英国で大きな社会問題になりつつある二極化

アメリカでも進行中の「二極化」という問題は、国の規模が大きいためある程度理解できる部分があります。しかし、英国のような小さな島国でも、同じような二極化が進んでいる状況があります。最近も、極右思想を持つ人々による暴動が話題になりました。そこで今回は、英国のような小さな島国で、なぜ人々が一緒に平和に暮らすことが難しくなっているのかを考えてみたいと思います。

英国の階級制度に関係している?

英国には現在でも階級制度が存在しており、この制度が英国人の誇りに深い影響を与えているのではないかと考えています。では、そもそも階級制度とはどのような制度なのでしょうか。中学の社会の授業で習った記憶はあるものの、詳しい内容は覚えていないという方が多いのではないでしょうか。そこで、今回は復習も兼ねて、英国の階級制度についてご説明します。

1. 上流階級 (Upper Class)

貴族: 上流階級の中には、伝統的な貴族や大地主が含まれます。彼らは世襲の爵位を持ち、歴史的には大きな土地を所有し、政治的にも大きな影響力を持っていました。貴族の中には、公爵、伯爵、子爵、男爵などの称号を持つ者がいます。

富裕層: 近年では、ビジネスや金融業界で成功し、巨額の富を持つ新興の富裕層も上流階級と見なされることがあります。彼らは、エリートの教育機関(オックスフォードやケンブリッジ大学など)で学び、重要な社会的・経済的ネットワークを持っています。

2. 中流階級 (Middle Class)

上位中流階級 (Upper Middle Class): この階層には、専門職や高度な学位を持つ人々、企業の経営者や高収入の職業に従事する人々が含まれます。彼らは通常、良い教育を受け、安定した経済基盤を持っており、都市部に住む傾向があります。

中間中流階級 (Middle Middle Class): 中間中流階級には、教師、医師、エンジニア、公務員など、専門職に従事する人々が多いです。彼らもまた、教育や職業的な資格を持ち、安定した収入を得ています。

下位中流階級 (Lower Middle Class): この階層には、事務職、技術職、小規模なビジネスオーナーなどが含まれます。収入は中程度ですが、一般的に安定しており、所有する財産も中程度です。

3. 労働者階級 (Working Class)

熟練労働者 (Skilled Working Class): 伝統的には、工場労働者や職人、建設業など、特定の技能を持つ労働者がこの階層に含まれます。彼らは専門職ではないものの、特定の技能や職業訓練を受けており、比較的安定した職業に就いています。

非熟練労働者 (Unskilled Working Class): この階層には、低賃金で比較的単純な作業に従事する労働者が含まれます。例えば、清掃員や工場のライン作業員、ホスピタリティ業界の労働者などが該当します。

4. 下層階級 (Lower Class)

非正規雇用者・生活困窮者: この階層には、安定した職業に就けず、非正規雇用やアルバイトで生活する人々、または生活保護を受ける人々が含まれます。経済的に困窮しており、社会的な移動が困難な状況にある場合が多いです。

5. 階級と現代社会

階級の変化: 近年、英国の階級制度は変化しています。グローバル化や経済構造の変化により、伝統的な階級の境界が曖昧になりつつあります。しかし、教育機関や社会的ネットワークの影響は依然として強く、階級が社会的移動に影響を与える状況は続いています。

文化的な階級の象徴: アクセント、趣味、消費行動なども階級の象徴と見なされることがあり、特にイギリス社会では、言葉の使い方や発音が階級を示す重要な要素とされています。

英国の階級制度と二極化の関連性を検証

まず、理解していただきたい点として、英国にはさまざまな人種が混在しています。例えば、英国人以外で最も多く英国に住んでいるのがインド人です。
インドは1858年から1947年までイギリスの植民地でした。この時期、インド人が英国に移り住むようになったのは、主に植民地政府による移住促進や、英国での仕事や教育の機会を求めたためです。一部のインド人はイギリスの官僚機構や軍隊で働くために渡英しました。
1947年にインドが独立した後も、英国との強い歴史的、経済的な結びつきが残り、その結果、英国に移住するインド人が増えました。特に1960年代から1970年代にかけて、英国政府は労働力不足を補うために、インドやパキスタンから多くの移民を受け入れました。
このため、インド人に対しては「労働者」というイメージを持つ英国人がいまだに多くいます。しかし、そのような中で、もともと自分たちより劣っていると思っていたインド人が、高い地位についたり、裕福な暮らしを始めたりするようになりました。インド人が雇用者から雇用主へと変わり始めたのは、1990年代初頭のことです。これにより、大英帝国を築いたという英国人のプライドが揺らぎ始めたのです。

英国人の怠慢が現在の状況を生み出した

かつて、大英帝国を築き上げた英国人たちは、自分たちが永遠に世界の頂点に君臨すると信じて疑わなかった。そのため、「まあ、ちょっとくらい楽してもいいだろう」と、安価な労働力を海外から次々と受け入れ、自らの手を汚すことなく贅沢三昧の生活を送る道を選んだのです。言わば、労働を王様のように高らかに放棄したわけです。
インドや中東から移り住んできた人々は、最初のうちは英国人の指揮のもと、黙々と働いていましたが、次第に「おや、これはおかしいぞ」と気づき始めます。目の前で英国人が日がな一日、紅茶を片手にソファでのんびりしている間、彼らはせっせと汗を流し続けました。ついに堪忍袋の緒が切れ、彼らは「こうなったら自分たちでやってみせる!」とばかりに、才能ある者たちが財を築き始めました。そして、気がつけば、彼らは英国人を尻目にどんどんと裕福になり、逆転現象が起こったのです。
結果、今では多くの英国人が仕事を失い、かつての栄光はどこへやら、財力も失ってしまったというのが現状です。
さて、同じ道をたどる可能性は、日本にも潜んでいるかもしれません。今後、海外からの労働力を受け入れるにあたって、「英国の二の舞は御免だ」と、しっかりとした戦略が必要になるでしょう。さもなければ、紅茶の香りに酔いしれていた英国人と同じように、気づけば自分たちが働き者の移民たちに追い抜かれているかもしれませんよ。

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