロケーション:生活の利便性と静けさを両立 この物件が位置するのは、日本人に特に人気のあるフィンチリーセントラル(ポストコード:N3)。地下鉄ノーザンラインのフィンチリーセントラル駅まで徒歩わずか3分 という抜群のアクセスを誇ります。この路線を使えば、ロンドン市内の主要エリアへもスムーズに移動が可能です。さらに、スーパーマーケットや商店街も徒歩2分 以内という至便性がありながら、アパートは少し奥まった場所に位置しているため、喧騒から離れた静かな環境を実現しています。 完璧な住環境:家具付きで即入居可能 「引っ越しは大変」と思う方もご安心ください。この物件は 家具がすべて完備 されており、スーツケース一つで即座に快適な生活をスタートできます。リビングルームやベッドルームにはモダンで機能的な家具が揃っており、日常の生活に必要なものはすべて揃っています。加えて、キッチンには最新の調理設備が整っており、料理好きの方も大満足間違いなしです。 気になる賃料と条件 写真と物件の詳細について 本ページに掲載されている写真は同じ建物内の別のお部屋を撮影したものですが、間取りはまったく同じ です。そして、実際の物件の内装はさらにモダンでスタイリッシュ!実物をご覧いただければ、そのクオリティにきっとご満足いただけるはずです。 フィンチリーセントラルの魅力 フィンチリーセントラルは、ロンドン北部で特に人気の高いエリアです。日本人コミュニティも充実しており、和食レストランやアジア系食材店、日本語対応のクリニックなども揃っています。また、周辺には広々とした公園が点在しており、週末にはリラックスした時間を楽しむこともできます。加えて、学校や教育機関も充実しているため、お子様がいらっしゃるファミリーにもおすすめの地域です。 お問い合わせ この素晴らしい物件に関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください!担当不動産会社:James Kei London日本語対応スタッフが丁寧にサポートいたします。 今すぐご連絡ください! ロンドン生活をさらに充実させるために、理想的なお部屋を見つけましょう。この魅力的な物件は人気のため早めの完売が予想されます。少しでも気になる方は、今すぐお問い合わせください!
家族連れに人気のエリア「フィンチリー」にあるセミディタッチハウス
今月のおススメ物件ですが、フィンチリーセントラルにある3ベッドルーム・セミディタッチハウスです。フィンチリーセントラルといえばロンドン北部にある大きな日本人コミュニティエリアとして知られています。日本人が多く住む一番の理由は治安がいいということです。ロンドン西部のアクトン、イーリングエリアは全日制の日本人学校があるという理由で多くの日本人が住んでいますが、学校がなければ住みたくないというひとが多いという噂もよく耳にします。さて、おススメの物件ですが、フィンチリーセントラルの閑静な住宅街にあり、近くにビクトリアパークという大きな公園(テニスコートあり)があり、夏の天気の良い日は家族連れでにぎわいます。最寄りのフィンチリーセントラル駅までは徒歩約12分。最寄りのスーパーマーケット「TESCO」までも徒歩10分と立地的には問題ありません。最寄りの小学校は評価の高い「Manorside Primary School」となっております。 物件名 Oakfield Road 所在地 Oakfield Road, Finchley Central, London N6 家賃(月) £3,500 デポジット 5週間分 間取り オープンプランキッチンのダイニング兼リビングルーム、来客用のダイニングルーム、寝室が3つ、バスルーム 浴室 1つ、バスタブとシャワーが別 トイレ 2つ 面積 128㎡ 家具 有 駐車場 有 最寄り駅 Finchley Central(northern line) 最寄り小学校 Manorside Primary School Zone 4 最寄りスーパー TESCO
最近「クライシス」という言葉をよく聞くが
「クライシス(Crisis)」日本語に訳すと「危機」という言葉をコロナパンデミックが始まってからほぼ毎日のようにテレビやネットで見かけるようになりました。英国のEU離脱後からと言ったほうが正しいでしょうか。本日は、英国で過去3年以内に起こったクライシスについて紹介します。 長距離大型トラック運転手のクライシス 簡単に説明すると、長距離大型トラック運転手の大半は東ヨーロッパからの出稼ぎで成り立っていたのだが、英国のEU離脱後に、英国の貨幣価値が下がった影響で東ヨーロッパの人たちが英国から自国へ引き揚げてしまいました。もともと、労働環境の悪い長距離大型トラック運転手という職は英国人には人気がなく、運転手の数は十分だったわけではありませんでした。それが英国のEU離脱後から運転手不足問題が深刻化し、さらにコロナパンデミックが追い討ちをかける形となりました。食料のほぼ50%を輸入に頼る英国にとってはかなり深刻な問題で、一時期スーパーの野菜コーナーから野菜が消えるという事態にまで発展しました。 PPE(個人防護用具)クライシス コロナパンデミックは全世界で起きたことではありますが、英国ではコロナパンデミックが起きた後にいろいろな問題が発生しました。そのうちの1つがこのPPE(個人防護用具)が不足するというクライシスでした。日本でも薬局の店頭からマスクが消えて、ネット上で高値取引されるというのがニュースになっていましたが、英国では病院のスタッフが使うPPEが不足事態となり、医師や看護師が使い捨てのマスクや手袋を使いまわすという状態になり、多くの医師や看護師が命を落とす結果となってしまいました。このクライシスの裏側には政治家の利権問題が大きくかかわっていたのは言うまでもありません。ボリス・ジョンソンが人命よりもお金を重んじる人間だというのが垣間見られた瞬間でもあります。 エナジー・コスト・クライシス ウクライナ戦争が起きてからのガソリン、ガス、電気代の急激な値上がりが、国民の家計をひっ迫しているという話です。英国はロシアのガス供給にそんなに頼っていないので影響ないと思われがちですが、ロシアからたくさんのガス供給を受けていた国々が英国のガスの供給元(ノルウェー、カタール、USなど)からガスを購入することになり供給が一気に加速したのです。ロシアからのガスの供給がなくなったから、ガスは使いませんとはなりません。そのため、ガスがある国に注文が殺到するわけで、ガス所有国がそれを断る理由はありません。需要が増え、価格が上がるのは自然の摂理といえるでしょう。ただ、英国では石油会社、ガス会社が過去最高益をただき出してバッシングを浴びていますが、石油会社、ガス会社が利益を上げているのは、各会社の投資部門が大きな利益を上げているというだけで、一般市民から高い公共料金をせしめて利益を上げているわけではありません。バッシングされる相手はいまだに30-40%の税金をガソリンにかけている英国政府なのではないでしょうか。 賃貸物件クライシス 賃貸物件クライシスとは、賃貸物件の件数が昨年にくらべ3分の1に減少したことで、家賃が急激に上昇してしまったことです。ロンドン市内の平均賃貸価格は17%も上昇しました。賃貸物件もガソリン、ガスと同じで原理で供給が急激に減り、需要は去年と変わらないので、家賃が上昇してしまうのは当たり前の話です。ただ、問題はなぜ賃貸物件が減少したのかということです。ある調査によりますと、今年の3月~6月にかけて約94%の賃貸物件のオーナー(英国ではランドロードと呼ばれています。)が物件の貸し出しを辞めて売りに出したという報告がされています。理由は、税制の改正や中央銀行の金利引き上げなどで不動産投資自体にうまみがなくなってしまったことでしょう。 住宅ローン・クライシス 賃貸物件クライシスとつながってきますが、英国中央銀行が利上げに踏み切ったことで、住宅ローンの金利も今後上がってきます。通常は2年、5年の固定金利で住宅ローンを組むのが一般的で、今までは安い金利の人だと2%、通常で3.5%でした。それが今後ローンの金利が6%ぐらいに上がることになりますので、月々の返済額が約4%上がります。人によっては400~500ポンドの出費となり、住宅ローンを払えずに銀行に家をとられてしまう人が出てくることも考えられます。さらに、これから物件を買おうと考えていたひとが金利の引き上げに伴い、既に通っていた住宅ローンの融資実行が取り消しになる事態も発生しています。9月下旬から10月上旬にかけ、約2000件の住宅ローンの融資実行が取り消しになりました。前の首相リズ・トラスのせいだというマスコミもいますが、本当の理由は金利の引き上げです。 フード・コスト・クライシス 単純に食料品の値段がとにかく上がって一般家庭の家計をひっ迫している状態です。英国はとにかく昔から物価が高いということを言われていましたが、ここ10年ぐらいはそんなに物価が上がっているという実感はありませんでした。しかし、今年に入りウクライナ戦争が始まってからは、食料品の値上げに歯止めがかかりません。先月の食料品だけに関しての値上げ率は17%と、異常な値上がり率になっています。英国には、フードバンクという生活保護団体が低所得者向けにスーパーの食料品を無料で配布するサービスが普及しており、現在そのフードバンクを利用している人の数は英国内で217万いると言われています。 今後どうなる? 英国に現在住まわれている方、これから英国に来る予定の方がいちばん知りたいのは、今後英国はどうなっていくのか、ではないでしょうか。正直わかりませんが、このまま政府が何もしなければ、状況がよくなることはないと思います。英国はアメリカと同じで、金融の引き締めという道を選んでしまったため、もとの金融緩和に戻ることは、まず、ありえないでしょう。金融緩和がないということは、減税も恐らく行われないでしょう。ただ、底辺の人たちを見捨てないというのが英国のいいところではあるので、金融支援的なことは要所要所で行われることになるでしょう。英国にいれば、飢え死にすることはないということです。
英国で何が起きている?
住宅ローンの却下、金利の見直し 英国でも住宅ローンを組んで家を購入するのがスタンダードになっておりますが、その住宅ローンが組めない状況になっています。理由は、公定歩合の引き上げ、英国ポンドの下落です。どういうことかと言いますと、数週間前に銀行から住宅ローンは承認がおりますと言われて、いざ物件を購入となった段階で住宅ローンを申請していた銀行から「待った」がかかってしまったのです。基本的に、英国の中央銀行が将来的に金利を6.85%まで引き上げると発表したものだから、住宅ローンを販売している各銀行はあわてふためいているといった状況です。晴れているときは傘を貸してくれて、雨が降ったときには傘を貸してくれない、日本の銀行も英国の銀行も同じです。 公共料金の値上げ 英国では、10月1日より電気、ガスの料金が上がります。実際のところロシアによるウクライナへの軍事侵攻の翌月あたりから電気、ガス料金はすでに上がっています。これが10月1日からさらに上がるというのですから、国民はこの冬凍えながらの生活が強いられてしまうのでしょうか。でもご安心ください、公共料金の値上げが影響するのは全国民ではありません。普通に電気、ガスを利用しているひと、年間1,500ポンドぐらいおさまっている人は去年と同じように利用しても支払い金額がほぼ変わりません。ただ、ヘビーユーザーに関しては年間の料金が2,500ポンドまで上がる可能性はあります。ちなみに電気、ガス料金の上限はこれからの2年間は政府のサポートによって2,500ポンドが上限と設定されましたので、それを超えることはないということです。ただ、今すでに年間2,500ポンド以上払っているヘビーユーザーには適応されませんのでご注意ください。目安ですが、電気、ガス両方の使用量が年間12,000キロワット(核家族の平均使用量)が境目で、これより少なければさほど影響はないと思います。さらに、10月からの6カ月間、政府から合計400ポンドの援助金が受けられます。公共料金に関してはそんなに心配する必要はなさそうですね。 押し寄せるインフレの波 現在、英国内では全国民の約15%にあたるひとがフードバンクを利用しています。 フードバンクとは日本でも最近は普及してきているようですが、ここ英国では低所得者など国からの生活保護を受けているひとは、定期的に食料品が無償で提供される制度のことです。 では食料品はいったいどのぐらい値上がりしたのでしょうか。去年2021年の9月の値段に比べ、今年2022年の9月は10.6%も上昇しました。そのため、なんと国民の50%にあたる人々が今まで利用していたスーパー(Waitrose、Mark and Spencer、Sainsbury’s)はやめディスカウントスーパー(ALDI、LIDL、ASDAなど)を利用し始めています。専門家によると、食料品の値上がりは今年いっぱいは続き、2023年の年初から少しずつ下がるのではと予想されていますが、実際のところは神のみぞ知る。 食料品は上がりましたが、酒類はそんなに上がっていないのは私の思い込みなのでしょうか。英国にお住いの皆様からのコメントお待ちしております。
ロンドンのスーパーで買えるもの、買えないもの
コロナウィルスの感染拡大が未だ収まる気配のないロンドンでは、多くの人が外食を控えているため、自宅での自炊が中心の食生活になっています。そもそも外食はカロリーも高く健康上あまりよくないので、それはそれでいいことではあります。ロンドンのスーパーでは、何が売っていて何が売っていないのでしょうか。全商品は照会できませんが、私の興味の引いたものを写真付きで紹介します。今回はSainsbury’sという一般的なスーパーを取り上げました。 野菜、果物コーナー(一部) 年中スイカが売っています。その上はパイナップル。黄色いのはメロン。 ロンドンといえばジャガイモ 大きなナス、漬物にはできません。 一見ネギのように見えますが、リークという野菜。味は少し甘めです。 野菜ですが、基本的なもの(トマト、キャベツ、ニンジン、マッシュルーム、セロリ、キュウリ、白菜など)は売っています。残念ながら長芋、レンコン、タケノコ、ゴボウ、こんにゃくなどはスーパーでは売っていません。大根はたまに見かけます。 お肉コーナー(一部) 豚肉、ばら肉とかは売っていないので生姜焼きとかできません。豚の角煮はできます。 鶏肉は、胸肉、もも肉が多く、皮付きの鶏肉はあまり見かけません。 鳥の丸焼きは週1ペース 牛、豚、鳥、羊の肉が売っておりますが、薄切り肉はありません。モツ、牛すじ、牛タンなどは売っていません。レバーはたまに見かけます。 乳製品(一部) チーズはとても美味しい、料理に使ってもいいし、ワインにも合います。日本で売っているようなプロセスチーズはあまり見かけません。 紅茶に牛乳沢山入れるのと、朝食は基本シリアルだから牛乳の消費量がすごい ジュース、飲み物 アップル、オレンジの独占市場 アジア、日本食コーナー 少ないですが、日本の食材も少し陳列されています。 キューピーマヨネーズとお好みソースの間にある謎のソース。 日清のヤキソバのパッケージが少しオシャレ。 思わず買ってしまう出前一丁。 カツオだし、本だし、昆布だし、中華スープの素などは売っていません。 シリアルコーナー とにかく種類が多いのがシリアル。朝食の代名詞です。日本でいう納豆ご飯ですかね。 パンコーナー(一部) いろんな種類のパンはありますが、調理パンや菓子パンはほとんど見かけません。 お酒コーナー(一部) アサヒスーパードライが、光っています。中ビンと小ビン。 私のお気に入りのロンドンのビール、カムデンヘルズ。 山梨県産の純日本ウィスキー天雀がロンドンで買えます。 お酒コーナーでは、イギリスのエールをはじめ、ヨーロッパのビール、ワインの種類は豊富でフランス産、イタリア産、オーストラリア産が特にお勧めです。 今回は鮮魚コーナーを紹介しませんでしたが、魚はサーモン、タラ、サバ、イワシなどが売っています。新鮮なお肉、魚を売るコーナーがコロナウィルスの影響で閉鎖されているため、再開しましたら写真もしくはムービーをアップします。