エロさがないと誰も興味をひかなくなったSNSに英国政府から警鐘

少し前まで、SNSは友人との近況報告や旅行の写真、食事、趣味などを共有する場所でした。

ところが今、Instagram、TikTok、Xなどを眺めていると、明らかに状況が変わってきたと感じる人も多いのではないでしょうか。

普通の写真を投稿しても見られない。

普通の動画では再生されない。

普通の服装ではスクロールされて終わる。

そこで、より肌を見せる。より刺激的なポーズをする。より意味深なサムネイルを使う。

つまりSNSの世界ではいつの間にか、

「エロさがないと誰も興味を持ってくれない」

という奇妙な競争が始まってしまったのです。

そして、このSNSの過激化に対して本格的に動き始めている国の一つがイギリスです。

英国政府がSNS規制を一気に強めている

英国政府は2026年、子どもとSNSをめぐる規制を急速に強化しています。

政府は16歳未満へのSNS提供を禁止する方針を発表。さらに16~17歳についても、深夜のSNS利用制限、通知の停止、オートプレイやパーソナライズされたフィードをデフォルトで無効にするなど、かなり踏み込んだ対策を打ち出しています。

英国政府が特に問題視しているのが、SNSのアルゴリズムです。

政府は、コンテンツが大量に投稿され、アルゴリズムによって次々と推薦される現在のSNS環境そのものが、子どもにとって危険な環境を作り出していると指摘しています。

ここが非常に重要です。

問題は単に、

「SNSに悪い動画がある」

という話ではありません。

刺激の強いものほど人間の注意を引き、それをアルゴリズムがさらに拡散してしまう構造そのもの

が問題になっているのです。

なぜSNSはどんどん「エロく」なったのか

理由は意外と単純です。

SNSでは、

「何が正しいか」

よりも、

「何がクリックされたか」

が重要だからです。

露出の多い写真。

性的なタイトル。

挑発的なポーズ。

男女関係を匂わせる動画。

ギリギリ見えそうで見えないサムネイル。

こうしたものは、人間の本能的な興味を刺激します。

すると閲覧時間が伸びる。

「いいね」が付く。

コメントされる。

シェアされる。

アルゴリズムは、

「この投稿は人気がある」

と判断して、さらに多くの人に見せます。

そして投稿する側も学習します。

「普通の写真より少し露出したほうが伸びる」

「普通の商品紹介より、体のラインを見せたほうが再生される」

「普通のサムネイルより性的な雰囲気を入れたほうがクリックされる」

こうして少しずつ刺激がエスカレートしていく。

これは誰か一人が悪いわけではありません。

SNSの仕組みそのものが、投稿者に過激になることを要求しているとも言えるのです。

問題は大人ではなく子どもが同じSNSを見ていること

成人が自分の判断で性的なコンテンツを見ることと、子どもがSNSを開いた瞬間に似たようなコンテンツを推薦されることは全く別の問題です。

英国政府が強く動き始めた最大の理由もここにあります。

2026年9月に発表された英国国家統計局(ONS)の調査によると、13~15歳の子どもの15%が過去1年間に「かなり多く、または相当量」の性的な画像・動画をオンラインで目にしたと回答しました。

さらに、そのような性的コンテンツを見た子どもの80%は、少なくとも一部を自分から探したのではなく偶然目にしていました。

これは非常に重要な数字です。

「見たければ見ればいい」

という問題ではないからです。

本人が探していなくても、

アルゴリズムの側からやってくる。

これが現在のSNSです。

13~15歳の12%が性的なメッセージを受け取っている

さらに深刻な数字もあります。

同じONS調査では、13~15歳の子どもの12%が過去1年間に少なくとも1回、性的なメッセージを受け取っていました。

女子では13%。

そして性的メッセージを受け取った子どものうち、約4分の1は10回を超えて受け取っていました。

さらに19%は18歳以上の成人から送られていました。

これを見ると、英国政府がSNS規制に本腰を入れている理由も分かります。

SNSが単なる「暇つぶしのアプリ」ではなくなっているからです。

英国政府はヌード画像そのものを端末から防ぐ方向へ

さらに2026年9月9日、英国政府は非常に踏み込んだ方針を発表しました。

18歳未満がスマートフォンなどでヌード画像を撮影、閲覧、送信することを技術的に防止するため、テック企業に対応を義務付ける法律を準備すると発表したのです。

ここまで政府が介入することについては、当然プライバシーや技術的な問題を含め、今後も議論になるでしょう。

しかし一つだけ明らかなことがあります。

英国政府は、今のオンライン環境を「子ども自身の判断に任せておけばよい」とは考えていない。

ということです。

SNSは「注目を奪う競争」になった

SNSの根本的な問題は、結局ここにあるのではないでしょうか。

世界中の何億人、何十億人という投稿者が、

あなたの数秒間の注意

を奪い合っています。

かわいい写真の横にはもっとかわいい写真。

美人の横にはもっと美人。

筋肉質な男性の横にはもっと筋肉質な男性。

普通の水着の横にはもっと露出の多い水着。

そしてその先には、さらに刺激の強いコンテンツがあります。

人間の注意力には限界があります。

その注意力を世界中の投稿者が奪い合えば、

当然、

より派手に。
より極端に。
より刺激的に。
より性的に。

なっていきます。

これはある意味、SNSというシステムが生み出した「刺激のインフレ」です。

昔なら成人向けだった表現が普通のSNSに流れてくる

ここ十数年で、社会の基準も大きく変わりました。

以前なら成人向け雑誌や成人向けサイトに存在したような表現が、現在では一般的なSNSのおすすめ欄に突然表示されることがあります。

もちろん裸ではありません。

しかし、

「どこまでなら削除されないのか」

というプラットフォームの規約ギリギリを狙ったコンテンツが大量に存在します。

削除されない。

広告も付く。

フォロワーも増える。

だったらもっとやる。

この繰り返しです。

「本人の自由」で終わらせられる時代ではなくなった

もちろん成人が何を着て、何を投稿するのかは基本的には本人の自由です。

ここを政府が簡単に規制すべきではありません。

しかし問題は、その投稿が大人だけに表示される閉じた世界ではないことです。

13歳、14歳、15歳の子どもも同じフィードをスクロールしています。

さらにSNSには、

広告、

インフルエンサー、

AI生成画像、

美容整形、

性的コンテンツ、

ギャンブル的要素、

極端なダイエット、

暴力的コンテンツ、

などが一本のタイムラインに混ざって流れてきます。

だから英国政府も「投稿者だけ」の問題ではなく、

プラットフォームの設計責任

を問う方向に変わってきたのです。

SNSはこれから大きく変わる可能性がある

イギリスではすでにOnline Safety Actによる子どもの保護義務が動き出しており、Ofcomはポルノ、自傷、摂食障害などの有害コンテンツから子どもを守るため、年齢確認や推薦システムへの対策をプラットフォームに求めています。

そして2026年にはさらに一歩進み、英国政府は16歳未満へのSNS提供禁止まで打ち出しました。

世界で最も厳しいSNS規制国の一つになる可能性があります。

他国がこれに続けば、

「誰でも同じSNSを見る時代」

そのものが終わる可能性もあります。

エロさがなければ見られないSNSは、本当に正常なのか?

もちろん性的な表現そのものを悪者にする必要はありません。

人間が性的なものに興味を持つのは自然です。

しかし、

普通の投稿では誰にも見てもらえないから、より刺激的にしなければならない。

という社会になっているのであれば、それは少し違うのではないでしょうか。

投稿者が自由に刺激的な表現を選んでいるように見えて、実際には、

「再生数」

「フォロワー数」

「いいね」

「広告収入」

という数字によって、SNS側からそうするよう誘導されている可能性があります。

そして、その競争を毎日子どもたちまで見ている。

英国政府が警鐘を鳴らしている本当のポイントは、単なる「エロ規制」ではありません。

人間の注意を奪うためなら、どこまでも刺激を強くしていく現在のSNSビジネスは、このままで本当にいいのか。

という問いなのです。

SNSを開けば刺激。

次の動画はもっと刺激的。

その次はさらに刺激的。

それを何年間も繰り返した先に何があるのか。

イギリスは今、その答えが出てから動くのではなく、

答えが出る前に規制する

という方向へ舵を切り始めています。

もしかすると数年後、

2020年代のSNSを振り返って、

「なぜ子どもにあんなものを自由に見せていたのだろう」

と言われる時代が来るのかもしれません。

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