
新型コロナウイルスの影響により、イギリス経済は記録的な不況に陥りました。特にロックダウンが実施された2020年3月23日以降、多くの大企業が大規模な人員削減を発表し、多くの人々が職を失う事態となりました。この記事では、どの業界が最も影響を受けたのかを詳しく見ていきます。
最も大きな影響を受けた業界
1. 小売業(リテール)
小売業は最も深刻な影響を受けた業界の一つで、全体の約4分の1の雇用削減が発生しました。有名企業のマークス&スペンサー(Marks & Spencer)、デベナムズ(Debenhams)、ブーツ(Boots)、ジョン・ルイス(John Lewis)などが数千人規模の解雇を発表しました。また、オアシス(Oasis)やウェアハウス(Warehouse)といった人気ブランドは完全に消滅しました。
2. ホスピタリティ(飲食・宿泊)
レストランやホテル業界も深刻な打撃を受けました。特に、ピザ・エクスプレス(Pizza Express)やプレット(Pret)などの有名飲食チェーンが、多数の店舗閉鎖と人員削減を行いました。観光客の減少や外出制限により、宿泊業も大きなダメージを受けました。
3. 航空業界
世界的な移動制限と旅行需要の激減により、航空業界は壊滅的な影響を受けました。ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)は2020年4月28日に12,000人の解雇を発表。パイロット、客室乗務員、手荷物係など、多くの従業員が職を失いました。
4. その他の業界
自動車産業、ガラス製造、フェリー運航、石油会社など、幅広い業界が需要の急減により影響を受けました。
失業率の推移と過去のデータ
コロナ以前のイギリスの失業率は4%以下と、1970年代以来の低水準でした。しかし、2021年には7.75%まで上昇すると予測されています。
過去の失業率のピークを見てみると、
- 1984年(景気後退):12%(過去最悪)
- 1990年代初頭(バブル崩壊):10%以上
- 2011年(金融危機後):8%以上
特に16~24歳の若年層は影響を受けやすく、過去の危機時には20%以上が失業状態になったこともあります。
現在の失業率は5.1%(2020年10月~12月)で、2016年以来最も高い水準に達しています。ただし、政府の雇用維持制度(furlough scheme)により、さらに深刻な失業の増加は一部抑えられています。
また、仕事を探していない人は失業者としてカウントされないため、公式の失業率以上に影響を受けている人が多いと考えられます。
地域別の影響
失業手当を受給している人の割合が特に高い地域は以下の通りです:
- ブラックプール(Blackpool)
- サネット(Thanet)
- バーミンガム(Birmingham)
- ウルヴァーハンプトン(Wolverhampton)
- ミドルズブラ(Middlesbrough)
- バーキング&ダゲナム(Barking and Dagenham)
- ハーリンゲイ(Haringey)
これらの地域では、特に雇用機会の少ない人々が影響を受けやすくなっています。
イギリス経済全体への影響
2020年、イギリスのGDP(国内総生産)は前年比-9.9%の縮小を記録しました。これは過去300年間で最悪の経済収縮と考えられています。
四半期ごとのGDP推移:
- 2020年1月~3月:-2.9%(ロックダウン前を含む)
- 2020年4月~6月:-19%(史上最大の下落)
- 2020年4月単月:-20.3%(過去最悪の落ち込み)
- 2020年7月~9月:+16.1%(回復の兆し)
- 2020年10月~12月:+1%(11月のロックダウンで成長鈍化)
この影響により、イギリスはG7諸国の中で最も大きな経済縮小を記録しました。
今後の課題:財政赤字の拡大
政府はコロナ対策として4,070億ポンド(約61兆円)を支出しましたが、税収の減少により財政赤字が拡大しています。
- 2020年12月時点の国債残高:2.1兆ポンド(GDP比97.9%)(1960年代以来の高水準)
- 緊急対応として大規模な財政支出が必要とされていますが、今後は増税や歳出削減の議論が避けられないと見られています。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、イギリス経済は歴史的な不況に突入し、多くの業界で雇用が失われました。ワクチンの普及による回復が期待される一方、今後も厳しい経済状況が続くと考えられます。
日本に住む私たちにとっても、海外経済の動向は無関係ではありません。特に、貿易や投資などの影響を考慮すると、イギリス経済の回復がどのように進むのか注視していくことが重要です。
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