イギリスの肥満率と、日本人がイギリスで気をつけるべき食生活

はじめに

近年、グローバル化が進む中で、日本人の海外移住や長期滞在が一般的になってきました。中でも、イギリスは語学留学、ビジネス、国際結婚など様々な理由で多くの日本人が生活している国の一つです。歴史と伝統に満ちたイギリスですが、その一方で現代的な生活習慣や食文化には、日本と大きなギャップがあります。特に「食生活」は健康に直結するため、移住者にとって慎重に向き合うべきテーマです。

この記事では、まずイギリスの肥満率の現状を解説し、その背景にある社会的・文化的要因を探ります。そして、日本人がイギリスで健康的な生活を送るために、具体的にどのような点に気をつけるべきかを詳しくご紹介します。イギリスに住んでいる方やこれから滞在を予定している方にとって、日々の生活に役立つ情報をお届けします。

イギリスの肥満率の現状と背景

肥満率の統計

イギリスの肥満率は、欧州の中でも非常に高い水準にあります。イギリス国家統計局(ONS)や国民保健サービス(NHS)のデータによると、成人の約64%が「過体重または肥満」とされており、そのうち28%以上が明確な「肥満(Body Mass Index=BMIが30以上)」に分類されています。

これは、フランスやイタリアなど他の欧州諸国と比較しても高く、特に先進国の中でも深刻な状況です。さらに懸念されるのは、肥満の若年化が進んでいる点であり、10~11歳の子どもの約20%が肥満状態であるという調査結果もあります。

背景にある社会的要因

肥満の原因としてよく挙げられるのは、「高カロリー・高脂質の食生活」「運動不足」「ストレス過多な生活」などですが、それらを生み出す背景には以下のようなイギリス特有の社会的・文化的要素が存在します。

ファストフード文化の浸透

イギリスの街を歩くと、ハンバーガー店、チキン専門店、ピザチェーン、フィッシュ&チップスなどのファストフード店が目立ちます。中でも「テイクアウェイ(持ち帰り)」文化が非常に発達しており、手軽に安くカロリーの高い食事を済ませられる環境が整っています。

食育の不足

イギリスでは、日本のように家庭で「食を学ぶ」文化が比較的弱い傾向があります。共働き世帯が多く、親が子どもに料理を教える時間が少なかったり、学校給食がジャンクフード中心だったりすることで、若い世代の食習慣が偏ることもあります。

運動不足

都市部では徒歩や自転車よりも車移動が多く、日常的な運動量が少なくなりがちです。また、長時間のデスクワークやテレビ視聴など、座りっぱなしの生活スタイルも肥満を助長しています。

日本人がイギリスで気をつけるべき食生活のポイント

イギリスに住む日本人が陥りやすい食の落とし穴と、その対策について具体的に解説します。

1. 食事のボリュームとカロリーに注意

イギリスのレストランやパブで提供される料理は、日本人の感覚からすると「一皿の量がとにかく多い」と感じることが多いでしょう。特にステーキ、フライドポテト、グラタンなどは一皿で1000kcalを超えることも珍しくありません。

対策ポイント:

  • 最初から「シェア」を前提に注文する
  • ハーフサイズや前菜メニューを活用する
  • 残した分は持ち帰る(テイクアウト容器は多くの店で無料)
  • 自炊を中心にし、外食は週に1~2回に抑える

2. 野菜不足のリスク

イギリスの一般的な家庭料理や外食メニューでは、野菜の量が少なめです。サラダもメインディッシュの「添え物」として扱われがちで、日本人のように「野菜中心の一汁三菜」という食スタイルは稀です。

対策ポイント:

  • スーパーで冷凍野菜やサラダパックを常備
  • スープやカレーに野菜を多めに入れて調理
  • 味噌汁を活用(乾燥わかめ、豆腐、白菜などを加えると栄養バランス◎)

3. 加工食品の塩分・糖分に注意

イギリスでは、冷凍食品・レトルト・缶詰などの加工食品が多く流通しています。こうした食品は便利な反面、塩分や糖分、保存料が多く含まれているため、頻繁に摂取すると高血圧や糖尿病のリスクが高まります。

対策ポイント:

  • パッケージの「Nutrition Facts」をチェック
  • “Low salt”や“Reduced sugar”表示を選ぶ
  • パン類はシンプルな全粒粉(wholemeal)を選ぶとベター
  • 甘いヨーグルトやシリアルは無糖のものに切り替える

4. 間食と飲み物の習慣

イギリスのスーパーでは、チョコレートバー、スナック菓子、ビスケットなどがレジ横に大量に並べられています。また、紅茶文化が根強く、お茶と一緒に甘いお菓子を食べる「ティータイム」の習慣があるため、間食が習慣化しやすいです。

対策ポイント:

  • 間食はフルーツやナッツなど自然素材に置き換える
  • 甘い飲み物の代わりに、緑茶や麦茶を持参
  • “1日1おやつ”ルールを作ると過剰摂取を防げる

5. 外食の頻度と内容

パブ料理やレストランの料理は高カロリー・高脂質なメニューが中心です。特に「サンデーロースト」や「イングリッシュブレックファスト」など、人気の伝統料理は脂や炭水化物が多く、頻繁に食べると健康リスクが高まります。

対策ポイント:

  • 和食中心の自炊を心がける
  • ロンドンなど都市部では日本食材店(ジャパンセンターなど)を活用
  • 「和洋折衷」のアレンジ料理で飽きない工夫を
  • 現地の友人との外食時も「サラダ+メイン」「スープのみ」など自分の選択を貫く

イギリスでの健康的な食生活の実践例

自炊で実現できる簡単メニュー例

  • 鮭の塩焼き+味噌汁+ご飯+ほうれん草のお浸し
  • 野菜たっぷりチキンスープ+玄米
  • 焼きそば(野菜多め)+ゆで卵
  • 納豆+卵かけご飯+味噌汁(冷凍豆腐や乾燥野菜を活用)

スーパーで手に入るおすすめ食品

  • 冷凍ミックスベジタブル(煮物・炒め物に便利)
  • サラダリーフ(袋入りですぐ使える)
  • tofu(アジア食材コーナーにあることが多い)
  • 玄米・ジャスミンライス(健康志向のスーパーに多い)
  • miso paste(日本食材店、またはアジア系スーパーで入手可)

おわりに:イギリスで「健康に暮らす」という選択

イギリスでの生活は、日本とは異なる環境・文化の中で暮らすことになります。その中で、食生活は日々の健康を左右する重要な要素です。イギリスの肥満率の高さや食文化の傾向を理解した上で、自分の生活スタイルを調整することが、長期的な健康と快適な海外生活のカギになります。

自炊や食品の選び方を工夫することで、日本人らしい「バランスの取れた食生活」をイギリスでも再現することは十分に可能です。食べることを楽しみつつ、自分の体と向き合う時間を持ち、心身ともに豊かなイギリス生活を送りましょう。

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