イギリスのレストラン、日替わりクオリティ?味のムラとチェーン店の“当たり外れ”問題を深掘りする

イギリスに滞在したことのある人なら、おそらく誰もが一度は感じるであろう「前と味が違う……」という違和感。それは、単なる記憶違いではなく、現実的に頻発している現象だ。イギリスのレストランでは、同じ店舗、同じ料理でありながら、味や仕上がりが日によって大きく異なることが少なくない。この記事では、そんなイギリス外食文化における味のムラ、チェーン店の当たり外れ現象について、背景や理由を掘り下げていく。

日替わりレストラン?同じメニューなのに味が違う

イギリスのレストランでは、同じ料理を頼んだはずなのに「今回は妙にしょっぱい」「パスタが芯を残していて硬すぎる」など、毎回“別物”が出てくると感じることがある。なぜこうした事態が起こるのか。

第一の理由としてよく指摘されるのが、スタッフの流動性だ。イギリスでは飲食業界の労働市場が非常に流動的で、スタッフが短期間で入れ替わることが珍しくない。短期雇用や留学生、移民労働者など、多様な背景を持つ人々がキッチンやフロアに入れ替わり立ち替わり従事している。

その結果、同じレシピであっても調理担当者の経験値や解釈、作業スピード、食材の扱い方に違いが生じる。加えてマニュアルの不徹底や教育のばらつきも拍車をかける。特に個人経営ではなく大手チェーン店であっても、調理のばらつきが目立つのはこのためだ。

「同じチェーンなのに味が違う」現象の正体

日本では、チェーン店といえば「どの店舗でも同じ味」が常識だ。マニュアル化が徹底され、誰が作っても大差ないよう工夫されている。しかしイギリスでは、この“チェーン神話”が通用しない。

実際、「○○(チェーン名)のこの支店は美味しいけど、あそこのは正直外れ」という口コミは日常的だ。こうした味のばらつきは、チェーン店であるにもかかわらず、店舗ごとの裁量が大きいこと、そしてキッチンのオペレーションに統一感がないことが原因とされる。

バイトやシェフの教育方針、店舗ごとのマネージャーのマネジメント力、さらには店舗の立地によって人材確保の難易度も異なる。そのため、同じチェーンブランドでも支店ごとに全く異なる雰囲気や味、サービス体験となる。

これは裏を返せば、チェーン店にも関わらず“お気に入りの一店舗”を見つける楽しさがあるということでもある。ただし、その店舗が閉店したり、スタッフが総入れ替えになると、また味やサービスが変わる可能性があるのが悩ましいところだ。

繁忙期は要注意──週末や祝日は“地雷率”が上がる

イギリスのレストランにおける“味のムラ”は、曜日や時間帯によっても変動する。特に週末や祝日などの繁忙期には、スタッフがてんてこまいになることで、調理・接客のクオリティが大きく低下することがある。

忙しい時間帯には、経験の浅いスタッフが急きょキッチンに投入されたり、調理工程が雑になったり、盛り付けが適当になったりする。焼き加減の雑なステーキ、べちゃっとしたフライドポテト、味付けのバランスが崩れた一皿……。さらにフロアでは、オーダーの取り違え、提供の遅延、ドリンクが来ないなどのトラブルも頻発する。

逆に、平日のお昼を過ぎた頃や開店直後など、比較的空いている時間帯には、驚くほど丁寧で美味しい料理が提供されることもある。時間帯によって店の実力が如実に変わるというのも、イギリス外食文化の“味わい深さ”の一つかもしれない。

経験値が物を言う「職人の差」も影響

味のブレの背景には、調理人一人ひとりのスキルや姿勢の違いも大きい。イギリスの飲食業界では、料理学校を出たプロフェッショナルもいれば、全くの未経験から現場に放り込まれた人も同じキッチンに立っていることがある。

そのため、例えば「カレーライス」や「シーザーサラダ」のような単純な料理でも、見た目も味もまるで別物になることがある。プロ意識の高いスタッフが担当すれば、プレゼンテーションも美しく、味のバランスも絶妙な一皿に仕上がる。一方で、やる気のないスタッフが雑に盛り付けた場合、同じ食材でも「これが同じ料理?」と疑いたくなるほど差が出るのだ。

外食文化そのものが「安定」を求めていない?

そもそもイギリスでは、日本のように“いつでもどこでも同じクオリティ”を期待する価値観が、外食文化の根底にあまり存在しないのかもしれない。むしろ、「今日は運が良かった」「まあ今日はハズレだったけど仕方ないね」といった“気軽さ”が前提となっている。

この背景には、外食そのものの位置づけが日本と異なることも関係している。日本では、コンビニやファミレス、牛丼チェーンなど、低価格で安定したクオリティの食事が手に入る。一方イギリスでは、そもそも選択肢が限られ、価格帯も高め。その分、味やサービスに一貫性を求めにくく、「今日はどんな体験になるだろう」という楽しみ方が主流だ。

サバイバル術:イギリス外食を楽しむコツ

では、そんな“味のギャンブル”状態のイギリス外食をどう楽しめばいいのか。現地在住者やリピーターが実践している“サバイバル術”をいくつか紹介しよう。

  • 口コミサイトや地元民の声をチェックする:TripAdvisorやGoogleレビューなどの評価を参考にしつつ、実際の現地民のSNS投稿などを探るのもおすすめ。
  • 支店ごとの評判を調べる:チェーン店であっても、特定の支店が高評価ならそこを狙う。逆に低評価の支店は避ける。
  • 時間帯を選ぶ:混雑する時間帯を避け、平日のランチタイムやアイドルタイムを狙う。
  • メニューの“安全圏”を知る:その店で比較的失敗の少ない定番メニューを見つけておくと安心。

まとめ:味のブレも文化のうち

イギリスの外食における味のムラやチェーン店の当たり外れは、確かに悩ましいが、同時に「今日はどんなものが出てくるかな?」というワクワク感にもつながる。味のブレがあるからこそ、“当たり”を引いたときの満足感は大きい。旅行者にとっては、ちょっとしたスリルのある体験。現地民にとっては、それも含めた日常の一部。

期待しすぎず、けれども好奇心を持って臨む。それが、イギリスでの外食を最大限に楽しむコツなのかもしれない。