人口は増えるのに、赤ちゃんは減る――イギリスで進む「静かな高齢化」

ロンドンの街を歩けば、イギリスが人口減少に悩んでいる国には見えないかもしれません。実際、英国の人口は今後も増えると予測されています。それでも、国内で生まれる子どもは減っています。「人口が増える」と「若い世代が増える」は、同じことではないのです。

出生数は約半世紀ぶりの低水準

最新の確定統計によると、イングランドとウェールズで2025年に生まれた子どもは58万5,396人。前年から1.6%減り、1977年以来の少なさとなりました。合計特殊出生率は1.39です。日本の2025年の1.14より高いものの、英国でも出生数の減少が続いています。なお、1.39はイングランドとウェールズの値で、英国全体の値ではありません。

日本にいる私たちにとって、この数字が気になるのは、イギリスにも「子どもを持ちたいが、生活の見通しが立たない」という問題があるからでしょう。

家、収入、育児費用――決断を難しくするもの

子どもを迎えるには、住まいと家計の余裕が要ります。英国の民間賃貸住宅の平均家賃は、2026年8月時点で月1,400ポンド。これは住宅全体の平均で、若い世代が皆この額を払っているわけではありません。それでも、住居費が家族計画を考える際の重い条件になっていることは想像できます。

英国の研究機関Resolution Foundationは、25~29歳の大卒ではない女性で、実子のいない人の割合が2011年の33%から2023年には54%へ上がったと報告しています。同じ時期に、パートナーとの同居や持ち家取得も難しくなりました。この数字だけで「家賃が出生率を下げた」と断定はできませんが、住まいと経済的な安定が出産の時期に関わる重要な背景と考えられます。調査では、まだ子どもを持っていない理由として経済事情を挙げる人もいます。

育児費用にも注意が必要です。イングランドでは対象となる働く親に保育料の支援がありますが、利用には条件があり、基本となる無料枠は年間38週です。対象外の家庭では、2歳未満の子を週の一部だけ保育施設に預ける費用が平均週189ポンドと報告されています。仕事を続けながら子どもを育てられるかは、支援の対象になるかどうかでも変わります。

人口が増えても、高齢化は進む

英国の人口は、2024年の約6,930万人から2034年には約7,100万人に増えると予測されています。増加を支える主な要因は海外からの移住です。一方、同じ予測では16歳未満の子どもは約1,260万人から1,100万人へ減り、年金支給開始年齢以上の人は約1,240万人から1,420万人へ増えます。

高齢化はその先も続きます。85歳以上の人口は2024年の約175万人から、2049年には約360万人になる見込みです。医療、介護、年金をどう支えるかは、英国でも一段と身近な課題になります。ただし、これらは現在の出生や移住などの見通しに基づく予測であり、将来が確定した数字ではありません。

日本から見ると、英国は出生率も人口の動きも異なる国です。それでも、住まい、仕事、育児の条件が「子どもを望む人の選択」に影響するという問いは共通しています。英国のにぎやかな街並みの奥で進む変化は、日本の少子高齢化を考えるうえでも見過ごせません。

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