まだ学校に通う年齢で酒を飲み、たばこを吸い、大麻に触れる。こうした経験が十代の生活に入り込んでいるなら、若者の精神的不調を「本人の弱さ」で片づけることはできない。子どもの身近に依存の危険がある社会で、大人や政府の責任を問う必要がある。
「15歳を過ぎれば何でもあり」と感じても、法律と実態は区別しなければならない。英国では酒の購入は18歳から。2026年10月現在、たばこの18歳未満への販売も禁止されており、娯楽目的の大麻所持も違法だ。問題は、こうした規制があっても、未成年が酒や薬物に触れている現実である。GOV.UK
NHS Englandの2023年調査は、イングランドの15歳について、次の実態を示している。
| 15歳の生徒の経験・行動 | 割合 |
|---|---|
| 酒を飲んだことがある | 62% |
| 通常、週1回以上飲酒する | 11% |
| 紙たばこを吸ったことがある | 22% |
| 現在、電子たばこを使用している | 19% |
| 過去1年間に何らかの薬物を使用した | 19% |
| 薬物を勧められたことがある | 44% |
飲酒、喫煙、電子たばこ、薬物の数値は、それぞれ同調査の公表結果による。「薬物」には大麻などに加え、接着剤・ガスなどの吸入物質も含まれる。また、経験率は常習的に使用する割合ではない。NHS England Digital
15歳の約半数が、薬物を勧められた経験を持つ。この数字を「若い頃によくある話」で済ませてよいのだろうか。同じ調査では、初めて薬物を使った年齢が15歳だった生徒の72%が、最初の薬物として大麻を挙げている。大麻は、一部の子どもにとって、薬物使用の最初の接点になっている。NHS England Digital
ただし、改善している数字もある。15歳の週1本以上の紙たばこ喫煙は、1996年の30%から2023年には2%に低下した。11~15歳全体の薬物使用経験も、2021年の18%から2023年の13%に減っている。若者全員を「酒も薬物も当たり前」と扱うことは、実態を見誤る。NHS England Digital
それでも、使用する子どもが少数であることは、その健康や将来を守る責任を軽くしない。
社会全体の逮捕・取締り・死亡の公表データを見ると、酒や薬物がもたらす被害の大きさも分かる。
| 項目 | 公表数 | 期間・対象 |
|---|---|---|
| 酒・薬物運転による逮捕 | 6,931件 | 2024年12月1日~2025年1月1日の合同取締り。イングランド・ウェールズ・北アイルランドの45警察が参加。news.npcc.police.uk |
| 飲酒運転の呼気検査で陽性、または検査拒否 | 24,823件 | 2024年。イングランド・ウェールズの26警察分。逮捕数ではない。GOV.UK |
| 薬物犯罪による逮捕 | 62,157件 | 2025年4月~2026年3月。イングランド・ウェールズ。ダービーシャー警察を除く。GOV.UK |
| 酒が直接原因となった死亡 | 9,809人 | 英国全体。2024年の死亡登録数。Office for National Statistics |
| 薬物中毒による死亡 | 5,565人 | イングランド・ウェールズ。2024年の死亡登録数。Office for National Statistics |
| 上記のうち「薬物乱用」に分類された死亡 | 3,736人 | 同上。5,565人の内数。Office for National Statistics |
ここで、数字の意味を取り違えてはいけない。酒・薬物運転の6,931件は合同取締りの合計で、酒だけの年間逮捕総数ではない。薬物犯罪の逮捕件数も、取締り活動に左右されるため、実際の使用者数とは一致しない。news.npcc.police.uk
死亡数は全年齢の集計であり、15歳の死亡数ではない。薬物中毒死には医薬品による死亡も含まれ、「薬物乱用死亡」も、違法薬物だけ、あるいは大麻だけによる死亡数ではない。Office for National Statistics
これらの数字だけで、若者の精神的不調の原因を断定することはできない。しかし、酒や薬物が心の健康に関わることには、医学的な裏付けがある。
NHSは、喫煙、薬物使用、アルコール乱用が精神的不調に関わる一方、精神的不調が物質の乱用につながる場合もあると説明している。大麻を不安への対処として使っても、不安や被害妄想が強まり、精神病性の疾患につながることがあるという。NHS
ここから考えるべきなのは、若者が不安を抱え、酒や薬物に頼り、その使用によってさらに調子を崩す悪循環だ。「使った本人が悪い」と言うだけでは、この循環を止める対策にはならない。
未成年への販売や供給を抑えること。学校で、依存や精神面への影響を具体的に教えること。そして、不安や孤独を感じた子どもが、薬物に頼る前に相談できる場所を用意すること。取締りと早期支援を、一緒に進める必要がある。
政府が評価すべきなのは、逮捕件数だけではない。依存に陥る前に、どれだけの子どもを守れたかという結果である。
15歳の子どもが、酒や薬物に頼らず、安心して学校や家庭で過ごせる環境をつくる。その責任を果たさないまま、精神的不調に苦しむ若者を責めることはできない。英国が若者の心を守ると言うなら、酒・たばこ・大麻が未成年の日常に入り込む入口をふさぐところから始めなければならない。










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