「電気のVATが0%になるなら、電気代は安くなるんじゃないの?」
そう思った人も多いのではないでしょうか。
ところが、イギリスのエネルギー規制機関Ofgemは、2026年10月1日からEnergy Price Cap(エネルギー価格上限)を4%引き上げると発表しました。
一般的な家庭の年間光熱費の目安は、現在の**£1,663から£1,723へ上昇**します。
年間で約£60、月平均にすると約£5の負担増です。
一方で、2026年10月1日からは家庭用電気料金にかかっていた**5%のVATが一時的に0%**になります。
「VATがなくなるのに、なぜ光熱費は上がるの?」
今回は、この少し分かりにくいイギリスの電気・ガス料金について解説します。
2026年10月からEnergy Price Capは£1,723へ
Ofgemが発表した新しいEnergy Price Capは、2026年10月1日から12月31日まで適用されます。
標準的な使用量で、電気とガスを利用し、Direct Debitで支払う家庭の場合、
現在:年間 £1,663
↓
2026年10月から:年間 £1,723
となります。
4%の値上げで、年間約£60、月平均約£5の増加です。
ただし、ここで注意したいのが「Price Cap」の意味です。
£1,723を超えたら、それ以上請求されないという意味ではありません。
Energy Price Capは、基本的に1kWhあたりの単価とStanding Charge(基本料金)に上限を設定する制度です。
そのため、電気やガスをたくさん使えば、実際の年間請求額が£1,723を超えることも普通にあります。
10月から電気のVATが5%→0%に
今回の大きな変更がこれです。
2026年10月1日から2027年3月31日まで、家庭用電気料金のVATが0%になります。
これまで家庭用の電気料金には5%のVATが含まれていました。
政府によると、VAT撤廃によって平均的な家庭では年間約£45の節約効果が見込まれています。
特別な申請をする必要はなく、電力会社が自動的に料金へ反映します。
ただし、重要なのは、
VATが0%になるのは「電気」です。
ガスについては引き続き5%のVATがかかります。
それなのに、なぜ£1,663から£1,723に上がるの?
ここが今回一番分かりにくいところです。
理由は、ガス料金の上昇です。
Ofgemによると、世界的なガス卸売価格の上昇が今回のEnergy Price Cap引き上げの大きな原因となっています。
電気のVATを撤廃したことで電気料金の上昇はかなり抑えられていますが、それ以上にガス料金が上昇するため、電気+ガスを合わせた一般家庭の光熱費は結果として上がるというわけです。
Ofgemによれば、今回の変更ではガス料金部分が約8%上昇する一方、ガスを使わない家庭では増加幅は1%未満になる見込みです。
つまり、
「電気代が大幅値上げ」
というより、
「電気はVAT撤廃でかなり抑えられたが、ガスの値上がりによって家庭全体の光熱費が上昇する」
と考える方が正確です。
10月から電気料金はいくらになる?
Direct Debitで支払っている一般的なStandard Variable Tariffの場合、Ofgemが発表しているイングランド、スコットランド、ウェールズの平均料金は次のようになります。
電気
2026年7月~9月
1kWh:26.11p
Standing Charge:57.19p/日
↓
2026年10月~12月
1kWh:26.32p
Standing Charge:54.83p/日
電気の1kWhあたりの単価だけを見ると、
26.11p → 26.32p
とわずかに上昇しています。
一方、Standing Chargeは、
57.19p → 54.83p
と下がります。
そして10月以降の26.32pという料金には、電気に対するVATは含まれていません。
ガスはいくらになる?
ガスについては、値上がりがかなり大きくなります。
2026年7月~9月
1kWh:7.33p
Standing Charge:29.04p/日
↓
2026年10月~12月
1kWh:7.97p
Standing Charge:29.68p/日
ガスの単価は、
7.33p → 7.97p
となります。
冬に向けて暖房を使い始める時期なので、ガス暖房の家庭にとってはこちらの方が家計への影響が大きくなりそうです。
「£1,723しか払わなくていい」は間違い
Energy Price Capについてよくある誤解が、
「年間の電気・ガス料金が£1,723で固定される」
というものです。
これは違います。
£1,723という数字は、Ofgemが想定する「標準的な使用量」の家庭が、現在の単価を1年間支払った場合の目安です。
実際の請求額は、
・電気をどれだけ使ったか
・ガスをどれだけ使ったか
・住んでいる地域
・支払方法
・メーターの種類
・契約しているTariff
などによって変わります。
例えば、大きな家で冬に暖房を長時間使えば£1,723を大きく超える可能性があります。
逆に、小さなフラットで使用量が少なければ£1,723よりかなり安くなる可能性もあります。
オール電化の家庭にはむしろ朗報?
今回の変更で比較的有利なのが、ガスを使わない家庭です。
例えば、
・Electric Heating
・Heat Pump
・電気コンロ
・オール電化のフラット
などです。
電気のVATが5%から0%になるため、電気を多く使う家庭ほどVAT撤廃の恩恵も大きくなります。
Ofgemも、ガスを使わない家庭については今回のPrice Cap変更による料金上昇は1%未満になるとしています。
そのため今回の「4%値上げ」という数字だけを見て、
「全員の電気代が4%上がる」
と考えるのは正しくありません。
Fixed Tariffの人はどうなる?
すでにFixed Tariff(固定料金プラン)を契約している場合、基本的には今回発表されたPrice Capの変更そのものには影響されません。
Energy Price Capは主にStandard Variable TariffなどのDefault Tariffを対象としているためです。
ただし、電気のVAT撤廃はFixed Tariffの利用者にも適用されるとOfgemは説明しています。
つまり、固定料金プランだからVATが5%のままということではありません。電力会社側で自動的に割引が反映される予定です。
結局、10月からいくら高くなる?
一般的な電気+ガス利用家庭で考えると、
現在の年間目安
£1,663
↓
10月から
£1,723
差額は、
年間+£60
月平均では、
約+£5
です。
ただし、この値上げの中心はガスです。
電気についてはVATが0%になるため、大幅な値上がりにはなっていません。
VATがなかったら、もっと高くなっていた
実は今回、電気のVATが撤廃されなければ、一般家庭のEnergy Price Capはさらに高くなっていました。
Ofgemによると、VAT撤廃がなければ、年間のPrice Capは今回発表された£1,723より約£45高くなっていたとされています。
つまり、
「VATを0%にしたのに値上げした」
というより、
「本来はもっと大きく値上がりするところを、電気のVAT撤廃によって£45程度抑えた」
と見るのが分かりやすいでしょう。
まとめ:電気VATゼロでも、ガス高騰で光熱費は上がる
2026年10月からの変更を簡単にまとめると、
・Energy Price Capは£1,663から£1,723へ
・一般家庭では年間約£60、月約£5の増加
・家庭用電気のVATは5%から0%へ
・VAT 0%は2026年10月1日~2027年3月31日
・ガスのVATは引き続き5%
・電気料金は比較的安定
・今回の値上げの大きな原因はガス価格
・ガスを使わない家庭では値上げ幅は1%未満
ということになります。
「VATがなくなるのだから光熱費も下がる」と期待した人にとっては少し残念な結果ですが、VAT撤廃がなければ、さらに高い料金になっていた可能性があります。
そしてイギリスではEnergy Price Capが3か月ごとに見直されるため、今回の£1,723がずっと続くわけではありません。
次回は、2027年1月~3月分のEnergy Price Capが発表される予定です










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